アメリカはなぜトランプを選んだか

6 Comments

こんにちは、Erinaです。

 

前回の記事で、私がアメリカ市民である理由について書いてみしたが、今回はアメリカがトランプを選んだという事実について書いてみたいと思います。

 

トランプがアメリカ第45代大統領に選ばれてから一夜、様々な意見が飛び交っているアメリカ。

今回は、どういう流れでトランプが選ばれることになったのか、日本人には馴染みの深い、あるシナリオで書いてみたいと思います。

 

 

場所は、USA高校(架空)の3年1組。

学年の前期を終えて、これから後期が始まるところで、3年1組では学級委員を選出しようとしています。

3年1組には40人の生徒がいて、前期の学級委員はクラスでも人気者のOくんでした。彼は勉強もそこそこできるし、誰にでも好かれる人柄の持ち主です。

しかし、学級委員として仕事ができるか?と聞かれると、首をかしげるクラスメイトがいたことも確かでした。

 

 

そんな中で、後期の学級委員候補はCさんとTくんの二人。

 

Cさんは、一年生の頃から様々な委員会活動に参加し、学校でもまぁまぁ名の知れた存在。真面目で、他人への思いやりもあるし、何より実績があります。しかし、学級委員としての仕事っぷりは、仲良しのOくんと似ていて、それほど高く評価される部分ではありません。

 

Tくんは、これまで学校での活動に参加したことはありませんでしたが、実は「バイトの鬼」と呼ばれるほど、学校外でのアルバイトに力を尽くしてきました。様々なバイトを経て鍛えられたTくんは、学校では口が悪くてガラの悪いキャラですが、「あいつは仕事ができる」と陰ながら評判です。

 

こんな対照的な二人が、USA高校3年1組の学級委員候補者に選ばれました。

 

加えて、この学校のシステムには面白いところがあって、学年主任が担任を務めるこの3年1組はあるprivilege(特権)があります。

それは、3年1組の学級委員は、自動的に学年全体の学級委員長になるということ。つまり、3年生の学級委員全体の長になるということです。

 

普通ならここで、みなさんに「さぁ、あなたならどちらに投票しますか?」と聞くところですが、今日は聞きません。

なぜなら、ほとんどの人は3年1組のメンバーではなく、このクラスにおける投票権を持っていないからです。今日は仮定をしたいのではなく、こういう状況で、どういう解釈をすれば良いのか、というトレーニングですから、”What if….?” は全く必要ありません。

 

 

前期、つまりOくんが学級委員だった頃は、それほど荒立つことがなかったけれども、改善された部分も少なく、その要領の悪さに苛立つ人もいたようです。

 

そんなことを踏まえて、3年1組で学級委員選出の投票が選ばれました。

 

結果は、Tくんの勝利。

Cさんが優勢かと予測されていたので、かなり衝撃の結果でした。

 

 

これってどういうことでしょうか。

もう少し深く掘り下げてみましょう。

 

3年1組には、熱心なCさん支持派がいました。

同様に、熱心なTくん支持派もいました。

彼ら・彼女らは、表立って「自分は○○派!」と表現してきた学生ですが、全体の数としてはそれほど多くはありません。

 

しかし、Tくんが多数票を獲得できたのは、Tくんへの支持をあらわに表現してこなかった人たち。つまり、英語でSilent Majority(サイレント・マジョリティ、静かな多数派)と呼ばれる人たちでした。

このグループは、Oくんの人柄や人気を知っていたので、あからさまにOくんや彼を引き継ぐであろうCさんへの攻撃はしなかったものの、心の中で「アイツは仕事ができないから、もう同じようなのはごめんだ」と嫌悪感を持ってきました。

 

もちろん、Oくんが有能かどうか、というのは主観的な物差しであり、人によっては彼が学級委員で好都合なこともあっただろうし、そうでないこともあったでしょう。40人いるクラスメイト全員を満足・納得させることは誰だって不可能ですから、それは仕方ないことです。

結果、Oくんの仕事に不満を持っていた人、また彼の後継者に不安を持つ人がこれだけ多くいたことが露見した選挙結果になりました。

 

 

さぁ、このアナロジー(比喩)を読んでみなさんはどう思ったでしょうか?

