10年ぶりの日本帰国で感じたこと

こんにちは、Erinaです。

 

2週間ほど、子供達を連れて日本に里帰りしていました。

それこそ10年ぶりの日本だったので、物理的なことだけでなく新発見がたくさんありました。

 

「食べ物が美味しい」とか「カスタマーサービスが素晴らしい」というのは、一時帰国者が口を揃えて言うことなので、ここではそういうことには触れずに、今回は、最近の自分自身に照らし合わせた発見について書いてみたいと思います。

 

日本に到着して数日後、一番驚いたことは、日本にある選択肢の数でした。

例えば、食事一つとっても、どこのレストランで何を食べようか、決めるのは至難の技で、こんなにも選択肢があることって、アメリカではないなぁと感じました。

加えて、食べ物に限らず(服から生活用品など)、どこで何を選んでも、そのクオリティはかなり高いので、「失敗したね!」と思うこともほとんどない。全てにおいて「かなり良い」という評価をつけられるわけです。

 

最初の数日は、「さすが日本クオリティ」とこれに感心していた私ですが、ある時、この「数多い選択肢」について、ふと気づきました。

 

それは、

 

「これで毎日を忙しくしてたら、5年先、10年先の将来を考えるなんて無理かも」

 

ということ。

つまり、今日はこのレストランでこれ、明日はあそこに行ってこれ・・・と “keep mind busy” な毎日を送っていたら、長期的な将来やゴールを描いて、それに向かって努力する、というのはそう簡単には起こらないような気がしたのです。その日、その日は美味しくて、満足感を得られたとしても、じゃあ明日は?1年後は?10年後は?という不安が常について回る。

あまりに忙しくて、そんな刹那的な日本の生活の中にいれば、私も「35歳で脱サラして教師になろう」なんて思えなかったんじゃないかな、と思ったのです。

 

そう考えた時、アメリカの私の生活はシンプルだけど、そのシンプルさこそが、長期的なゴールを描き、それにフォーカスさせてくれているのかも、と気づきました。

 

「アメリカンドリーム」と呼ばれるような、貧困層出身者や移民達がエリートになったりするケースが、この国ではゴロゴロあります。それは、シンプルな生活の中では「本当に大切なもの」を見つけやすく、それに集中できる環境でもあるから。

 

おいしい食べ物がなければ自分で料理するし、便利な道具がなければ自分で作ろうとする。スキルアップ・キャリアアップしたければ学校へ行く。

しかし、どこに行ってもおいしいものが食べられて、便利な道具が買えて、たとえ給料に不満があっても一家が路頭に迷う心配がなければ、わざわざ苦労してまでリスキーな「変化」なんて起こす必要がない。

そういう意味では、やっぱり日本は富裕国であり、アメリカの貧困率に比べたら、まだまだ恵まれているんだなぁ、と思うのです。

 

ちょっと数字にして考えてみましょう。

 

一ヶ月間の自分の生活を考えてみてください。

これは単なる金銭的なものではなく、エネルギーとか、満足感とか、時間とか、そういうものです。

 

一ヶ月に作り出すもの(つまり「生産」)を100とします。

一ヶ月に使うもの(つまり「消費」)は、いくらになりますか?

 

たとえば、金銭的に毎月いくらか貯金しているという人は、消費は90かもしれません。または、いや、毎月稼いできた分は使っているという人は、消費を100とします。

 

つまり、

 

生産:100

消費:90〜100

 

たぶん、多くの日本人はこのケースになるはず。

 

毎月、プラス10程度の差額が生まれています。

 

仕事をしていない場合も、生産が0ではありません。専業シュフなら家族の生活を作り出しているわけだし、学生なら将来に向けて何かを生産しているわけです。学者だったら知的財産だったり、アーティストだったら文化的財産だったり。

この数値は、目に見える「金額」だけを測るものではありません。

なので、消費はどんなものかと言うと、精神的・肉体的な消費になります。これが毎月、きちんとクリアにできないと、次の月に持ち越して・・・とだんだん溜まっていき、将来のことを考える余裕は生まれません。

 

では、長期的なゴールを持って、それに向かっている状態ではどうかと言うと、

 

生産:150

消費:100

 

この場合、差額がプラス50になって、将来的な変化(転職とか)に備えるスピードが早まるわけです。

 

これはビジネスの基本でもありますが、儲けを生み出すには、

 

消費を減らすか

生産を増やすか

 

という二択しかありません。

 

消費を減らすのはというのはやはり限界があり、どちらかというと受け身なビジネス姿勢です。考えてみてください。一ヶ月の食費や生活費を削って「貯金」って、ある程度の限界があるはずです。できても収入の10〜20%くらいじゃないでしょうか?

