脱サラ母の数学教師への道 (1) 決意と説明会

こんにちは、Erinaです。

 

これから、長期で現在進行形のプロセスを書いていこうと思います。

 

大学卒業から9年。

2人の出産と育児休暇を乗り越えながら、仕事をしてきました。

今の職場(銀行)で働いて今年で5年になりますが、ここに来て、「この先の30年」のことを考えるようになりました。

 

子ども達も小学生になり、自分は何をしたいか、何を残したいかと考えたとき、今の職場にはそれがないことがわかり、ここ数年は自分自身と向き合い、とにかく話し合いました。転職か、残留かという記事も書いたように、とにかく自分の中でもがく時期だったようです。

昨年はストレスが主な原因だという赤くてかゆい小さなプツプツが足指にできたり(単純だなぁ・・・笑)、3年前は”Vertigo”と呼ばれる原因不明のめまいも体験しました。体からのサインがバッチリ出ていたわけです。

 

そうやって出た結論は、「数学を教えたい」でした。

 

自分の原点に立ち戻って、「自分らしい仕事ってなんだろう?」と考えたらこうなったわけです。

自分がこれまでに乗り越えた試練や、立ち向かった恐怖心。

勉強したものや、持っていたい向上心。

それを仕事の中できちんと使わない限り、私はいつまでも堂々巡りするような、何をしても満たされないような気がしたのです。

 

そう思って始めた高校生のチュータリングはとても楽しく、自分も成長させてもらえていると感じました。そしてそれを仕事にできたら、なんて幸せなんだろう!と思ったのです。

人間嫌いだった(笑)学生時代には考えたこともなかった進路転換だけれど、こういう結論にたどり着いたのもこの9年の経験があったからこそ。無駄になるものはないと今は思えるし、むしろ無駄にしないようなキャリア構築をしたいと思えます。

 

そんなわけで、33歳二児の母が、アメリカで脱サラして数学教師になるまでの道のりを、これから(気長に)実況中継で書いていきたいと思います。

 

 

説明会の話

何か新しいことを始めるとき、自分でリサーチをしたり、貯金をしたりすることはもちろん地道にできるのですが、やはり勉強したい学校での説明会に出向くのが手っ取り早い。特に、それが無料説明会ならなおさらです。

 

というわけで、母校であるSan Diego State University (SDSU)のウェブサイトをチェックしてみると、”College of Education”(教育学部)がTeaching Credential (教員免許)プログラムの無料説明会を週末に月一くらいの頻度で行っていることを発見。

特に応募プロセスやアプライに必要なものもよくわからないものが多いので、とりあえずどんな感じなのか、手探りするために参加してみることにしました。

土曜日の午後12~1時半にスケジュールされた説明会は、懐かしのBusiness & Educationの建物で行なわれ、ドアをくぐった瞬間に学生時代の気持ちがふわ~っと戻ってきました。

 

説明会が行なわれる教室の前でサインアップし、説明会で利用されるハンドアウトをとり、教室に入ってみると30人くらいの人が。

 

「おぉ、こんなに希望者が。」

 

数年前に行った、半年に一度のSDSUのMBAの説明会(同じく週末の昼間)には、こんなに参加者はいなかった気がする。

 

参加者は

 

男性:女性=3:7

年代は20代~40代くらいとバラバラ

 

となかなか面白いデモグラフィー。

 

科目も

 

Multiple Subject(複数科目):小学校の先生

Single Subject(単一科目):中学・高校の先生(←私はこれの”Math”になります)

Special Education(特別教育):学習障害などを持つ子どものための先生

Bilingual Education(バイリンガル教育):英語とスペイン語の先生

 

・・・と、目標も様々。

 

説明会の担当は、Teaching Credential(教員免許)コーディネーターの女性二人。一人は教育博士号を持つディレクターで、もう一人は私と同年代(より若いかな?)のアシスタント。

 

まずはディレクターがプログラムの紹介と、現在、カリフォルニアで教員が不足している現実や、政府が新教員を雇用しようとしている動きなどを説明。

ここカリフォルニア州では、10年位前に州予算削減で先生たちの大規模レイオフが行われたことが記憶に新しいけれど、それ以降、州全体で教員の不足が深刻化しているらしい。

今学年度が始まったとき、サンディエゴカウンティ内で教員不在のクラスが90あったそう。それだけ教師が不足しているとのこと。

特にSTEMと呼ばれる数学やサイエンスの分野では、新しいテクノロジーやカリキュラムを教えられる人材の需要が高く、重宝されているのだとか。私も周りの話を聞いていても、”We need good Math teachers!”という声がよく聞こえてくるので、現実だったのだなと思いました。

