元銀行員がドナルド・トランプを分析する

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こんにちは、Erinaです。

 

ドナルド・トランプが次期大統領に選ばれ、憂鬱で不安な日々を送っている在米日本人の方もたくさんいらっしゃるかもしれません。

それは、彼のこれまでの発言をいくつか切り取ってみれば、理解できることなのですが、フリークアウトしてしまう前に、ちょっと待ったをかける意味で、この記事を書くことにしました。

今回の大統領選挙を踏まえて書いた、この二つの記事もぜひ読んでみてください。

 

それはトランプという人はそもそもどんな人間で、どんなことをやろうとしているのかを知らずして、「トランプは悪だ!」と言ってしまうのは、白人至上主義の人たちと同じくらい偏っていますよ、という警告を、今のうちに私から出しておきたいからです。

 

物事には必ず複数の視点があって、一つの視点からしか見えない、見ようとしないのはとても危険なことなことである、というのはみなさんご存知のはずです。

別の切り口に耳を傾けられるかどうか、というのはやはり個人のオープンマインドさが試されるところであり、「あぁ、そういう見方もあるのね」と受け入れられるかどうか、というのが今回の選挙の教訓でもあると、私は思っています。

そんなわけで今回は、アメリカの銀行不動産部門で働いた元アナリストの視点で、ドナルド・トランプとはどういう人間なのかを書いてみます。

 

Business is just business (ビジネスはビジネス)

ご存知の通り、彼は不動産を中心に富を作り上げた人。

10年前にNBCで放送されていた、The Apprenticeは人気番組で、アメリカ中の優秀なビジネスマン・ビジネスウーマンたちが、様々なビジネスタスクを乗り越えて、最終的にトランプの”Apprentice”(弟子)になるまで勝ち抜くというリアリティショー。

毎週、一人ずつ、トランプに “You are fired.”(キミはクビだ)と言われたら脱落していき、最後に残った人は、実際のトランプ・グループの重役ポジションにつける、というコンセプト。

Youtubeで第1シーズンの第1回目を見つけたので、紹介します。これが初めてアメリカで放送されたのは、2004年1月。今から12年以上も前のことです。

 

 

参加してくるのは、MBA学生もいれば、マーケティングのベテラン、ビジネスオーナー、スポーツ選手など様々で、当時、学生だった私も「力試しで参加したいかも!」なんて思ったことがありました。

トランプがどんな人間なのか、どんな仕事ぶりをするのかを知りたければ、この番組が一番のリソースだと思います。

この番組を見続けるとわかりますが、トランプは肌の色とか、学歴とか、そういうもので人を判断する人ではありません。彼が自分のApprentice(弟子)に求めるものは、ハイレベルなビジネススキルであり、たとえその人が学生だろうと、アジア人だろうと、小さな街出身であろうと、才能があれば引き抜くという信念を持っています。

 

番組のオープニングにもありますが、

“It’s nothing personal. It’s just a business.”

というのは、やはり彼の根底にあるものであり、今回、彼に投票した人たちの多くもこの価値観をワシントンDCに持ち込んでほしい、という期待があるはずです。

 

個人的な話になりますが、私は、「有能な人と仕事をしている時のワクワク感」というものがとにかく大好きで、それは、仕事が片付いていくスピードとか、人や物事が動く手応えだとか、やはり現場でしか得られない感覚が大好きなのです。

だから、どこに行こうとも、常にそういう人に囲まれて仕事をしたいと思っているし、自分もその一員になれるように、アンテナを広げて、優秀な人から盗めるスキルは盗もう、と思って努力しています。

逆に、仕事ができない人と仕事をすることの苦痛ったらありません。自分だけじゃなく、他の人たちの時間を無駄にしているという感覚が、私は大嫌いなのです。

アメリカという国は、やはり効率主義で、「○○課長のメンツがあるから・・・」とか、「それはうちの仕事じゃないから・・・」と物事が進まないという状況が、日本に比べて格段に少ない。

そういう体裁を保つよりも、ビジネスを進めることのほうが大事で、そこは、”Business is just business.” と割り切れない人材は、長く続かないのが現実です。

 

うちの銀行でのかつてのボスも、そういう割り切り上手な人でした。

私の分析を使って、レポートをまとめる彼女はよく、

 

“Erina, I really appreciate you being so calm and cool when I ask you these questions.”

