脱サラ母の数学教師への道 (12) アメリカ教職課程の教科書

こんにちは、Erinaです。

 

アメリカで脱サラした二児の母が、公立高校で数学教師になるまでの道のりを書いています。

今日は、アメリカの教師たちがどんなことを勉強しているかを知るために、プログラムで使われている教科書を紹介してみたいと思います。

 

これらは、私がアメリカの教職課程内と前にとった教育関連の授業で使われた教科書の一部です。どちらかというと、一般書というより、教員向けのものが多く、実際に教室で使える情報も含まれていますが、興味のある方はぜひチェックしてみてください。写真をクリックするとアマゾンの各書籍のページにリンクします。

 

 

 

Diversity(ダイバーシティ)について

これは、教職課程にアプライするために必要なクラスで、UCSD Extensionでとったクラスの教科書。私が教育分野で初めて買って読んだ本でしたが、読みやすく、勉強になる内容でした。

 

“Student Cultural Diversity” by Eugene Garcia

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカのクラスルームでは避けられない「ダイバーシティ(多様性)」の勉強。

移民や難民の生徒のデータや、英語を母語としない生徒 (EL Students) への対応など、かなり幅広い情報をカバーしていて、現在のアメリカの教育における立ち位置がわかる内容でした。

 

ケーススタディのような実際のストーリーも含まれていて(教育の本ではここ重要!)、「そうか、そういう子供もいるよね」と参考になります。やはり、一般的な単なる方法論よりも、実体験や実際の生徒と教師のやりとりが含まれていないと、教育者が書いた本とは言えない、と私は思います。

肩書きに関わらず、実際のクラスルームで、子供達と向き合い、泣いたり笑ったり、試行錯誤しながら、卒業生や進級生を出す、というのが教育者だと私は思うからです。

そんな意味で、この一冊は勉強になりつつ、そういう有機的なものが含まれている一冊でした。

 

 

 

Classroom Management(クラスルームマネジメント)について

 

クラスルームマネジメントという概念が、日本語でどう翻訳されるのかはわかりませんが、アメリカの教職課程ではたぶん最もウェイトが置かれる部分で、科目に関わらずガッツリと勉強します。

 

クラスルームマネジメントにはいくつかの大きな柱があって、

  • Understanding the students(個々の生徒の理解→生徒指導に影響)
  • Effective instructions(授業の効果性→カリキュラムに影響)
  • Classroom culture(教室環境→学習効果に影響)

というふうに私は分けています。

これは学年や科目が異なれば、必要なものやプライオリティも変わってきますが、ベースになるものはやはり共通しており、「クラスルームマネジメントの父」と呼ばれる筆者が、Robert Marzano(ロバート・マルザノ)です。

 

彼はクラスルームマネジメントについての本を何冊も書いており、私がSDSUの教職課程で最初にアサインされたのも彼の本でした。

 

“Classroom Management that Works” by Robert Marzano

 

 

 

Chapter 1 はちょっと読みにくかったのですが、読み進めるうちにケーススタディや例が増えてきて、それぞれの章が各コンセプトで分けられているのであっという間に読み終わった本です。

クラスルームマネジメントについてもっと知りたい人は、ぜひ彼の名前でググってみてください。youtubeなんかにも彼の動画がゴロゴロとあります。

 

 

 

ELD Education(英語習得)について

この教科書を使ったのは、私が一番興味のあった言語学のクラスで、英語に関わらず、「言語」と「学習」がどのように相互作用しあっているのかが見えるものでした。

 

“Scaffolding Language, Scaffolding Learning” by Pauline Gibbons

 

この本はとても読みやすく、参照もしやすいため、他のクラスのエッセイにも使いました。

 

やはり言語習得の本なので、

  • 話す (Chapter 2/3)
  • 書く (Chapter 4/5)
  • 読む (Chapter 6)
  • 聞く (Chapter 7)

の順番で書かれており、それもEL Student(英語を母語としない生徒)の視点で書かれているので、自分自身に応用できる部分もたくさんありました。

 

日本語環境で生まれ育った子供に、作文(日英両方)を教えることが多いのですが、その場合のアクティビティや練習問題などは、この本がきっかけになっていることが多いです。

「バイリンガル教育」というものを、少し計画的に、それも研究に基づいて見通しを立てたい、という方にもオススメです。言語というものが、どうやって身につくのか、そして受け入れるだけの学校教育とどうやってつなげていくか、というのが見えるかと思います。

 

 

Academic conversation(アカデミック会話)について

Academic language(アカデミック言語)についてはこの記事で書きましたが、アカデミックな場で必要なコミュニケーション能力や言語力というのは、日常会話で使うものとは質が異なります。

 

子供達が学校の授業で使う言語というのは、やはりアカデミックなものであり、学年が上がるほど、日常会話だけで補えるものではなくなってきます。

この記事でも書いたように、バイリンガル環境で育つ子供が、年齢が上がるにつれて、ホームランゲージ(家庭で使用されている母語)の割合が減り、スクールランゲージ(学校で使用されている第二言語)が強くなるというのも、やはりこのアカデミック言語が増えていくからです。

 

“Academic Conversations: Classroom Talk That Fosters Critical Thinking and Content Understandings” by J. Zwiers and M. Crawford

 

 

この本は、その中でも「アカデミック会話」にフォーカスしたもので、特にコモン・コアで重要視される “Collaboration”(他人との協力)で必要不可欠なオーラルコミュニケーションをテーマにしています。

 

特に日本人が苦手とするディスカッションや、グループワーク。そこでの参加というのは、直接的に成績につながり、やはり口から出る言葉で意思表示や課題達成できるか、というのは個人のパフォーマンスを示す大きな要因です。

 

これは「おしゃべりになれ!」という意味ではありません。少ない口数ながらも、要領を得ているとか、効果的に伝わるとか、そういう「質」を高める努力であり、「量」を問われているわけではありません。

会話の質を高めるために、”Critical thinking”(日本語で批判的思考)がここでも使われていて、それは練習次第で誰でもできるようになる、という考えです。

 

 

かなりあっさりとしたレビューですが、私が実際に教科書として使ったものの中から、「これは良かった!」と思えたものをリストアップしてみました。

 

「アメリカで先生になる」というのがどんなトレーニングなのか想像もつきませんでしたが、これらの教科書を読んで、かなりそのギャップが埋まった気がします。

子供たちが日ごろ受けている学校教育は、どんなポリシーやアイディアに基づいているかを知るのは、やはり私たち外国人親にとっても役立つはずです。

 

どうでしょうか。

 

 

この「脱サラ母」シリーズ、他の記事はこちらでどうぞ。

 

 

 

 

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