 

 

 

SDSUプログラムの話

National University (NU)と呼ばれる、オンラインがメインの大学でも同じTeaching Credentialプログラムがあるのですが、その違いなども説明してくれました。

 

まず、SDSUは”Block”と呼ばれるカリキュラム体制をとっており、その年・その科目の学生に特化したプログラムになっているとのこと。

つまり、「2016年の数学教科」というグループは、クラスや実習など同じカリキュラムでフルタイム進行し、2セメスター(一年)で修了、そして次のアカデミックイヤー(学年度)には就職といういわば「流れ」があるそうです。ちょっと日本っぽい感じ。

 

NUなどのプログラムは、個人の状況(仕事や育児など)に合わせられるので、フレキシブルな反面、2セメスターよりも時間がかかることがあるし、お金ももっとかかります。

 

そんなわけで、短期集中型の私は、SDSUのブロックカリキュラムは自分に合ってると思えたし、うちの子ども達の先生たちにSDSU卒業生がものすごく多いことから見ても、やはりこのサンディエゴで強い学校というのは心強い。

何より、「一年で免許取得→次の年からフルタイム教員」というキャッチは子育て中の私にとってはとても魅力的で、それを唱えるだけの実績もあること・現代のSTEM教育の追い風から、やっぱりSDSUに行こうと思いました。

 

 

 

アプライプロセスの話

今回、説明会で聞けてよかったなと思った部分は、アメリカの教員免許プログラムへのアプライは、かなりインフォーマルであるとわかったところ。

つまり、みんな揃ってこの書類を用意して、同じことを書き込んで・・・というよりも、自分で何が必要かを見極め、自分でやっていくことが多いということ。(詳しくはまた別の記事で書きますが)

 

たとえば、私の場合(Single Subject Math)、アプライする前に受けるテストが2つ、取る授業が3つ、実際に高校に行ってクラス観察を45時間しなければなりません。

クラス観察はSubstituteと呼ばれる代休教員でも良いのですが、これも自分で行きたい学校に電話をし、「教員免許のためにクラス観察したいんですが」とお願いするのが通例。

 

なるほどね。

そんなもんなのか、とあまりのインフォーマルさに驚きました。

特に、アメリカで高校に行っていない私は、「どんなところなんだろう?」という不安が常にあるのですが、これだけきっちりとしたルールがないならないで、入ってみたらなんとかなるのかもな、と思います。それよりも、「とにかく新しい先生を!」というプッシュのほうが強い印象でした。

 

そんなわけで、来年9月から始めるためにはSDSUでのアプライ期間は今年の10月~2017年3月。

それまでに必要なテストを受け、クラスをとり、クラス観察をすると。オーケー、オーケー。

 

 

 

お金の話

当初、フルタイム学生で2年と考えていた学費+生活費でしたが、SDSUであれば2学期、つまり1年分で良いわけで、貯金目標額は半分になります。

 

1セメスターの学費は約$4,000とのことで、2セメスターで$8,000。

 

また、奨学金も多数あるとのことで、SDSUの教育学部に特化した奨学金は約25ある。

TEACH Grant というアメリカ政府が出資するグラントもあって、これがもらえれば学費の半分はまかなえる。

(お金が実際にどうなったかについては、この記事で書きました

 

 

 

よしよし、現実味が増してきた。

こういう情報を仕入れれば仕入れるほど、「できそうだな」という気持ちが強くなる。

 

特に、金銭的なことを考えると、無職というリスクへの不安はやっぱり大きくて、二の足を踏むのは当たり前。いったん仕事をしたらそれが弱みであり、「社会人になってフットワークが重くなったなぁ」と感じる瞬間。まぁ、仕方ないけど。

そんな中で、経済的な責任を果たしながら、自分自身を満足させるというバランスは、私の中で必要だし、「ユーは落ち着きがないね・・・」と旦那にため息をつかれながらも、こうやって流動的な人生を送るのが私なんだなと思う。

 

 

説明会のフォルダの中には、ペロンと一枚の紙が入っていて、表には「カリフォルニアでいかに教員が不足しているか」という新聞記事が2つ。

裏には、サンディエゴエリアのスクールディストリクト(教育委員会のようなもの)による、年収の推移(1年目→10年目→20年目)とベネフィットについて。

サンディエゴカウンティ内のディストリクトを平均してみても、1年目の給料は、私の現在の年収のちょうど半分だ。それは承知の現実であり、それでも自分の中で計算したり、色々なものを天秤にかけて出した結論。

 

 

 

 

“You want to make a difference in other people’s life.”