(エリナ、私の質問に、落ち着いて冷静に答えてくれてありがとう)

 

と言っていました。

私は、単純に自分の仕事をしているつもりだったので、彼女がそう感じていたことに少し驚きました。それは、ボスが私のことを嫌いでしている質問ではなく、仕事上、必要な質問であり、私は自分の持っている答えをシェアすれば良いだけのこと、と当たり前に考えていたからです。

そこでは、人として好きか嫌いかという判断は、与えられた仕事ができるかどうかという判断に比べて、それほど重要ではないわけです。

そうやって、「個人の好き嫌い」と「仕事」を切り離せないうちは、プロフェッショナル扱いされない場所で、私は働いてきました。

 

同時に、銀行の、それも不動産部署で働いた5年間、おそらく500以上のタックスリターンとファイナンシャルステートメントを分析することで、様々なお客さんや様々なビジネスパーソンがいることを知りました。

一つのプロジェクトに対して、何年も前から綿密な計画が書き出され、チームがすでに動いている案件もあれば、「とりあえずやってみよう」な案件もあります。

しかし、ビジネスというのは、行き当たりばったりではなく、緻密なリサーチと計画を元に遂行するものですから、どちらが成功するかは一目瞭然だし、それぞれの未来というものも、自然と見えてくるわけです。

 

そして、ビジネスを見れば、その「人」が見えてきます。

丁寧なビジネスをする人は、丁寧な性格だし、丁寧なCPAがいる。

雑なビジネスをする人は、雑な性格だし、雑なCPAがいる。

ビジネスに計画性のない人は、人生にも計画性がないし、景気やマーケットなどの外部要因に左右されては大損をしたり、内部のマネジメントがうまくできなくて、プロジェクトが失敗したりする。

そういうプロジェクション(予測)ができるようになると、今あるものの在り方で、その人がビジネスや人生をどうマネジメントする人物なのかが見えてくるのです。はい、職業病ですね。笑

そうやって、成功するビジネスとそうでないビジネスを目の当たりにしてきた経験というのは、教科書や人の言葉なんかとは比べ物にならない価値があるし、自分の中で、色々なものを見通す力になりました。

 

ビジネスパーソンというのは、そういうことを理解して、計画を実行し続けなければなりません。

もちろん計画通りにいかないことは多々あり、そのたびに問題解決能力が問われます。

そんなときに、

「必要なものは何としてでもやってやる!」(I will do no matter what it takes for this project!)

というメンタリティはそこで鍛えられるし、体育会系がビジネスで生き残りやすいというのも納得できます。

 

時には、”Business is just business.” と割り切って、辛い決断もすることがあります。仕事ができる人というのは、やはりどこかで心に鍵をかけ、感情というものを一旦、横に置いておく(set it aside)ということをします。ビジネスにおいて大きな決断をする人は特にそういうことに慣れていくものです。

すでに買ってしまった土地に建物を建て、テナントを入れて収入を得なければならないとしたら、何がなんでも、それを実行できる人が最後は生き残る。

アメリカでビジネスをするとは、そういうシビアでタフな世界です。

 

私はその事実を知っているから、これだけの建物を建てて、これだけの規模のビジネスを動かしているトランプには、ビジネスパーソンとしてのクレジット(信頼)をあげられるし、彼が「これをやるぞ」と決めて取り掛かったら、 “He will get it done.”と納得できるのです。

 

 

政治家ではない

そして彼はあくまで政治家ではなくてビジネスマンだな、と私が感じるのは、彼にとって「政党」というものは、目的ではなくて手段だということ。

今回、共和党候補として立候補し、当選した彼ですが、実は過去にも何度か立候補(または未遂)したことがありました。そして、それは民主党(デモクラ)としてだったり、インディペンデントとしてだったりするのです。

つまり、彼にとっての目的は、あくまで「アメリカ大統領の仕事をすること」であり、共和党に属することは、彼にとってそれほど大事じゃないんじゃないかな、というのが私の個人的な意見です。

 

たとえば、とても優秀なピッチャーがいたとします。

もう彼は野球ができるだけで幸せだし、結果も出せる。

だけど、このピッチャーは、彼のやりたい野球さえできれば、球団がどこだろうとそれほど気にならないのです。

ただし、自分が結果を出す上で、その環境が整ってさえいれば、という条件付き。

つまり、ワールドシリーズで優勝して、自分の功績を残したいから、そういう環境があるのなら、あなたのチームで投げますよ、ということ。

 

これ、自分にものすごい自信がなければ言えませんよね。

つまりトランプがやっているのは、政治界でのFA (Free Agent)宣言みたいなものです。それでも、共和党は「ふざけるな!」と跳ね返すことはしなかったのですから、彼の実力や功績を評価して、需要と供給としてお互いの条件が合致したのでしょう。

彼は共和党に従属しないだろうし、良くも悪くも自分の信じたことをやるでしょうから、共和党も恐れているのですが、それはトランプを政治家としてニュートラルな存在にしてくれる、というのが私の見解です。

つまり、共和党にこびるための政策作りはしないというのが、彼の強みでもあります。

今回、彼に投票したサイレント・マジョリティの人たちは、トランプのそういう部分を評価していた人が多かったはずです。

「政治家」、つまり、政党の飼い犬のような候補者に、もううんざりしていた。だから、ヒラリーや他の共和党候補者たちが勝てなかったわけです。

 

 

チーム作り

あくまで私の予想ですが、彼は夏前に自分のチーム構想ができていて、火曜日の夜には、誰が入るか入らないのかという最終確認をしたはずです。今日の時点では、来年、いつ、何をするか、というのはかなり明確に練り上げられているでしょう。

