大学進学の強い味方、AVIDプログラムとは

こんにちは、Erinaです。

 

今日は、ここサンディエゴ発祥のあるプログラムについて書いてみたいと思います。

 

AVID(アヴィッド)は “Advancement Via Individual Determination” の略称で、中高生が大学進学を選択する上でとても強いサポートをしています。(英単語の “avid” は何かに熱心な、という意味ですね)

対象となる生徒は、家族で初めて大学進学をする子供、つまり親が大学に行っていない家庭の子供たちです。

 

ここアメリカ、特に南カリフォルニアはメキシコを始めとした中南米からの移民が多く、「進学」というものが大きなウェイトを占めるアジア文化とは異なり、それほど重要視されていない傾向があります。一般的にメキシコの文化では、「子供は仕事をするべき、それもできるだけ早く」と考えられていて、大学進学は就職のタイミングを遅らせるものだと考えられているそうです。

そのような文化や価値観の中で育った場合、大学進学が子供たちの視界に入ってきた時に、進学のプラス面やロールモデルを伝えたり、アプリケーションなどの書類プロセスなどにおいてサポートが必要になってくるわけです。

 

また、中南米に限らず、アジア文化であっても、私たちのような移民の親を持つ子供達にとって、やはりこのプログラムは様々な側面で精神的サポートやアカデミックサポートをしていて、今では中学校でも取り入れられているというのは、納得できる部分でもあります。

 

そんなわけで今日は、このプログラムについて、普段は見られない内部から見てみることにします。

 

私がAVIDプログラムについて知ったのは、高校生の個人チュータリングをしていた時でした。その生徒は「AVIDのクラスを取っている」というのですが、それが一体どんなクラスなのかさっぱり想像もつかず。内容は、チュータリングや大学説明、ノートチェックなど・・・へぇー、アメリカの高校には色んなクラスがあるんだなぁ。

 

なんて思っていたのですが、そのうちにいく先々でその名前を聞くようになり、調べてみると、その対象となる学生に特色があることがわかりました。

 

この記事でも書いたように、やはり移民や難民の学生が多い学校で教えたいと思っている私にとって、このプログラムはどストライクだったわけで、こうやって生まれ持ってのディスアドバンテージをアメリカン・ドリームに変えていこう!というとてもパワフルな活動にとても興味が惹かれました。

 

そしてよくよく考えてみると、私自身も家庭で初の大学進学者だったわけで、アメリカで高校に通っていればAVIDプログラムの対象学生だったかもしれないのです。

そう思うと、「自分と同じ立場の若い学生たちを応援したい」という気持ちはものすごくわかるし、こうやってアメリカのサクセスストーリーは生まれていくのだな、と感じます。

 

そんな矢先、実習先の数学教師ミセスカーターが、AVIDプログラム担当だというので、授業見学に行くことにしました。

お邪魔したクラスはシニア(高3)のクラスで、この日は大学生のチューターが来ることになっているそう。

 

授業が始まると、まずカーター先生は出欠を取り、大学アプリケーションのチェックをします。遅れている人はこの時間にやっちゃいなさいよ、と言うとそれぞれにクロムブックを取り出して必要な情報を入力していきます。

 

その後、大学生チューター達が何やら紙切れ(スリップ)に書いてある生徒達の名前を読み上げ、名前を呼ばれた生徒達はそれぞれの場所で机で半円を作ると、チュータリングセッションが各々で始められました。各グループにはだいたい5〜6人の学生がいます。名前が読み上げられたスリップは生徒自身が「今週はこの勉強をしたいです」と事前に書いたもので、それを元にグループ分けされていたのです。

 

チュータリングセッションは、大学生チューターの専門によって、数学の微積分の宿題だったり、アメリカ政治のテスト勉強だったり、心理学のプレゼン準備だったりと様々。

 

少人数グループでのやりとりなので、ディスカッションがメインで、

 