 

脱サラして教師になると言ったとき、ホストマザーはそう言った。

 

そうなんだ。

私には、まだやるべきことが他にある気がして、そう感じ始めたら、自分をこれ以上は無視できない。

 

何が待っているかはまだわからないけれど、とりあえず、最初の一歩を踏み出してみる。

 

 

このシリーズの続きはこちらで読めます

 

 

 

“脱サラ母の数学教師への道 (1) 決意と説明会” への12件の返信

  1. こんにちは。えりなさんの決意、すごくかっこいいです!なでしこの数学教師誕生、応援してます!私はここ数日落ち込んでやる気が出ずにいたのですが、記事読んで元気でました。私も頑張ります。

  2. おーーえりなさん!やっぱり!私はえりなさんの新しい挑戦を予想していました!私も頑張らなきゃ。刺激になります。

  3. えりなさん!こういうことだったんですね。
    この前、保育園や教師に関するあつい討論をしているときに
    もしかして・・・?とは思っていたんですが。
    教育に携わっていた立場のものからすると、え?(他の仕事から)教育に行きたいと思う人がいるの?と目からウロコでした。
    私も色々他の職種を考えましたが、やっぱり最終的には『You want to make a difference in other people’s life.』ここにたどり着くのです。
    えりなさんのように、私から見れば、給料も待遇も良さそうなお仕事をされている方でも
    教育界に流れてくる・・・色々考えさせられました。お金だけをみていた自分にハっとしました。
    私も色々天秤にかけています。
    あの教師のベネフィット&給料チャートを見ては、ため息が出ますが。笑
    でもやっぱり州外の免許を書き換える手続きや試験を受けている自分がいて、自分の気持ち・行動は正直だな〜と思わされます。
    私のような者が言うのもなんですが、教育界には、他の職種で活躍した人が極端に少ないので
    えりなさんの様な人が、先生になるっていうのはすごくありがたい事です。
    やっぱり、給料面を考慮すると魅力は半減してしまって教師以外の仕事経験者がほんっとにいないんですよね。ワシントン州でもSTEMとSpecial edは慢性的な教師不足です。
    陰ながら応援しています!!!!

  4. 初めまして。えりなさんのブログを見ていつも勉強させてもらっています。私は夫の仕事の都合でアメリカに来た訳ですが、自分もここで働きたいという思いで、今はESLに通い来年から大学に進学予定です。ですが、高額な学費、不妊治療、無職という今の状況がとても辛く挫けそうになることもしばしば・・・しかし、えりなさんの今回の決意を読み、勇気をもらうことができました。私は大学の専攻を選ぶ基準として、どうしても今後仕事に就いたときの給料を考慮せずにはいられませんでしたが、やはり本当にやりたいことを最優先にしないと”自分らしい仕事”はできないですよね。えりなさんの新たな挑戦、応援しています。因みに、ここケンタッキー州でもESLの先生曰く、特に数学教師は足りていないと言っていました!

  5. 以前からえりなさんのブログを楽しみに読んでいる、ハワイ在住の50歳おばさん新任教師です(笑)
    私は40歳の時にコミカレのESLからスタートし、8年かけてバチェラーディグリーをとりました。コミカレ時代は英語や歴史、政治学のクラスで大苦戦したので、せめて数学だけは良い成績取らなきゃ〜と頑張っているうちにどんどん楽しくなっていき、気が付いたら高校数学教師です。

    日本では大企業に勤め、恵まれた職場環境でバリバリ仕事していました。今の仕事はお給料も半分ですし、エアコンのない教室で汗だくです。先生の発音が悪いから何言ってるのかわからない、と生徒にダメだしされたこともあります(泣)。

    それでも、私は朝起きて、車を運転して学校へ向かうことが楽しくて仕方がありません。これまで一度も「仕事行きたくないなぁ」なんて思った日がありません。週末が待ちどおしくて仕方がなかった20代、30代の私ですが、今は日曜日も仕事したいと思えるほどです。生徒たちと接する時間がとても充実しているからです。彼らから学ぶ事がたくさんあります。毎日新たな発見があり時間があっという間に過ぎていくのです。

    やっと「本当に自分のやりたいこと」を見つけることができました。年齢制限なく大学へ通えたり、50歳でも新任教師としてスタートラインに立てるこの国の器の大きさに、正直驚いています。アメリカで生きていくって、大変なことも数え切れないほどありますが、日本では不可能かもしれないことが、この国では自分の頑張り次第で可能になることもたくさんあると思います。コメントすることで、日本の若い人たちに少しでも希望を与えることができればいいなと思いました。

    えりなさんの新しい挑戦、ブログを通してこれからも応援しています!

