州統一学力テスト

こんにちは、Erinaです。

 

学年度末も近いこの時期、各学校では、州統一の学力テストが行われています。

ここカリフォルニアでも、3年生以上の子どもたちが対象で、国語・数学のテストがあり、5年生以上はそれに理科が加わります。

 

数学のカリキュラムについて書こうと思ったけど、今日はこのテストについて先に書いてみたいと思います。

 

目的は?

統一学力テストは、一般に “Standardized test” と呼ばれます。大学受験や高校単位などに使われる、SAT/ACT/AP なども同じように呼ぶことができます。

州のテストということで、”State test”なんて言われることもあるかな。

 

また、このような学力テストは “high-stakes test” とも呼ばれるのですが、英語で”high-stakes” というのは、それにかかっているリスクもゲインも大きいという意味です。

“This investment is high-stakes.” と使われた場合、「この投資は得るものも大きいけれど、失うものも大きい」という意味になります。

 

これが学力テストで使われた場合、テスト結果が何かに大きな影響を与えるという意味です。たとえば、日本人には馴染み深いセンター試験なんかもやはり “high-stakes” となります。これはセンター試験の結果によって、受験の合否が大きく変わってくるからです。

 

しかし、今回の、カリフォルニア州の3〜12年生が受けるテストがなぜハイ・ステイクかと言うと、生徒個人の学力判断というよりも、もう少し政治的なものが関わっています。

 

ここ数週間、カリフォルニアで行われている学力テストは、CAASPP (California Assessment of Student Performance and Progress)  と呼ばれます。

 

その中でも、教科別に名前がついていて、

  • SBAC (Smart Balanced Assessment Consortium):国語と数学
  • CAST (California Science Test):理科(5年生以降)

と呼ばれます。教育業界はacronym(略語)がとにかく好きです。

 

これらのテスト結果は、州が分析し、各学校のパフォーマンスを調査する材料になります。

つまり、テスト結果が高い学校は、「よしよし、ちゃんと履修内容を教えているな」という評価を受けることになるし、そうでなければ、「この学校はやることをやっていないんじゃないか」という評価になるわけです。

そしてその評価を使って、来年度の人事や予算などの決定が行われる。

(これは2001年にブッシュ政権によって定められた “No Child Left Behind”政策の一環で、こうやって必要な学校や学区に予算分配しましょう、というもの)

 

ということは、これは生徒個人の成績というよりも、学校として、校長として、ディストリクトとしてのパフォーマンスを調べるというツールなわけですね。

そういう意味で、このテストは政治的にとても “High-stakes” なわけです。

裏を返せば、学校やディストリクトとしては、良いテスト結果を出したいので、色々な方法で子ども達に良いスコアを取らせようと頑張るわけです。これについては、常に賛否両論で、特にディストリクトやスクールラインによって経済格差が大きいアメリカでは、このテストの意義が常に議論されています。

 

まぁ、ここでそれにどうこう言うつもりはないのですが、このテストの内容は、子どもにとってかなりストレスフルです。

TOEFLなどのオンラインテストを受けたことがある方はわかるかと思いますが、数時間、自分専用のパソコンステーションに座り、遮音ヘッドフォンをつけて、テストを受けっぱなし。私語はもちろん許されないし、トイレ休憩はかならず許可をもらう。

実はそのようなテスト期間が、学年・学校によって異なりますが、2週間続きます。その間、国語の授業中はずっとテスト、数学も授業中にずっとテスト・・・という状態です。

 

そんなわけで、こんなオプションが。

 

テストを辞退するオプション (Opt-out option)

何かを辞退する、参加しない、というのを、”opt-out”(オプト・アウト)と言いますが、このCAASPPも実はオプト・アウトできます。受験は絶対的な義務ではありません。

 

これはやはり、このテストは直接的に生徒のためのものではないことと、テストのストレスなどを考慮されたオプションで、2週間もの間、毎日、何時間もじっと座ってテストを受けるというのは、生徒によって苦痛な場合もあるからです。

 

この場合、保護者が「うちの子はテストは受けません」と書類にサインをし、対象となる生徒はその時間中は、図書館や決められた教室で一斉に集められて、自習したり、用意された課題をやったり、というアレンジをされます。

 

先日、私もうちの息子に聞いてみました。

 

私:「このテスト、何のためにやるか知ってる?」

息子:「え、大学進学とか、そういうのじゃないの?」

私:「ううん、全然。もっと政治的なもので・・・云々。だから、もしストレスになるようなら、受けなくても良いんだよ。」

息子:「ふーん、そうなんだ。でも僕、別に受けて良いよ。楽しいし。」

私:「あ、そう。なら良いけど。」

 

というわけで、彼はテストを楽しみにしてるようでした。

まぁでも、全員がそうとは限らないし、こういうオプションがあると知っているのは良いことだなぁと思ったので、オプト・アウトについてのリンクをシェアします。

 

 

内容は?

