トランプと移民

2 Comments

こんにちは、Erinaです。

 

トランプの差別的な発言に、不安を抱えている外国人も多いここ数日のアメリカ。

外国人だけでなく、女性やアフリカンアメリカン、LGBTなど、「マイノリティ」と括られる人たちは、自分たちの生活が何らかの形で危ぶまれるのではないか?という感覚を持っているようです。

今日は、彼の実際的な政策が発表される前に、これまでのトランプの公約などから、この発言の意図するものは何なのか、そしてこの先の4年を、アメリカでマイノリティとして生きていくために、どんな心構えを持っておくべきなのかを私の視点で書いてみたいと思います。

 

まず、私がトランプのこれまでの発言の意図するものは、こういうことだと解釈しています。

 

 

メキシコ国境との壁

 

アメリカには、「違法」で滞在している外国人がごまんといます。

これは日本人にはなかなか想像のつかないことだと思います。

それは、私たち日本人は、陸続きでアメリカに入国できないからです。みんな空港から入ってくるので、必ず移民局のカウンターを通らなければなりません。

 

しかし、陸続きのメキシコからは、様々な手段を使って国境を越え、ビザやパスポートなしでアメリカに入国する人たちが大勢います。彼らは、Smuggler(スマグラー)と呼ばれる闇業者にお金を払い、バンやボート、または地下トンネルなどを使ってアメリカに入ってきます。

そしてアメリカに入ってくると、違法滞在者のネットワークなどを使って様々な仕事をし(農場や建設現場など)、現金収入を得る。もちろん税金は払いません。よく、早朝にホーム・ディポなどに行くと、駐車場のすみでメキシコ人男性の集団を見かけます。彼らはこういう違法入国した人で、日雇いの仕事を探しています。(何度か、Immigration Service(移民局)のバンがやってきて、彼らをまとめて連行していくのを見たことがあります。彼らはこの後、メキシコに強制送還されて、おそらく移民局のブラックリストに入り、将来的に合法でアメリカ入国するのがとても難しくなるはずです。)

違法入国に成功した人たちは、合法滞在している知人などを使って、アメリカ政府の供給しているサービスを使い(医療・教育・福祉など)、生活の基盤ができたら、メキシコにいる残りの家族を呼ぶ・・・というようなことをしているわけです。そしてこれまでのオバマ大統領の「移民保護政策」とは、こういう移民を守るためのものだったのです。

 

私たち合法移民が、ビザ申請をし、お金と時間をかけてビザをもらい、正規の学費を払い、税金を納めている時に、その税金を使って納税者が受けるべきサービスを受けている違法移民というのが、南カリフォルニア・アリゾナ・ニューメキシコ・テキサスにはごまんといて、きちんとルールを守っているアメリカ人たちが「どうして自分たちが、違法移民を養わなければならないのだ!」と不満を抱えてきたわけです。

私も、合法でアメリカに入国し、合法で大学に通い、合法で結婚し、合法で市民になったわけですから、こうやって列に並ばず、ルールに従わず、私たちの税金を使ってこの国に滞在している違法移民の取り締まりには賛成でした。

入ってきたかったら、列に並び、手順を踏め、と。

 

アメリカのコミカレや州立大学では、州外からの学生(留学生含む)の学費というのは、州内に住む学生の5〜10倍になります。これは、コミカレや州立大学というのは、州税で運営されているものなので、それを払っていない学生は学費が高くなってしまうのが原因です。

しかし、これらの違法入国してくる学生たちは、州内に住む知人の住所などを使って、あくまでカリフォルニア州民として入学し、加えてファイナンシャルエイドや奨学金も受けて、学校に通う。そういうものを、私はもう嫌になるくらい見てきました。

 

面白いビデオを見つけました。

昨年、オバマ大統領が違法移民へのアムネスティを提案した時に、メキシコから子供達が大勢やってきたときのCNNでの一場面です。

合法で入国したメキシコ移民のコメディアン、ポール・ロドリゲスは、このアムネスティに対する意見を述べています。

 

