アメリカに国語の教科書がない理由
こんにちは、Erinaです。
今日は、アメリカの学校と教科書について書いてみたいと思います。
日本で生まれ育ち、アメリカで子育てすると、戸惑うことの一つに「教科書」があります。
なぜなら、アメリカの小中高では、日本の小中高のように個人用の教科書を配布したり、購入したりという文化がありません。なので、「子供が学校でどんなことを勉強しているかわからない!」という声をよく聞きます。
実際、教科書自体を使わないクラスがほとんどで、あっても教室で保管されていたり、何年間も使い回ししたりというのがしきたりです。使い回しの場合は、新学年の始まりにチェックアウト(貸し出し)をし、学年の終わりに学校に返します。この場合、過去の子供達が使っているので、蛍光ペンでハイライトされてたり、メモが書かれていたり、落書きされていたりと様々な状態です。
特に国語の場合、教科書はほとんど使われません。
自分の子供達含め、キンダーから12年生までの教室を見てきましたが、国語のクラスで教科書を使って授業をしているのを、一度も見たことがないのです。
そんなわけで、日本育ちの親が戸惑うこの問題。
なぜそんなことが起こるのか?
教科書なしでどんな授業が行われているのか?
家庭でできるサポートはどんなことか?
について書いてみたいと思います。
まず、私が教職課程でとったクラスの一つで、なかなか興味深かったものを紹介します。
それは、”Reading for Secondary Education” というタイトルで、クラスメイトは全員、中高教員希望。科目は国語・数学・理科・社会・アート・音楽。
え?リーディングなのに?
と思うでしょ?
私も最初、「数学なのにリーディング?」と戸惑い、「このクラスは自分に必要あるのか?」と疑問に感じていました。
結論から言うと、ものすごく役に立った!
と言うか、教員と非教員の差をつけるとしたら、このクラスによる知識だな、と言えるくらいの内容だったのです。
その内容は、ざっくり言うと、「テキスト (text)」というものをどう捉えるか。
ここで言う「テキスト」はテキストブック(教科書)のテキストではなく、文章や活字、写真、絵画、図表、譜面などあらゆる「情報媒体」のことで、そう言われたら確かに国語以外の教科だって、これを教えなきゃね!と思えるのでした。
そしてこのクラスから受け取った「アメリカ教育の根本」となるものとは、世の中に溢れているテキスト(情報媒体)を正確に受け止め、分析し、decision making(決断)に使うということ。なので、画一的に編集された「教科書」というのは、その理念にフィットしないわけです。
リアリティの追究 “What”
では、この国の国語教師達は、授業で何を使っているか。
それは、一般的に読まれている本や記事、文献、音源などで、私たちが日常生活で読むものです。
例えば、私たち大人が行なっているリーディングとは、
新聞を読む
↓
「あらまぁ、サンディエゴのガソリンが先週より2.5%ダウンだって」
↓
「じゃあ今週中にガソリンを入れておこう」
という判断につながります。
つまり、そういうリアルなテキストから情報を得て、生活や社会のことを知るスキルを身につけるのがリーディングであり、将来的に読むであろう(または影響を受けるであろう)リアルな文献に触れる。
子供達はアメリカの学校でそういう国語教育を受けていて、分析力や判断力を身につけるのです。
レベル別 “How”
では、そんなリアルなテキスト(情報媒体)を、どうやって教えているのか?
やはり子供の国語力というのは、同じ学年であれ、かなりの差があります。
特に EL Students と呼ばれる、英語を家庭言語としない子供がクラスの10%(カリフォルニアでは20%超)を占めるアメリカの教室では、やはり「全員が同じ文章を読む」というのはかなり非現実的です。
そんなわけで、国語のクラスでは画一的な教科書の代わりに、子供のレベルにあった本を使います。
リーディングレベルは、Lexile(レキサイル)と呼ばれる指標やA-Z scale などが一般的で、このリンク先には、年齢を目安にした表があります。
特に小学校では1クラスにいる子供達の国語力に大きな幅があるため、このような手段が取られます。
授業のうち、半分はレベル別の読み物での課題、半分はクラス全体で進める授業、というのが典型的なスタイルのようです。
また、学校には “Reading Specialist” というタイトルを持つスタッフがいて、リーディングでヘルプが必要な子につきっきりになったり、小さいグループをpull-out したり、先生達と課題を考えたりします。この人たちの仕事は、リーディング専門なのです。
それくらいアメリカという国では「リーディング」というものにウェイトが置かれていて、個人のリーディングレベルに差はあれど、毎年、子供一人ひとりがレベルアップすることが目標とされています。
つまり、周りと比べてどうかという相対的な比較ではなく、去年の我が子に比べて、今年はどうなったかな?という絶対的な比較力が、親にとって必要になるわけです。
例えば、上のリンクでリーディングレベルを調べた場合も、「うちの子、8歳だけどまだレベルGだわ!」とパニックになるより、「去年はFだったから、今年はレベルアップしてるわね」という見方にシフトしましょう。
今年、5年生を終えて小学校を卒業した息子。
3年生の時に始まった州の学力テストでは、リーディングがレベル2で学年レベルに到達していませんでした。「うーん、どうしようかな?」と先生に相談し、息子が興味を持ちそうな本を探し、また熱心に読書し始めた結果、
4年生→レベル3(学年レベル相当)
5年生→レベル4(学年レベル超え)
という成長が起こりました。
彼がクラス内でどの位置にいるか、ということは私には全く興味がなく(笑)、彼自身が2年間読書を頑張り続け、その結果がきちんと表れたということにものすごく納得しているわけです。
そんなわけで、日本のような教科書がないアメリカの国語の授業ですが、それはテキスト(情報媒体)の捉え方が日本社会とアメリカ社会で異なるからであり、将来的にリアルな情報に対応するための教育が、小学校から始まっているということです。
どうでしょうか。
その他の国語に関する記事はこちらで読めます。
次回はもうちょっと具体的に、家庭でのサポートについて書いてみたいと思います。
うちの子も、この9月からやっとキンダーに通い始めたので、国語の授業の内容はとても気になります。これからも楽しいブログ、参考にさせて下さい!
いろいろ参考になります!
ありがとうございます😊
英語を勉強している滋賀県に住んでいる社会人です。アメリカで小学生が読むような教材があれば、ちょうど勉強に良いな。と思って検索したら、記事に出会いました。教科書がないというのは、とってもびっくりです。リーディングの概念が日本と全く違っていて、まさに「読み解く力」→「読解力」の教育なんですね。日本人が最も弱まっているところだと、強く痛感しました。
僕はNFLの記事や、番組が英語のままスラスラと理解できるようになりたいと思って勉強しています。なかなかですが、100のうち10くらいは歩めたかなと思います。これからも勉強がんばります。
Kazuma Itoさん、こんにちは!
コメントいただきありがとうございます。
そうですね、淡々と単語数を増やすだけ、文法を覚えるだけというよりも、興味のある分野の記事を読めるようになりたいとか、映画を字幕なしで観られるようになりたい!という方が、リアルな英語だし、モチベーションも上がるかと思います。
読むということは、そこから情報を得る上でのあくまで道具なので、読むことでどんな知識や情報を得られるか、というところにたどりつきたいですよね。
頑張ってください。
応援しています。