Project-Based Learning(プロジェクトベース)とは
こんにちは、Erinaです。
今日は、アメリカの公立中高でポピュラーになってきている、Project-Based Learning(PBL: プロジェクト・ベースド・ラーニング、日本語では「プロジェクトベース」)について書いてみたいと思います。
Project-Based Learning という言葉を初めて聞いたのは、周りのお母さんたちからでした。
「うちの子の学校は、Project-Based Learningで・・・」ということをよく聞くことになり、それはどういう意味なのかをリサーチしました。
すると、うちの子供たち(2年生と4年生)の小学校で、たまに行っているあるカリキュラムにそっくりだったのです。
それは、サンクスギビングやホリデー前になると取り入れられる、Thematic Instruction(テーマ的指導・テーマ的カリキュラム)と呼ばれるもので、テーマに沿って、様々な科目を取り入れたいわゆる混合科目のこと。
具体的にどう進めるかというと、たとえば小学校低学年で、テーマが「サンクスギビング」だとすると、
社会科的な視点:サンクスギビングの歴史
理科的な視点:食べ物を種類ごとにわける(肉、野菜、穀物)
算数的な視点:食器はいくつ必要か、など
国語的な視点:サンクスギビングに関するお話など
・・・というように、あくまでメインテーマに沿って、4科目の要素を取り入れるカリキュラムです。
このカリキュラムの利点は、物事には様々な側面があり、社会的、理科的、算数的、国語的にそれを分析したり、見出すことを教えること。それぞれの科目は何らかの形で全てつながっているという実生活に密着した勉強になります。
私は個人的に、こういうハンズオンな勉強は大好きで、やはり教科書に載っていなくても人間の生活にどれだけ役に立つか、が学校での勉強だと思っていますから、こういう勉強は大いに歓迎です。
教師から見て、このカリキュラムの弱点は、準備にものすごく時間がかかるということ。笑
自分の専門分野じゃないことも掘り下げなくてはならないので、一年中これをやるのは結構大変なので、やはりイベントがきっかけになりますね。
で、これを、中学・高校で行っているのが、Project-Based Learning schoolということになります。
たとえば、「喫煙」というテーマでプロジェクトを進める場合、
社会的視点:喫煙の歴史と法規制
理科的視点:人体への影響
数学的視点:人体への悪影響の確率
国語的視点:喫煙の広告と文学
などを取り上げ、個人またはグループで、これらの全要素をカバーするわけです。
これを中高でやる上で、難しいことはやはり、中学高校では先生は科目別になるので、他の科目との連携が必要になるということ。たとえば、「人体への影響」を考えた時に、「どこまでが理科で、どこまでが数学?」という結論は、学生自身が導かなくてはならないし、グレーゾーンの物事をどちらで発表するか、という決断も必要になるでしょう。
つまり、包括的なテーマを取り入れることで、学生は積極的にテーマを噛み砕き、自分なりにプロジェクトを再構築し、リサーチをし、形にする。
それが Project-Based Learningです。
このカリキュラムはやはり、就職して仕事をする時に必要なハンズオンなスキルを養ってくれますし、これからの時代、受け身でいては、チャンスは回ってこない、という現実を教えてくれます。この21世紀、自分から物事を考え、形にし、発表する、というのはどの社会でも必要なスキルであり、それを実践的に取り組むのがProject-Based Learningの学校ということです。
親として、特に外国人親として、このカリキュラムでのチャレンジはやはり、全ての科目において手助けはできないかもしれない、ということでしょう。
たとえば、私だとしたら、数学は専門分野だとしても、アメリカにおける喫煙の歴史や法規制、広告と文学なんてさっぱりわからないし、そこはやはり子供自身が乗り越えるしかありません。
また、「正解はひとつじゃない」という学習形態は、私たち日本人にとってなかなか慣れない文化でもあります。子供の宿題を手伝っている上で、「これで良いのかなぁ?」と不安になったことが、日本人親なら誰しもがあるはずです。
このカリキュラムのゴールというのは、先述したように、総合的に物事を捉え、分析し、クリティカルな視点で形にするということ。
ですから、一分野において飛び抜けている子供よりも、バランスよく総合的に広い視点で物事を見ることができる子供のほうが有利になるでしょうし、最近のアメリカ社会はやはり、そういう人材を欲しがっているのです。
一昔前までは、何か一つに秀でた才能を持つ子供を、「天才」とか「神童」みたいにもてはやす風潮がありましたが、そういう傾向は薄れ、やはりこの多様化した社会では、あらゆる場面においてオールマイティな人材を育てよう、というのが21世紀の教育のようです。
「与えられた問題の、決まった答えを探す」という時代は終わったのです。
「うちは Project-Based Learning です」と明言している学校でなくても、似たスタイルで勉強を進める学校はありますし、このような “Interdisciplinary”と呼ばれる混合科目的な学習は、これからどんどん増えていくと思います。
その場合、戸惑うのではなく、「あぁ、新しいスタイルのカリキュラムなのね〜」と捉え、ひとつの正解を探すのではなく、子供の
- 分析力
- 判断力
- 表現力
- 情報収集力
が試されているのだ、と受け取ってみると良いと思います。
どうでしょうか。
これらのスキルについては、また別記事で書いてみましょう。
なるほどー。私もその単語、聞いた事はあったんですが、中身は知りませんでした。勉強になります。
最近はG&Tについてもネガティブなコメントが聞こえてきますね。そもそもGiftedとは、天才である代わりに、問題も抱えている事もあるので、それよりBrightな子供の方がいい、みたいな記事も読みました。これから受ける子供が減ってくるかもしれないですね。 受け身でいてはいけない。。はー、身につまされます。私の毎日受け身だらけなんで。。。
KYさん、こんにちは。
そうですね、ギフテッドという考え方を、なくそうという動きもあるそうです。
「ギフテッド」とラベルづけされた子どもたちが、わからないことが出てきた時に、「ギフテッドだから」と質問がしにくいとか、ネガティブなプレッシャーになってしまう、という研究もあるそうで。
21世紀的な人材育成という意味では、このラベルもフィットインしないし、近々、なくなるコンセプトかもしれませんね。
Most Likely To Succeedという映画を最近みて、ちょうどプロジェクトベースラーニングについて知りました。詳しい解説でよくわかりました。ありがとうございました。
こんな教育受けられて子供たちが羨ましいです。
96763さん、こんにちは。
本当、こんな学校も面白いですよね。
ただ、基礎的な知識とか、繰り返しの練習、というトラディショナルな学習はある程度必要なのに対し、プロジェクトベースの学校出身の子供達はそういう部分が抜けていたりするというのも事実だそうです。
基礎を飛び越して応用、はありえないことなので、やはり子供が必要なものを見出して、カバーすることは必要ですよね。