 

「この国に入ってくる道はきちんとある。ここでアメリカははっきりとノーと言わないと、次に60,000人の子供達が、その次に150,000人の子供達がメキシコからやってくる。私たちは自分たちの子供(アメリカにいる)もケアできないのに、どうするつもりだ?」

 

という意見は司会や他のコメンテーターにもショックだったようです。

 

私も、留学時代は違法でアルバイトしている日本人学生を山ほど見てきました。

10人中9人はバイトしてましたね。そして、私の中での「アメリカ留学の成功率」というのは10%ですから、あら〜、何か関連性があるのかしら?と思っちゃいます。

アメ10でYukiさんがこんな記事も書いてくれたことがありますが、違法でのバイト、現実です。「違法」という言葉がついているのには、意味があるんです。

私は少なくともアメリカで法律を犯すことはしたくなかったから、学生ビザのうちは、キャンパス外でのバイトはしませんでした。

自分と同じ日本人でも、法律を守っている私にとっては、法律を犯している人というのは尊敬に値しないし、同じ日本人だと思われたくない。そういう一部の人たちを見て、アメリカ社会が、「日本人は違法で何でもやるからな〜」なんて思われたら、どう思いますか?

 

 

トランプが「メキシコ国境に壁を作る」と言ったのは、あくまでこういう違法入国してくるメキシコ人をストップするものであり、きちんと合法で入ってくる外国人を排除しよう、というものではなかったはずです。私の記憶が正しければ。

そしてそれは、これまで違法移民が奪ってきた仕事を、アメリカ人に与え戻すというのが目的であり、彼の言う「国内雇用」を強化するのが目的なのです。

 

しかし、それが「メキシコからの移民は入ってくるな」と解釈されて、反トランプ運動になりました。

 

 

ムスリム(イスラム教徒)の入国制限

 

あの9/11事件以来、アメリカは変わりました。というか、変わったそうです。

私がアメリカにやってきたのは、9/11事件の翌年の2002年でしたから、その以前がどうだったか、というのは人の話で聞いたものにすぎませんが。

やはり9/11以前は、アメリカというのは世界からの移民に門戸を広く開けていて、ビザ取得も永住権取得も今ほど厳しいものではなかった。

 

しかし、9/11というのはアメリカに大打撃を与え、これまでのように無条件に両腕を広げて歓迎することができなくなった。

「欧米世界 対 イスラム世界」という構図ができてしまった。

 

それから立て続けに起こるテロ事件。

アメリカ国内の安全性、というものが薄い氷一枚の上にあるような時代になってしまった。

調べてみると、9/11事件の容疑者たちも、先日のサン・バーナディーノでの乱射事件容疑者たちも、アメリカには学生ビザ (F-1)や、婚約者ビザ (K-1)などで入国してきていました。それはあくまでテンポラリーのステータス。

 

アメリカは、毎年、これらのビザを何十万人という人にあげていて、それだけ新しい外国人が入国してきています。その中から、「誰がテロリストか?」というのをスクリー二ングすることはできないから、イスラム教の中でのごたごたが片付くまで、イスラム教徒のアメリカ入国を禁止する、というのがトランプの発言でした。

 

それが、「イスラム教徒はテロリストだからだめだ」という解釈になったわけです。

 

トランプが、「イスラム教内でのいざこざは、自分たちでやってくれ」というのは、「俺たちになんとかできること(すべきこと)じゃない」と理解しているからでしょう。彼はブッシュのような戦争好きのネオコンではありません。

しかし、これまでのアメリカというのは、そういう他人のビジネスに鼻を突っ込みすぎてきたのです。

9/11事件以降、報復のつもりで始まったアフガニスタン・イラクへの攻撃も、いつの間にかイスラム教内でのいざこざにどっぷり浸かってしまい、ヨーロッパへも飛び火し、私はこれらの国が気の毒でたまりません。当のアメリカは、なかなか出てこられずに、結局、世界中でものすごくたくさんの命を失い、勝者のいない税金の無駄遣いになってしまったのです。

