「ブス」という言葉の破壊力

こんにちは、Erinaです。

 

私は「ブス」という言葉が大嫌いです。

たぶん日本語の中で一番嫌いじゃないかな、と思える言葉です。

 

女性なら、聞いて、または読んで良い気分がしない言葉でしょう。

そんな言葉を、聞くのも書くのも今日で最後にしたいなという意味も込めて、この記事を書こうと思います。

 

「ブス」という言葉が持つ破壊力と、その言葉が女性に与える無力感というのは、日本で生まれ育った女性なら一度は感じたことがあるでしょうし、この言葉にまつわる日本文化はとても独特だなと感じるようになったのは最近のことでした。

 

日本で育つ子供達の言葉遣いと、アメリカで育つ子供達の言葉遣いを聞いていると、それはかなり明確だったからです。

 

日本語には、ブス、デブ、チビ、ハゲ、バカ・・・・などなど、相手を罵倒する言葉はたくさんありますが、その中でもこれらは子供達の間でも使われるトップ5でしょう。

もちろん子供達はそれほど深く考えて使っているわけでないにしろ、かなり幅広く、そして日常的にこれらの言葉は使われている印象です。

そして、子供達だけでなく、日本ではメディアでも聞く言葉です。

 

しかしアメリカでは、子供の頃から相手に対する言葉の選び方が、日本に比べてかなり意識的に教えられていて、人を不快にする言葉をそこここで耳にすることがほとんどありません。

 

そもそも、相手のことを蔑む言葉で、誰かを呼ぶことを、”Name calling” と呼ばれ、学校で禁止されています。

 

上の5つに該当する英単語は

ugly, fat, shorty, bald head, stupid, idiot などですが、これらをそもそも普段の会話ですら使うのを嫌がる大人は多いです。

(注:”bald head” はアメリカでは特に蔑む言葉ではないような気がしますが、どうなんでしょう。聞いたことがない。)

子供同士の口喧嘩で、”You are stupid.” というフレーズを聞いたら、「ちょっと!それ良くないわよ。」とすぐに叱られます。

 

興味深いのは、アメリカで育つ日本人の子供や家庭言語が日本語の子供の言葉遣い。

やはりアメリカの現地校でそういうルールがあるからか、こちらで育つ日本語スピーカーの子供達がブス・デブ・バカ・・・などの言葉を使うことを聞いたことがありません。つまり、そういう言葉が使われていない環境や、厳しく注意される環境で育った場合、日常生活のボキャブラリには含まれていないのでしょう。

逆に、日本からやってきたばかりの子供が、アメリカで育つ日本人の中でそういう言葉を使って、ちょっと変な空気になることもあります。

 

アメリカの高校で教えていると、良くない言葉を耳にします。

生徒同士の会話の中でFワードが聞こえてくると、先生たちは、”Hey, watch your mouth.” と注意します。

しかし、FワードよりもまずいのはNワードで、これは校長室送りになります。Nワードはやはり人種を考慮した言葉であり、特定の相手への侮蔑になるので、学校という場では許されません。

 

もちろん英語にも悪い言葉はたくさんあって、メディアで使われているのは事実だけれども、実際の生活の中で使ってはいけないという境界線はかなり明確に引かれているのです。

 

また、大人であれば、言葉の使い方で品位をジャッジされることがものすごく多い。

日本語でも、社会人で「マジ、やばくね?」とか使ってたら、「おいおい・・・」と思われるでしょうが、それが出世に響くとか、商談に影響するというところまで行くでしょうか。たぶんそれほどないですよね。

 

そんなわけで、相手を侮蔑する言葉、特に容姿だとか外見、自分にはどうしようもできない要素に関する言葉を使うことは、アメリカではものすごくものすごーく嫌がられます。

そういう言葉を平気で使うと、ものすごく見下されるし、品位を疑われ、ある程度の社会的信用も失います。(だから、「あなたたちの日本語、通じてなくてよかったね」と思えること、多いです)

 

そんな環境にいるので、「ブス」という日本ではかなりカジュアルに使われる言葉も、その使われ方が日本独特だなという気が私はするし、それは日本人女性が有無を言わせずに黙らされてきた社会を反映している気がするのです。

日本の「美醜」への執着は、アメリカから見るとちょっと異常な上に、そこで女性をこれほど落とす言葉を平気で使えるという文化。これは、日本で女性に対してのリスペクトがどれだけ欠けているかを象徴しています。

 

日本人男性にとって同じくらい無力感を感じさせる言葉って、思いつきますか?

男性陣に聞きたいのですが、「これを女に言われたら、もうぐうの音も出ない」という日本語って何でしょうか?

 

まぁ私は男になったこともないし、この質問に答える男性陣も女性になったことがないから、検証のしようもないのですが、気になるところです。

 

そんなわけで、あらゆる女性に対して「ブス」とか「バカ女」と冗談でも言えちゃう男性は、私の中で完全に品位と信用を落とし、どんなに優秀でも人として尊敬することは二度とありません。

“Thank you, but no thank you.” とポライトに言って離れるのみ。

 

少なくとも、自分自身で品位を下げることはしたくないものです。

他人が自分をどんな人間かジャッジする時、判断材料はこちらの口から出てくる言葉。

“You are what you say.”

ナイスな人だと思われたければナイスな言葉を、スマートな人だと思われたければスマートな言葉を。

私はアメリカに来て、そういうことを学んだ気がします。

 

 

 

どうでしょうか。

 

“「ブス」という言葉の破壊力” への2件の返信

  1. こんにちは。大変興味深く読ませていただきました。
    >「これを女に言われたら、もうぐうの音も出ない」という日本語って何でしょうか?
    うーん・・・日本語では思いつかないけど、英語の本とかドラマとか見ていて、それを言ったらおしまいじゃないか、と言いたくなる一言はすぐに思いつきました。
    “loser”
    私は大人になって女性にこんな事を言われるようなアメリカのほうが怖いかも。

  2. マサさん、こんにちは。
    男性からのコメント、ありがたいです。

    私も”loser”かなぁ・・・なんて思ってました。やっぱり男性から見てもかなり強いんですね。

    >私は大人になって女性にこんな事を言われるようなアメリカのほうが怖いかも。

    とありますが、日本人女性は「ブス」という言葉からそういう印象を、子供の頃からずーっとずっと持って生きているんです。と考えると、言葉の印象が変わりませんか?(マサさんが、女性にそういう言葉をかけているという意味では全くありませんので・・・)

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