 

以下が私の分析です。

 

  1. 他の候補者の不在

今回、候補者はCさんとTくんの2名。しかし、3年1組にはOくんを除いて他に37名の学生がいたはずです。

この中から、他に立候補、または最終候補者にクオリファイする人は結局いなかった。

「文句があるなら自分でやれ」と私は常日頃から様々な場面で思うわけですが、この37名にとっては、自分でやるくらいならこの2人のどちらかで良いや、という決断に至ったわけです。またはそこまで能力のある人間がいなかったわけですね。

それはCさんのせいでも、Tくんのせいでもありませんし、同時に、3年1組の民意というものはこの二択に限られてしまったわけです。

 

 

2. サイレント・マジョリティという想定外

これだけのサイレント・マジョリティ、つまり自己表現をしてこなかったTくん支持派の多さに驚いたのは、Cさんだけではありませんでした。

Tくんは頭が切れるので、予測していたかもしれませんが、3年1組自身も、これだけOくんの仕事に(人格ではなくてあくまで仕事能力に)批判的な意見を持つ人がいたという事実に驚いたわけです。

これはCさんへの不安要素だけでなく、Oくんに対するパフォーマンス・レビュー(勤務評定)であり、3年1組のOくんへの評価を反映しているものでしょう。

これを正確にカウントできていなかったというのは、Cさんの誤算だったかもしれません。

何事もそうですが、物事が一方に偏りすぎた場合、自然の摂理として、逆の方向に引っ張られるということが起こります。バネを強く引っ張ったら、その分、逆方向に飛んでいくのと同じことです。

それは人間の社会集団でも同じことで、右に偏りすぎたら次は左に引っ張られることになり、また逆も然り。そして今回は、その動きが水面下で起こっていた、ということでしょう。

 

 

3. 実力主義

Tくんの人格とキャラクターについて特筆すると、彼は決して万人から好かれたり、理解される人間ではありません。

Oくんのような好かれ方はしないわけです。

しかし、アルバイトで鍛えられた仕事能力は高く、学校外でのその評価は高い。

つまり、

  • ナイスだけど仕事のできないヤツ
  • 口は悪いけど仕事ができるヤツ

という究極の選択を、3年1組は強いられたわけです。

 

ここで、考慮しなければならないのが、やはり今学年度前期の様子がどうだったか、という部分でしょうね。

前期が平穏で、誰しもが満足していたのなら、わざわざその性格に我慢してまで仕事のできるTくんを学級委員に据え置かなくても良いわけです。

 

でもそうじゃなかったら?

現状に不満があったとしたら、「良いヤツよりも、仕事ができるヤツが欲しい!」と思うのは、とても自然な流れのように思うのです。

 

みなさんもそうじゃありませんか?

部下に、「超イイヤツなんだけど、仕事ができない!」という人がいたとします。その部下の面倒をしばらく見て、疲れ切ってしまったところに、「新しい部下を入れてあげるよ」と言われ、上記のような究極の選択を強いられたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか?

(日本だったら、未知への不安とか、仲間意識が先行して、やっぱりCさんになるのかもしれませんね・・・。)

 

様々な印象を与えながらも、今回はTくんが当選したということは、3年1組はTくんの人柄ではなく、仕事能力を評価した、つまり実力主義が根本にあったわけです。

それはTくんは親友や彼氏の人材ではないかもしれないけど、自分のクラスの学級委員の人材だと、割り切った判断をした人がこれだけいたということですね。

 

 

以上が私の分析です。

私はトランプの肩を持つわけでもないし、彼を支持した人に義理立てする必要もありませんが、決まってしまった以上、この先4年は彼にput upしなくちゃいけないわけで。

どうせならこうやってアクティブな見解を持って、アメリカという国を理解しようとする方が、愚痴を言うより良いかな、というのが私の個人的な性格なのかもしれません。

もうすでにご存知だと思いますが、上のアナロジーでは、Oくんがオバマ大統領、Cさんがヒラリー・クリントン、Tくんがトランプです。

3年1組はアメリカでの有権者、つまり18歳以上のアメリカ市民のことですね。

 

 

この国は広いですね。

選挙のたびに、そう実感します。

 

でもこういう要素があるからこの国は面白いのだし、その一部になれるという意味で、アメリカ市民であることに魅力を感じるのです。

同時に、その要素に感謝できないのなら、肌の色や支持政党にかかわらず、この国から出て行けば良いと思うし、その分、この国のことを感謝できる他の移民たちに席を譲ってあげたら?というのが私の正直な気持ちです。

 

日本人としてアメリカで働いた元銀行員の視点で、ドナルド・トランプという人をこんな風に分析してみました。彼について知りたいという方は読んでみてください。

 

 

