なぜアメリカの教科書には全ての解答が載っていないのか

こんにちは、Erinaです。

 

今日は、アメリカの教科書のとある「謎」について考えてみたいと思います。

 

アメリカで教科書、特に数学の教科書を見たことがある方、または使ったことがある方は、知っているであろう、ある事実。

 

 

「練習問題の解答 (Answer Key) が全て、教科書に載っていない」

 

 

教科書には、単元ごとに練習問題がありますよね。

これらの問題の解答というのが、教科書の後ろに載っているのですが、なんと全ては載っておらず、奇数番号の問題 (1, 3, 5, 7, …..) だけだったりします。

 

これについて、「どうして?!」とイライラする日本人は少なくありません。

 

なぜなら、課題で「#1から20までやりなさい」と先生に言われたのに、答えは、1, 3, 5, 7…と半分しか載っていないのだから、「自分の答えが正しいかどうか、チェックできないじゃない!」と感じるわけです。これは、「自分の答えを解答でチェックする」というのが、日本の常識だったからです。

なので、私も当初は、自分の答えを確認できないことが気持ち悪かったし、なんだか腑に落ちない気持ちで宿題を提出していました。

 

しかし最近になって、特に、自分が数学を教えるようになって、「なぜ、アメリカのテキストブック(教科書)には、全ての答えが載っていないか」がわかってきたのです。

 

それはズバリ、

 

「正しい方法でやっていれば、答えはあっている」

 

というのが大前提だからです。

 

つまり、「練習問題」というのは、「間違いを発見する場所」ではなく、「正しいやり方を練習する場所」なわけです。

 

「間違いを発見する場所」という意識で、練習問題に取り組んだ場合、自分のやっていることに自信が持てず、「自分の答えがあっているか、間違っているか」というチェックをするため、解答に頼らなくてはならない。答え合わせはギャンブルみたいにドキドキです。

こうやって、解答(または採点者)に自分の正否をジャッジしてもらう場合、「自分は今、何をやっているのか」を意識しながら問題を解く癖がつきません。

先生に言われたことや、決められたルールを、目の前の問題で繰り返すだけの「単純作業」でしかないのです。

 

しかし、「正しいやり方を練習する場所」という意識で、問題に取り組んだ場合、プロセスの一つひとつを理解しなくてはならないし、自分のやっていることの意味を知らなくてはなりません。

そうやって、「今、自分は何をやっているか」をきちんと把握していれば、正解にたどり着くのは必然、と考えるから、アメリカの教科書には全ての解答が載っていない、というか、全て載せる必要がないのでは、と私は思うのです。

 

スポーツでもそうですよね。

 

たとえば、野球やテニスで何千、何万とやらされる、「素振り」。

あれって、間違ったフォームでやって、意味があるでしょうか?ありません。

 

バスケットのフリースロー練習は、ただひたすら投げるだけですか?違いますよね。

 

単純練習というのは、何も考えずにリピートすることが目的ではありません。頭を使って、今、何をやっているのか、体のどの部分に注意を向けて、どういう体の使い方をすれば、正しいフォームを体に覚えさせられるか、と意識的にやるもので、数学も同じなのです。

 

アメリカの中学以上の数学では、先生たちというのは、宿題の全ての答えを一つずつチェックしません。大学に行けば特にそうです。「授業を聞いて、理解できていたら、宿題はできて当たり前だよね」という、学生の自発性を試される考え方です。

 

「やり方がわからなかったら、質問に来なさい」というスタンスなので、まずは自分でやってみる、というのが当たり前だからです。

だから、答え合わせにあまりエネルギーと時間をかけない。

なので、先生とは別に、採点者 (Grader) という人がいて(たいていアルバイトの学生)、その人が宿題の正答率や提出率なんかをチェックします。

 

私も思えば、自分のやり方に自信が持てなかった時は、「解答」の存在が必要だったけれど、今になって、自信が持てる、つまり説明できるくらい理解するようになると、別に答えはチェックしなくても、(たぶんあってるし・・・)と思うようになりました。

たまに、やり方がわからないというものがあったとしても、答えをチェックするのではなく、やり方を調べよう、という考え方になりました。

 

 

 

そこでやはり、「数学で点が取れない」という場合、自分のミステイクを発見する練習はとても大事です。

 

単純な計算ミスなのか、それともコンセプトを理解していないのか。

「あ、ここでマイナスとマイナスのかけ算を間違っちゃった」とか、「なーんだ、このたし算、違うじゃん」と自分で気づけたら、素晴らしいです。

 

人間は誰しも、自分のミステイクを認めるのが大嫌いですから、客観的に自分の答案を見ることができるというのは、優れた Critical Thinker になるための第一歩です。

 

 

 

こういう自主練習をするために、アメリカの教科書には、全ての答えが載っていない。

 

私はそう思います。

 

数学、めちゃめちゃ面白いですよ。

 

 

 

 

“なぜアメリカの教科書には全ての解答が載っていないのか” への3件の返信

  1. 端的に言うと日本の教科書が間違っているのです。答えが載っていると答えを見て解答を書くからです。本人にとっては何の意味もありません。

  2. せなつなさん、こんにちは。

    私自身も経験がありますが、ワークブックの解答はもらってしまったら最後、写して終わりでしたね。
    まぁちゃんとやってる子もたくさんいるんだろうけど、何のための教材なのか、完全に本末転倒な感じです。

  3. なるほど、面白い考え方ですね。
    私はやっぱり、「ほら、正解」っていう報酬があるのが好みです。プロのレシピ通りに作ったけど、味見もするっていうか…。

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