脱サラ母の数学教師への道 (10) アメリカの中学で教育実習

こんにちは、Erinaです。

 

脱サラしてアメリカで数学教師になるまでの道のりを書いているこのシリーズ。(前回までの記事はこちらで)

今学期から、いよいよアメリカの現地中学校での教育実習が始まりました。

 

教育実習は英語で Student-teaching で、教育実習生は Student-teacher と呼ばれます。実習を指導してくれる先生は、Master Teacher, Guide Teacher, Mentor Teacher などと呼ばれます。

 

「実習先は昨年12月中旬までにわかる」と言われていたものの、予想通りのアメリカらしさで、結局、今の実習先に落ち着いたのはつい2週間ほど前のことでした。

 

それも、最初に指定された実習先は、朝のラッシュを考えると片道1時間かかるところで、「それはちょっとエクストリームすぎじゃないか」と抗議。すると、片道30分のところに変えてもらえました。本来は自分の近所の学校に割り当てられるはずなので、これでもかなりの妥協です。

 

しかし、行ってみるとなかなか面白い学校でした。

ちょっと紹介してみたいと思います。

 

 

生徒のデモグラフィー:

サンディエゴ南部の新興住宅街に建てられたこの公立中学校は、創立14年の新しめの学校。

7年生(日本の中1)と8年生(日本の中2)という2学年しかいないにも関わらず、生徒数1,800人というマンモス校。

 

生徒の大多数は、メキシコ系で中流階級家庭(またはそれ以上)の子供達。

みんな真新しいアバクロやらスポーツブランドやらのパーカーにジーンズだし、筆記用具なんかを見ても、「あぁ、物質的に苦労する家庭の子じゃないんだな」というのがわかります。

前学期にアシスタントをした難民学生の多い学校と比べると、そういう違いがありありと見えて、車で20分も離れていないこの2校から、アメリカ社会の格差やダイバーシティというものを肌で感じるのでした。

ただ、どんな環境の学校に行こうと、私は数学を教えるのだ、というミッションを掲げ、どんな子供達でも新しいこと学ぶことができる、という教育理念が必要。

それぞれの環境に合うのは、どんな方法で、それをどう教えるか、ということを、私は勉強させてもらっているわけです。

 

 

カリキュラム:

カリキュラムは、”1-to-1″(ワントゥーワン)と呼ばれる通り、一人に一台の iPad が与えられ、宿題も授業のプリントもほとんどそれを使います。テストの結果や成績なども全てオンラインで管理され、親もそれをもとに先生たちとコミュニケーションをとる。アメリカの分厚い教科書を持ち歩く子供は一人もいないし、必要な情報は全てそのiPadに入っているわけです。

 

私はこのブログでも書いているように、テクノロジーには賛否両論。

自分がIT分野で勉強・仕事をしてきたからこそ、無条件に賛成も反対もできません。

 

ただ、テクノロジーをどうやって、どれくらい使うかというのは、やはり先生個人に委ねられていて、それはアメリカらしいのかな、と思います。

 

例えば、私が実習するクラスでは、ノートは手書きで取るし、テストも紙のテストです。ただ、毎日の宿題や提出物はオンライン、という50-50な感じ。

これが、別の数学のクラスでは、紙:オンラインの割合が10:90くらいのところもあるようだし、今日見学した理科のクラスでは、それが逆転していました。

 

これはやはり、先生個人にカリキュラムを決める権限があるという、アメリカの学校文化でしょう。

これももちろん学校や科目、学年ごとにポリシーが違うのですが、大まかな流れだけ押さえておけば、細かい部分をどうやって進めるかは先生ごとに違う、というのはよくあるケース。

私が担当するのは8年生ですが、この学年は80パーセントくらい学年全体が同じ教材を使うのに対し、7年生は100パーセントが同じ教材を使うのだとか。

つまり、残りの20パーセント分は「先生のカラー」を出せるというのがアメリカの学校なのです。

 

また、最近のコモンコアをがっつりと取り入れているため、授業はグループスタイル。

数学のクラスなのに、4人ずつの「班」になっていて、そのグループで作業することが多いです。この記事でも書いたように、やはりそこで必要なのは “Collaboration” です。

 

やはり、「列にびしっと机が並び、全員が前を向き、教壇に先生が一人立つ」というスタイルで教育を受けた私にとっては、新鮮すぎるくらい新鮮なこのスタイル。

このクラスの先生も、正面に立つことはほとんどなく、グループの間を歩き回ったり、床に膝をついて子供目線で教えたりと、フットワークが必要です。

 

数学のクラスでグループで何やるの?と思いますが、これはまた別の記事で紹介します。

はっきり言って、面白いです。笑

教えるのも面白いし、これなら数学の喰わず嫌いは量産されないだろうな、と思います。

 

 

 

スケジュール(時間割):

この学校は、”Block schedule”(ブロックスケジュール)と呼ばれる時間割形態を取っていて、通常の 45~60分 × 6コマの時間割とは異なります。

 

アメリカのスタンダードな中学高校の時間割は、こんな感じで、月曜から金曜を通して同じ科目を同じ時間に勉強します。

 

Period 1: 45-60 min

Nutrition Break: 20 min

Period 2: 45-60 min

Period 3: 45-60 min

Lunch: 30 min

Advisory: 30 min

Period 4: 45-60 min

Period 5: 45-60 min

Period 6: 45-60 min

 

“Period” は「○時間目」の意味ですね。

(アメリカの学校での1日の流れはこの記事も参考にどうぞ)

 

しかし、このブロックスケジュールは、1コマの時間を倍にし、1日のコマ数を半分にするのです。

つまり、

 

月曜と水曜

 

Period 1: 90-120 min

Nutrition Break: 20 min

Period 2: 90-120 min

Lunch: 30 min

Advisory: 30 min

Period 3: 90-120 min

 

火曜と木曜

 

Period 4: 90-120 min

Nutrition Break: 20 min

Period 5: 90-120 min

Lunch: 30 min

Advisory: 30 min

Period 6: 90-120 min

 

で、金曜は特別にスタンダードスケジュール。

 

みたいな感じ。

 

アメリカの大学で授業を取ったことがある人は、それをイメージするとわかりやすいと思います。月水の授業と、火木の授業にたいてい分かれていて、長さもだいたいこれくらい。

 

「2時間授業?長い!」と最初は思っていたけれど、グループで作業などしているうちに時間はあっという間に流れ、子供たちもトイレ休憩などに立ち上がる子はほとんどいません。アメリカの学校でトイレ休憩についてはこの記事で。

 

やはりメリハリのある授業作りをすることで、子供達の熱中度は変わってくるし、時間なんてあっという間に過ぎてしまう。90〜120分授業に慣れてしまうと、45分授業になった時に、「必要なことを全部言えるかな?」と不安になります。

 

どうでしょうか。

 

次回は、こんな面白い学校の教室の様子を紹介してみたいと思います。

 

 

 

 

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