「これはこう思う」

「いや、先生は授業でこう言っていた」

「ここの問題はこうするべきじゃないか」

「ちょっとわからないから教科書で調べてみよう」

 

というコミュニケーションがそこここで行われています。

 

私もこの時間が面白くて、それぞれのグループのやりとりに聞き入ってしまったのですが、やはりこの学習スタイルはアメリカならでは、という感じです。

 

自発的に問題と向かい合い、解決するために導いていく。

 

これは大学で必要な学習スキルで、「言われたことを言われた通りにやる」という受け身な姿勢では何一つ成し遂げられないのがアメリカの教育であり、アメリカ社会の縮図でもあります。

それをこうやって日常的に訓練しているこの生徒達は、このプログラムにいることで何歩も先を進んでいる、というのが私の印象でした。

 

当たり前ですが、カーター先生は数学教師なので、アメリカ政治や心理学など専門的なことになると答えられませんから、大学生チューターの力が必要になるわけです。大学生チューター達は、授業を再現するのではなく、あくまで生徒達の理解を深める役割ですから、ディスカッションではファシリテーターに徹します。ディスカッションが間違った方向に進んだり、ヒートアップすると、それを軌道修正する、または問題提起をするのが仕事です。

 

大学生チューターはみんな San Diego State University の学生だそうで、教育学専攻、心理学専攻がほとんど。彼らはAVIDプログラムを通して雇われていて、大学の単位なり給料なりを、きちんともらっています。

彼ら自身もこの高校卒業生&AVIDプログラム卒業生で、やはり自分たちと同じ、という感覚が芽生えやすいのでしょう。大学生の先輩から聞ける大学の話や、授業選択、専攻や就職のことなど、とてもポジティブな情報が還元されていくわけです。

“Peer tutoring”(ピア・チュータリング)と呼ばれる同級生によるチュータリングとは異なり、少し年齢の離れた先輩による指導は、日本の先輩後輩関係とも異なり、もっと「有益な情報」にフォーカスしていて、コミュニケーションもかなりオープンでした。

 

授業が終わる5分前になると、生徒達は先ほどのスリップにそれぞれのリフレクション(感想)を書き、今日のチュータリングで達成できたこと、できなかったこと、次回の目標などを簡単に書き込みます。

大学生チューターはそれを読み、各生徒の感想を自分の次回の指導に反映させる、というのが一連の流れのようです。

 

・・・というあっという間の60分授業(短縮授業日)だったのですが、かなりシステマティックで効率的だな、というのが私の第一印象でした。

 

AVID卒業生達の進学率や卒業率などから、プログラムの成功は高く評価されていて、最近では中学から取り入れられている学校も増えてきています。

実は私の前学期の教育実習先の中学校でも、AVIDの授業を取っているという子が何人かいて、ノートの取り方(コーネルノートについてはこの記事で)やテスト勉強の仕方などを大学生の先輩チューターから教わっているようでした。

生徒達にとっては「面倒臭い・・・」と思うようですが(まぁ確かにそうだろう笑)、長期的な目で見ると、期限通りに提出することや、正確に課題を終わらせること、計画立ててゴールにたどり着くことなど、とても大事なことを教えてくれるわけですね。

 

こういう要素を “Personal growth” などと呼びますが、やはり大学生活だけでなく、仕事をする上でも大事なことを教えてくれると思うし、私が生徒だったら、そして教師、親の立場だとしても、どんどんこのクラスを使うべき!と思います。

また、ほとんどの生徒はフレッシュマン(9年生の入学時)からこのAVIDのクラスを取っているため、みんな顔見知り。4年間、同じ生徒とチュータリングを受けて、試験勉強をしたり、大学進学を考えたり、本当に兄弟姉妹のように仲良くなれるそうです。

 

他にはフィールドトリップで大学ツアーをしたり、授業見学に行ったりと、生徒達に取ってはかなり貴重な体験をしているようです。

AVIDプログラムについてはこのウェブサイトでどうぞ。

 

どうでしょうか。

 

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