逆に、生産を増やすというのは「投資」であり、どちらかというとアグレッシブなビジネス姿勢です。

 

日米のビジネスを比べてみてもここに大きな違いがあります。

日本では、「見通しの利かない部門には投資できない」という姿勢が強いですが、アメリカでは見通しを利かせてグイグイ投資します。つまり、「生産を増やす」という考えで、アメリカのビジネススピードが速いのはこのせいでしょう。

 

これを個人の人生設計に当てはめた時も、やはり、「今の生活を変える」というのにもこの二通りがあって、アメリカでは「生産を増やす」という考え方、つまり、仕事をしながら大学に行くとか、子育てをしながら大学院に行く、ということが、受け入れられるわけです。

 

これはどちらが良い悪いということではありません。

 

平均的にクオリティレベルの高い日本か、一発逆転を狙えるアメリカか。

どちらにも長所と短所があります。

私は今回の里帰りで、「やっぱり日本にないものがアメリカにあり、アメリカにないものが日本にある」ということを実感したし、どれだけ時間が経っても、それが同化することはないだろうし、だからこそ自分の生き方を自発的に選ぶしかない。受け身ではなく、与えられた環境で、自分の人生をまさに謳歌させるための生き方を選ぶしかないわけです。

また、アメリカにも日本的な暮らし方をしている人はごまんといるし、日本にもアメリカ的な暮らし方をしている人はごまんといるでしょう。何だって、100%というのはありえないし、どこかでちょうど良いバランスを探しながらみんな生きています。

ただそれでも、環境として、消費を抑えたい日本文化と、生産を増やしたいアメリカ文化。そしてシンプルな生活のアメリカと、多忙な生活の日本では、見据えられるものが違ってくるのかも、というのが今回の里帰りの考察でした。

 

 

みなさんはどう思いますか?

 

 

 

“10年ぶりの日本帰国で感じたこと” への8件の返信

  1. はじめまして。日本在住のMaoと申します。
    偶然見つけたアメ10のErinaさんの記事がとても面白くて、こちらのブログも日本からずっと拝読しています。
    私はアメリカに住んだことも住む予定もないので、きっとこのブログの対象読者ではないと思いますが、今回特に興味深く読ませていただきまして、初めてコメントさせていただきます。

    私は漠然と、海外の方は、どうしてあんなに毎日エネルギッシュに活動して、スキルアップに励んだり、少し先の未来をロジカルに考える気力があるんだろう?と、ずっと不思議でした。
    私は毎日仕事でぐったり疲れてしまうし、何か考える気力もないというか、現状維持で精いっぱいになってしまって。

    で、日本はずっと“keep mind busy”なこと、本当におっしゃる通り…!と思いました。
    しかも、アメリカと比較しても日本は選択肢が多く忙しいと思われたことに驚きました。
    前向きにキャリアチェンジを進めていらっしゃるErinaさんですら「日本では無理だったかも」と思われたことに、なんかちょっとホッとしたりして。。笑
    毎日いっぱいいっぱいに思うのは、こういうこともあるのかもしれませんよね。

    おっしゃる通り、日本とアメリカ、どちらが正解ということではないと思います。
    「海外ではこれが普通」「日本は効率が悪くてダメ」「海外みたいにこうすれば良いのに」という話をよく耳にしますが、そもそも国民性や文化も違いますし、丸ごと真似したところで失うものも多くなる気がします。
    緻密で情報過多なこの日本で、ちょうど良い塩梅の生き方ってなんだろう?と改めて考えさせられました。

    ところで、例に挙げていた食事のセレクト以外で、どんなことが選択肢が多いと思いましたか?
    もうひとつだけ教えていただけたらうれしいです。

  2. こんにちは。
    私はアメリカで暮らして数ヶ月になり、おそらくまた日本に帰る予定でいます。
    アメリカでの生活はたしかに選択肢は少ないですが、人々の消費の多さにびっくりしました。
    質はいまいちでも、類似品を持っていても。家が大きいからとはいえ、それ、、そんなにいらなくない、、?と驚くことが沢山あります。

    そして大きい目立つ物を所持していることが良い、という雰囲気を感じます。

    節約、がまん、という空気はあまり他人に見られないようにしているのかもしれませんが。

    (本当はいらないけど話の流れで否定できない時)うちは買えないわあ、お金ないし。と言うと、シーン、となりますね。。
    消費できないことが可哀想、という考えかもしれません。
    郊外の中間層ファミリーです。

    たしかにBIGなもの、沢山の物、はスゴいなあとは思いますが、、私は日本向きなのかもしれません😂

  3. Maoさん、初めまして。
    いつも記事を読んでいただいているとのこと、ありがとうございます。在住場所に関係なく、読んでくださって嬉しいです。

    よそから学ぶことは大事だけれど、自分の立ち位置を理解せずに、それを鵜呑みにしてしまうとか、丸写ししようというのはやはり無理がありますよね。
    こうやって、お互いのことを客観的に知る努力は必要だけれど、じゃあそこからどうするか?というのはやはり自分と向き合う作業をしなくてはならないし、それは個人で異なるかと思います。
    日本で神経をすり減らして働いている人も、一度、外国生活をしたことがある人はやはり上手にアウトプットをしているし、物事の見方を変える、という癖をつけることは大事だと思います。

    日本で選択肢が多いと感じたのは、本当に何もかも、でした。
    服でもTシャツ1枚から、文房具でもボールペン1本から、「どれにしよう?どこで買おう?」と悩んだし、そこで悩んでしまったら面倒くさくなってしまって、「やっぱり良いや」と結局、買わずじまいでした。笑