不動産プロジェクトにおいては、もちろん規模にもよるけど、「4年」というのはなかなかちょっとちょうど良い数字だったりしますから。そしてビジネスパーソンというのは、タイムリミットと友達ですから、大統領に「任期」というものがあるほうが、俄然やる気が出るのではないでしょうか。

 

そんな彼が、自分のチームに選ぶのは誰なのでしょうか。個人的には、彼の娘、イヴァンカに注目してますけど。

 

私が銀行で見てきたプロジェクトの中でも、大規模で成功しているものというのは、やはり「絶妙な采配」があるものです。

例えば、

  • コントラクター出身のプロジェクトマネジャーAさん
  • 不動産エージェント出身のマーケターBさん
  • 投資家Cさん

というチームがありました。

お金を出すのはCさん、建物を建てるのはAさん、建物を売るのはBさんという役割がはっきりしていて、誰が何をやれば、これがこう動く、という構想が3人の中でものすごくはっきりしていました。もちろん、こういう構想がはっきりしていればいるほど、プロジェクトはスムーズに動くし、プロフィットも生まれる。

私はこのチームがうまく機能しているのを見たとき、心から素晴らしいなと思ったし、現時点で多くの人が見えないものを、彼らは見えているんだろうな、と思いました。

 

こういう自分にとってのパーフェクトチームの重要性を、成功しているビジネスパーソンは理解しています。それは、「自分一人でやるより、うちのチームに任せた方がうまくいく」ということを理解していて、それはリーダーとチームメイトの両方向の信頼の上に成り立っているわけです。

ビジネスの途中で、

“My team will take care of the rest. I have a great team.”

(残りは僕のチームがやってくれるよ。僕には素晴らしいチームがついてるんだ)

なんて言われることがありますが、ボスにそんな風に呼んでもらえるなんて誇りですよね。

 

 

どうでしょうか。

とても個人的ですが、アメリカでのビジネス経験から、ドナルド・トランプという人を分析してみました。

 

現在、世の中に出回っている情報のほとんどは、彼を否定的に捉えるものが多く、私の周りの反トランプ派は、それに扇動されているなという印象です。

やはり物事を表面的なものだけで判断するのはとても危険なことだし、自分の無知をさらさないためにも、本質を捉えた上で発言することは重要だなと思います。

次回は、おそらくたくさんの人が気になっているであろう、トランプと移民について書いてみたいと思います。

で、もうそれでこのネタはしばらくやめます。もうお腹いっぱい。

 

 

 

 

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About Erina

こんにちは、Erinaです。 日本で一浪した後、2002年に留学生として渡米しました。ESLとコミュニティカレッジを経て、4年制大学に編入。高校時代は大嫌いだった数学が大学で大好きになり、応用数学専攻で卒業。金融アナリストインターン、IT企業でデータアナリスト、銀行で不動産アナリストを経て、現在、キャリアチェンジの真っ最中。アメリカの高校で数学教師になるために、2016年夏に脱サラ。久しぶりの勉強と主婦業に専念しています。二人の小学生のママです。趣味は読書・ヨガ・テニス・ゴルフ・DIY・庭仕事で、最近の一番の楽しみは子育てです。 アメリカに住む日本人女性を応援したくてこのブログを始めました。

2 Responses to “元銀行員がドナルド・トランプを分析する”

  1. avatar

    まさ

    なんか、もっともらしいことを言っているような気がしますが、あまり賛同できません。まず、トランプは大統領として、基本的な知識が欠けてると思います。地球温暖化はリアルなものではありませんか?私も昔からapprentice見てたので思いますが、トランプ氏は本当に大統領に適任だと思いますか?このブログではトランプを良い方向に見せようと分析しているようですが、全然納得できませんでした。というのが私の意見です。

  2. avatar

    Erina

    まささん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    今回の大統領選挙のニュースでは、日米両方のメディアで(私は日本語と英語しか読めないので)、あまりに彼を批判するものの多さに驚きました。それも、トランプがどんな人間なのか、少くとも、私程度の人間が知れる範囲でのことすらリサーチせずに、一方的かつ、感情的なものばかりで、その無責任さに驚いたのです。
    そして日本人の、個々のCritical Thinkingをせずに、そうやって流れ出ている情報に扇動されるという傾向が、如実に表れていた気がします。

    地球温暖化はリアルなものでしょう。しかし、まささんは、毎日、オゾン層のレベルを気にしながら生活を送っていますか?それが毎日の生活を左右していますか?
    アメリカでは、地球温暖化は確かに気になるけど、今夜の食卓に、子供たちが食べる食べものを用意できるか、明日は仕事があるのか、という人がごまんといて、レベルが比べものにならない問題になっているのが現状です。
    それは、海岸側のリベラルな州も知らなかったことで、国内の格差がこれほどあったことにアメリカも、おそらくオバマ大統領をはじめとしたデモクラも驚いているはずです。
    イギリスがEU脱退を決めたのにもとても似ていますね。みんなが「うちの国はこうだろう」と思っていたものが、完全に覆されてしまったわけですから。

    彼が大統領に適任かどうかは、時間が教えてくれると思います。

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