  6. Shimaさん、こんにちは!
    応援ありがとうございます。
    地道にコツコツと、一緒に頑張りましょう♪

  7. Tomomiさん、一緒に前を向いて頑張りましょうね!!

  8. Yukaさん、こんにちは。
    そうですね~、アメリカでの教育はうちの旦那側も教師一家なので、色々と目に入ります。
    日本の保育園問題は、ワーキングマザーとしての視点のほうが強いですけどね。私も小一からかぎっ子でしたから、子どもの居場所がない社会ってとにかく不安です。

    教育は金勘定したら、儲けなんてありません。
    そういう仕事じゃないですからね。
    でも自分の後に残る「レガシー」があります。
    そういうことを理解している教育者たちは素晴らしい人が多いですね。

    まぁ、どうなることやらという感じですが、与えられた機会に感謝し、まい進するのみです。

  9. Pechakoさん、こんにちは!
    いつも読んでいただき、ありがとうございます♪

    何事も、まずは最初の一歩から、ですよね。
    私の好きなフレーズに、”Everybody starts somewhere.”があります。
    どんなに偉大な人でも、みんな「どこか」からスタートしました。誰でも最初はルーキーで、初心者で、おっかなびっくりでした。もちろん私も。
    だけど、その一歩一歩が積み重なって、必ずどこかすごいところへ導いてくれる。私はそれを自分の身を持って経験したので、またこうやって一からのスタートを切れるんです。
    大丈夫、Pechakoさんも、そうです。
    まずは、どこかから始めましょう!ESLは素晴らしいスタートだと思います。
    一緒に頑張りましょうね!

  10. Ririkoさん、こんにちは!
    いつも記事を読んでいただき、そしてコメントいただきありがとうございます。

    Ririkoさんの言葉、とても心に響きました。
    お会いしたことのない日本人女性が、このアメリカで自分と同じように感じながら高校数学を教えていると思うと、感無量です。
    私もこの結論に至るまで、色々な壁にぶつかりながら、悩んできました。今でも100%ではありません。
    だけど、自分を信じることの大切さを学んだ気がします。
    こうやって、Ririkoさんのような方とつながることができたのもその証拠だと思っています。本当に感謝です。

    これからもどしどし記事にコメントください。
    私が晴れて教師になれたときは、「アメリカで教える日本人教師の会」を作りたいので(笑)、ぜひ参加していただけると光栄です。

    ありがとうございます。
    これからもよろしくお願いします。

  11. Erinaさん、これはすごい決意です!「自分が何をやりたいか」を突き詰めて考えるとおのずと答えは見えてくるんですね。。。Rririkoさんのコメントにも感動しました。私は1月から英語教師の道を考えたのですが、これは単にTESOLの資格をとったからその流れで、という感じで、なぜか心の中がすっきりしないまま仕事を探そうとしていたのです。でもよく考えたら、自分は教師よりも生徒であることに喜びを感じるタイプ。そのことに気づいて、自分は三度の飯より何が好きか?と問いかけたときに見えてきたものを仕事にできたらいいなと考えるようになりました。それがたとえ趣味だとしても、そこから何かがつながるかもしれない。こういう気持ちを共有できるこのブログに感謝です!

  12. Naokoさん、こんにちは!
    いやはや、こんなところで決意表明してしまいました・・・あとは進むのみ。笑
    私もNaokoさんの近況報告や気持ちの変化、知れて嬉しいです。こうやって記事を書くことで、毎朝、自分に、「今日も世界のどこかで頑張っている人がいるんだ」と元気付けています。
    会ったことのない人だけれど、こうやってお互いの心の支えになる存在がいるというのは素晴らしいと思うし、そういう意味でインターネットの恩恵を受けたいですね。

    私も学校で学ぶということがすごく好きです。
    できるならずっと学校で仕事をしたい!と思っていました。
    まさか自分が教える立場に立てるとは思わなかったけれど、数学を教えることで自分は学び続けられるということにも気づきました。
    きっとNaokoさんも、やってみて新発見する学びが必ずあるはず!一緒に頑張りましょう。

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