こんな記事もおすすめです
avatar

About Erina

こんにちは、Erinaです。 日本で一浪した後、2002年に留学生として渡米しました。ESLとコミュニティカレッジを経て、4年制大学に編入。高校時代は大嫌いだった数学が大学で大好きになり、応用数学専攻で卒業。金融アナリストインターン、IT企業でデータアナリスト、銀行で不動産アナリストを経て、現在、キャリアチェンジの真っ最中。アメリカの高校で数学教師になるために、2016年夏に脱サラ。久しぶりの勉強と主婦業に専念しています。二人の小学生のママです。趣味は読書・ヨガ・テニス・ゴルフ・DIY・庭仕事で、最近の一番の楽しみは子育てです。 アメリカに住む日本人女性を応援したくてこのブログを始めました。

6 Responses to “アメリカはなぜトランプを選んだか”

  1. avatar

    松原千賀子

    すごい!とても解かりやすい見解でした。

  2. avatar

    マエマエ

    いろいろと思うところはありますが、S君(サンダース)という選択肢があったのに、最終候補者に選ばなかったのが民主党が負けた原因かなと思います。

    どちらがましか(less evil)の選択肢になってしまいましたからね。

    トランプ支持者の気持ち、わからなくもないです。
    でも、実際にシカゴに住んでいる身として、中西部のほぼ全域でトランプが勝利したのには恐怖感をおぼえました。

    なんか移民や非白人はアメリカから出て行けと言われているようで・・・

    私のブログ「マエマエのアメリカ バイリンガル育児」にも書きましたけど、5歳の娘の「ドナルド・トランプってどんな人?」という質問に、上手く答えられない自分がいます・・・

  3. avatar

    Erina

    マエマエさん、こんにちは。

    今回の両党の失敗は、候補者たちが偏りすぎていたことですね。もっと中立の候補者がいなかった。
    インディペンデントで誰か面白そうな人がいたら、投票した人ってかなりいたと思います。

    トランプの発言内容だけ、それも取り上げられて叩かれているものだけ見れば、

    >なんか移民や非白人はアメリカから出て行けと言われているようで・・・

    という気持ちもわからないでもないですが、もっと彼の発言の本質や背景を知る必要がありそうですね。

    そういうわけで、次回は、私から見て、ドナルド・トランプとはどういう人か、というのを書いてみたいと思います。
    現段階で、彼のことを否定的にしか受け取れない人というのは、彼のこれまでのことを知らない人が多いですからね。
    私にとって、彼はあくまで「ビジネスマン」であり、性格が多少arrogantで、bluntな物言いをする人、という印象です。

  4. avatar

    Erina

    松原千賀子さん、

    そうですか、よかったです。
    ありがとう!

  5. avatar

    らよこ

    カリフォルニア州在住です。
    面白い記事でしたのでコメントさせていただきます。

    トランプは政治経験ゼロ、ミリタリーに関する知識もゼロ、数々の差別的発言をしていたのにも関わらず、それでも彼に投票すると言っていた人達は私の周りにもたくさんいました(実際にその人達がトランプに投票したかどうかは分かりませんが)。
    私の周りのトランプサポーターたちは皆自分がトランプ支持者であるという事を堂々と宣言していました。
    サイレント・マジョリティの面々はトランプに投票する理由として、クリントンが嫌だからトランプにする、との事でした。
    熱烈なサンダース支持者はサンダースの名前を記入したそうです。

    前大統領の仕事ぶりに欲求不満だった市民が次は仕事の出来るヤツで!と思うのは自然の流れなのかもしれませんね。
    ビジネスで成功したからアメリカ合衆国の大統領としての能力もあるだろうと思われてしまったのかもしれませんが、それにしても有権者の皆さんは大きな賭けに出ましたね。
    トランプがどこまで能力を発揮できるのかはこれからですが、あの品のなさは耐え難いものがあります。

    品はないが仕事が出来た大統領になるか。
    品もなければ結果も出せなかった大統領になるか。

    私もトランプの「これまで」を良く知りませんのでもっと詳しく調べてみたいと思います。

  6. avatar

    Erina

    らよこさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

    今回の選挙は、アメリカという国のアイデンティティや価値観が分かれるものになりましたね。
    単純な外交・経済という政策的なものではなくて、ここまで国の将来が見える選挙というのは見ていてとても面白かったです。
    どんなことが起ころうとも、歴史が方向転換する瞬間ってこういうことなんでしょうね。

    本当、吉と出るか、凶と出るか、見ごたえがある4年間になりそうです。

コメントを書き込む