 

 

 

まとめ

 

そんなわけで、この二つをまとめると、「白人以外はみんな出て行け」なんてことは、彼は一つも言っていない。

ただ、そういう解釈を市民たちにさせておいたほうが、アメリカの中西部の白人票が集まる、しかも選挙も盛り上がる、というのが彼の今回の大統領選挙での戦略だったと私は思っています。だから、これらの発言でトランプに投票した人も、反トランプで盛り上がっている人も、どっちも、彼の思惑にまんまと乗っかってしまった、というのが私の見解です。

 

だから、合法でアメリカに入国し、合法で滞在し、アメリカという国に貢献(つまりは納税)している移民(永住権も含め)というのは、それほど「トランプ大統領」に拒絶反応する必要はないのでは?と思うのです。

しかし、上のような学生ビザ・婚約者ビザなどのテンポラリーステータスというのはかなりグレーゾーンであり、それなりの証明やリクワイヤメントが必要とされて、滞在のハードルが高くなる可能性はゼロじゃないと思います。アメリカに貢献する意志があるのかどうか、そういうものが試されるようなプロセスは増えるかもしれません。

 

 

以上が、トランプのこれまでの発言やコンテクストに、私自身の経験を照らし合わせた解釈です。

私はここでまたトランプの肩を持つわけではないし、誰かの意見を変えようとしているわけではありません。

 

ただ、私がこの14年間に見てきたものや、聞いたものは、彼の発言をバックアップできる部分もあり、「彼は正論を言っている」と言っている人の見解をきちんと日本語で紹介したかったのです。

 

しかしながら、今回の彼の発言をもとに、この国に恐怖と混乱をもたらしたことは事実。だからまずは、トランプにはそれを謝ってacknowledgeしてほしい。たとえ意図していなかったとしても、こういう事態になってしまったのは現実です。

彼自身も、そういう疑心暗鬼が国内に渦巻いている状態でスタートするのでは、やりたいこともできないはずですから。

もしそれがクリアにできれば、彼は歴史に残るリーダー候補だと私は思います。

 

まぁ、どうなることか、ちょっと様子をみましょう。

あ、ビザのグレーゾーンの方は、早いうちに手続きしたほうが良いかもしれませんけど。

 

 

 

長くなってしまったので、後半部分はもう一本に分けて書きます

このような現在のアメリカで、マイノリティとしてどうやって生きるべきか。差別にどうやって対応するべきか、ちょっと考えてみましょう。

 

 

 

こんな記事もおすすめです
avatar

About Erina

こんにちは、Erinaです。 日本で一浪した後、2002年に留学生として渡米しました。ESLとコミュニティカレッジを経て、4年制大学に編入。高校時代は大嫌いだった数学が大学で大好きになり、応用数学専攻で卒業。金融アナリストインターン、IT企業でデータアナリスト、銀行で不動産アナリストを経て、現在、キャリアチェンジの真っ最中。アメリカの高校で数学教師になるために、2016年夏に脱サラ。久しぶりの勉強と主婦業に専念しています。二人の小学生のママです。趣味は読書・ヨガ・テニス・ゴルフ・DIY・庭仕事で、最近の一番の楽しみは子育てです。 アメリカに住む日本人女性を応援したくてこのブログを始めました。

2 Responses to “トランプと移民”

  1. avatar

    通りすがり

    トランプ氏の今までの発言の中でH1ビザの厳格化やGCの発給停止などがあります。
    すなわち合法的な移民に関しても今まで以上の制限をかける可能性が高いと思われます。

  2. avatar

    Erina

    確かに、合法の移民のハードル自体は上がるでしょうね。
    グリーンカードのスクリーニングやテストなどが難しくなったりすることは可能性としてあると思います。

コメントを書き込む