テストの内容は、この記事でも書いたような、コモン・コアのスタンダードに沿った各学年における学力到達度に基づいています。

が、あくまで学力到達度なので、具体的に「6年生なら分数のわり算を練習しておけば大丈夫!」というものではないのです。

 

SBAC(国語と数学のテスト)はこちらでサンプルテストを受けることができるのですが、子供にテスト勉強としてやらせるのはあまりオススメしません。

親が「どんなものかなぁ?」という程度で見てみるのは良いかもしれませんが、うちは子供にはやらせてないです。

なぜかと言うと、「これをやっておけばテスト対策になる」という教材ではなく、やはり毎日の積み重ねが大事、ということであり、付け焼き刃的な練習で良いスコアが取れる内容ではないからです。

 

テスト内容の詳細については、また別の機会に紹介してみたいと思います。

上のサンプルテストのリンクは、特に生徒の情報など必要なく、誰でもどの学年でも匿名で受けられるので、どんな内容か興味のある方は試しに受けてみてください。

 

 

 

カリフォルニア以外の州でも、コモン・コアを取り入れている州は似たようなテストを受けているかと思います。

 

全米でテストを受けている子どもたち、頑張れ~!!

 

 

 

 

 

“州統一学力テスト” への6件の返信

  1. はじめまして。
    フロリダの公立小学校で教師をしているCoquina(コキーナ)と申します。
    教育に携わる者としてErinaさんのブログ記事、
    興味深く読ませていただいています。
    フロリダ州でも公立校の3年生から
    州統一学力テストが始まります。
    去年3年生を教えましたが、教師の私も緊張しました。
    3年生のELAのテストにパスしないと、
    進級できないのです。
    無事、我が校の3年生全員パスしたという結果を
    もらった時は、同僚と飛び上がって喜びました。
    今年は4年生を教えています。
    4年生からELA、Mathに加えてWritingもあり、
    先月、全テストを終了した時は本当にホッとしました。
    ほとんどの公立校が、テストの成績を上げるため、
    躍起になっていますが、Erinaさんのおっしゃる通り、
    毎日の積み重ねが大事。
    我が校では毎日の授業と様々なアクティビティを通して、
    スタンダードを教えるポリシーなので、
    テスト・プレップは全くやりません。
    公立校で教える限り、避けて通ることが出来ない統一学力テスト。
    本当に”全米でテストを受けてる子供たち、頑張れ~!”
    としか言いようがありません。
    それでは、またお邪魔させていただきます。

  2. へー。私も、そのテストは大学進学とか、高校進学の時にベースになるものかと思っていました。違うんですね。こちらNYでも、結構opt outしている人いますが、意見はバラバラです。毎回為になる記事、ありがとうございます。

  3. 始めまして。最近ブログを見つけて参考にさせていただいています。こちらはテキサスです。3年生からSTAARテストがあります。うちの子は現在2年生で来年からテストを受けます。3年生のSTAARテストの成績が5年生からの中学校進学の重要項目なので今から気になっています。うちのディストリクトでは全校がMagnetで中学校は成績で入れる学校が決まります。トップ85パーセンタイルに入ると満点になるのですが、それをLexileの点で見ると3年生時点で5年生レベルの本が読めていないといけないことになっています。毎日がんばらせるしかないですよね。

  4. Coquinaさん、こんにちは!
    日本人教師の先輩ですね。それも小学校とは!!

    私も今の勉強をし始めて、自分が生徒や親だった時には見えなかったことがよく見えてきて、驚いてばかりいます。
    親として考えさせられることも多く、昔は特に考えずに流されていたことも、ちょっと待てよ、と一息ついてみるようになりました。
    様々なルールにはそれなりの理由や背景があり、誰かの決断が子供たちの教育に影響を与えているなんて、知りもしませんでした。「純粋な教育」って何なのかなぁと思います。
    ただ、公立教育というのは一つのシステムであり、それを作っているものは何なのかを知ることや、それはこの国のことを知ることだったり、とても面白いですね。
    州が変わればまた様々な違いもあるようで、それもアメリカらしいですよね。

    ぜひまた遊びに来てください!

  5. KYさん、こんにちは。
    私も親としての意見と、教師としての意見と、バラバラだったりします。GATEプログラムとか、Honorsクラスとか、教師として見えるものと、親として見えるものが違って、色々と考えてしまいますね。
    テストスコアの利用については、州によって、またディストリクトによって違うと思うので、調べてくださいね。

  6. みなみさん、はじめまして。

    我が家は、子どもの教育という意味では、かなりゆるいほうなので(笑)、あまり参考にならないかもしれませんが。
    上の方のコメント返信にも書きましたが、私自身、アメリカの教育システムを勉強していく中で、親としての意見と、教師としての意見が異なることが多々あります。
    教師としては許容できるけど、親として自分の子供にはやらせたくないなぁ・・・ということもあります。
    我が家の教育は、自主性を重んじているので、子ども自身がやりたいと思えないことや、意味を見出せないことに、親は強制はしません。
    そういう意味で、うちの学校の先生たちは素晴らしい先生ばかりだなと思うし、彼女たちを信じていけば、中学高校と、身の丈に合った良い教育を受けられるというのが我が家のポリシーです。
    「良い教育」という定義は人によって様々かと思いますが、少なくとも、数字で表せるものじゃない、というのが我が家のポリシーです。それを否定はしませんけどね。
    なのでやはり大事なことは、親がリサーチをしながら、明確なゴールをもって、ぶれないことだと思います。

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