  4. Yukoさん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    確かに、アメリカの大量消費には私も最初は驚きました。
    一人暮らし用ってどこにあるの?って感じでしたね。
    ただ、この記事で書いたことは、金銭的・数量的な消費ではなく、それから得られる満足感または疲弊感みたいなものです。もし、膨大な量のものを買ったとしても、それでその人が満足しているならそれは良いことだと思います。金銭的なことだけを見てしまうと、クレジット社会のアメリカはみんな赤字です。笑

    節約や我慢も、本人が好きでやっているなら美徳だけれど、それを押し付けてしまったり、他人の消費を喜んであげられないのはちょっとな・・・と思うようになりました。やはり、将来につながる消費と生産って何だろう?ということですよね。

    私は今回、日本の資源消費に驚きました。というのも、たった2週間の滞在で出た紙袋などの包装紙です。
    これもまた記事にしようと思いますが、日本は本当に節約国家なのか?というところもちょっと疑問です。

  5. Erinaさん、10年ぶりの一時帰国とは驚かれたこと、違和感を感じたこと色々あったでしょうね。70年代後半や80年代後半に3,4年ぶりに海外から帰国した際、私はすっかり浦島太郎のような気分でした。ネット社会の今はそうはならないのね…という考えたら当たり前のことに感心しながら記事を拝見しました。

    Erinaさんが感じた選択肢の多さは地方でもそう感じましたか?私はこの3月まで5年間九州に住んでいたのですが名古屋に転勤になり、人やお店の多さにErinaさんと同じように驚き、疲れています(笑)

    電車は1時間に一本だし、民放は2つしかチャンネルないし、デパートも1つしかないけれど、海も山も近くて、新鮮な食材に恵まれ、ゆとりがあるから人が優しい九州の生活が大好きでした。都市部と地方、それぞれのいいところ、悪いところはありますが実際に住んでみるまでこんなに違いや格差があることを知りませんでした。あらゆる選択肢が多い・多すぎるのは都市部なのでは?選択肢はそんなにないけれど例えばサーフィンが大好きで宮崎に移住されて、朝早く波乗りしてから農作業へというサーファー農家さん。サラリーマン家庭ばかりではないし、価値観や仕事&生活の自由度が地方は高くていいなと思いました。米国内の都市部と田舎の暮らしの違いは日本以上でしょうね。

    紙袋についてはまたその記事をErinaさんが書かれた時に投稿させてくださいね。長々と失礼しました。

  6. Chigusaさん、こんにちは。

    そうですね、きっと地方ではまた違うライフスタイルがあるのだと思います。
    今回は祖母のお墓参りに行けなくて、田舎のほうへは行きませんでしたが、きっとあそこではまだまだ時間がゆっくりと流れて、「大切なもの」を見失わない気がします。アメリカでも田舎ではなおさら生活はシンプルでしょうね。うちの近所も、8時半を過ぎたら真っ暗になり、とても静かになります。この環境が好きで引っ越してきました。

    今回、驚いたことの一つに、地方で暮らす叔父夫婦が、仕事を少し減らして、もうちょっとゆったりとした暮らしを選んでいたということでした。退職も間近な二人ですが、「もうそんなにガンバラなくて良いから、楽しみたい」と決断したそうです。
    とても働き者の二人だったので、そんな決断ができたことにびっくりしましたが、良かったなぁと心から思えました。

    今回の旅で、私が個人的に興味があったのはやはり同年代の日本人(特に女性)が、仕事や子育てをしながら、どう思っているんだろう?ということでした。
    ここサンディエゴで出会う同年代の日本人女性は、誰もが優秀で有能で、はつらつとしています。私が日本を離れて16年、何をmissing outしてきたのか?というのも興味があったし、彼女たちがどんなところからやってきて、どんなところへ帰っていくのかも興味がありました。そういうわけで、やっぱり都市部の同年代の会社員たちに目が行ったんだと思います。

  7. Erinaさん、さっそくお返事ありがとうございます。
    何もかも、でしたか。自分にフィットしたものを選べる環境は幸せだと思いますが、やはり想像した以上に日本は選択肢が多い国なんですね。。
    悩みすぎて面倒になって、結果買わないっていうの、私もよくあります。笑

    そして、この発見もそうですが、こうやって海外からの新しい視点を得られるのはとても面白いです。
    思いもしなかったマインドセットや方法論を知れたら、あ、あれはこんな風にしたら良いかも?と改善のヒントをつかめるので、そこから自分用に落とし込んでいくことが大事ですよね。
    物事の見方を変える癖、つけていきたいですね。

  8. Maoさん、
    選択肢も多すぎるというのは不幸でもありますよね。
    ある程度の規制があるほうが、「じゃあその中で頑張ろう」って思ってベストを尽くすこともできますから。
    人間、「自由」の使い方を知らなければ、そのありがたみもわかりません。
    お話を聞いていると、Maoさんは外国生活をとても楽しめると思います。
    また読みに来てくださいね!

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