生徒との日々 (2) At-Risk Students

こんにちは、Erinaです。

 

今日は、私の生徒たちのことを、個別ではなく全般的な視点で書いてみたいと思います。

 

前回の記事でも書いたように、私の受け持ちの生徒たちはいわゆる「複雑な事情」がある子供たち。

 

英語で “At-Risk Students” と呼ばれる彼らは、家庭の事情や健康状況などから、進級や卒業が危ぶまれる「リスク」を持った子です。

 

 

ジェニー(仮名)16歳は、数学はまぁまぁできる方で計算も速い。

だけどここ数年は出席日数が足りなかったそうで、そのせいで数学の知識も虫食いのようにところどころ抜けている。

家庭の事情を聞いてみると、お母さんが逮捕されることがあるそうで(理由は不明)、そのたびに長女の彼女が弟妹の世話をすることになるとのこと。

 

ある日、終業直前に飛び込んできた彼女は、4歳の弟を連れてきていて、その日は彼の幼稚園が閉まるのでこの時間まで来られず、弟も連れてくるしかなかった。

彼女は家でやった課題の質問をし、新しい課題を受け取り、弟と一緒にバスを乗り継いで帰って行きました。

 

 

タラ14歳とジョナ16歳は兄妹。(両方とも仮名)

彼らはここ1〜2年のうちに立て続けに両親を病気で亡くし、今はおばあちゃんと一緒に暮らしています。

ジョナはコンピューターサイエンスに興味があるそうで、数学もかなり強い。10年生ですが一学年上の数学をやっています。

タラの数学はかなり学年よりも下で、ここ数年はまともに学校に通っていなかったことがわかります。

 

おばあちゃんとのミーティングを繰り返し、毎日、学校に来ることの重要さを子供たち(特にタラ)に伝えるも、精神的なサポートが全く足りていない状態でした。人の死を経験した時に行われるグリーフカウンセリングなども受けておらず、両親の死は彼らにとってトラウマ以外の何者でもない状態。

私も数学教師としてどこまでプッシュして良いかわからず、本当に手探りで前進している毎日です。

 

他にも、新学期早々に全校を巻き込んだギャング同士の喧嘩の当事者がいたり、わずか一ヶ月で逮捕された子がいたり、ドラッグディーリングをして警察沙汰になった子がいたり、一年前の私には想像もできなかった子供たちに囲まれています。

 

 

新学年が始まって、全校を巻き込んだ喧嘩は、当事者(というか原因)になったのは一人の女子生徒。彼女は全くそんな意図をしていなかったものの、彼女の彼氏(うちの生徒ではない)が他の男子に喧嘩を売られたと思って揉め事がスタートしました。

 

その原因となった女子生徒が私の受け持ちになった時、うちの旦那が私にこう聞きました。

 

旦那:「ユーは(今の環境が)怖い?」

 

私:「別に怖くはないよ。」

 

旦那の口からこの質問が出てきた時に気づかされたけれど、不思議なことに、怖いと思ったことはないのです。

うちの旦那もダウンタウンのコミカレで働いて数十年。様々なトラブルに巻き込まれたり、目撃したり、聞いたり、それでも様々な事情を抱える生徒たちを支えてきました。

 

私も、これまで学校での銃乱射や暴力のニュースを聞くたびに、「学校は怖い」と思ったこともあったけれど、今、自分の生徒たちを目の前にすると、驚くことにそんな感情は全くなく、逆に気づかされたことがありました。

 

それは、子供たちは「環境の産物である」ということ。

 

子供たち自身が、闇や、病や、貧困なのではなく、彼らのいる環境が、闇であり、病であり、貧困であるのだと。

彼らの教育が At-Risk になってしまうのは、やはり大人の事情や都合であり、子供たちはその産物であるのです。

 

 

じゃあそこで、私がやるべきことは何か。

 

“Consistency”

 

「一貫性」です。

 

つまり、「ノー」と言ったら最後まで「ノー」を貫き通すこと。

「これをやります」と言ったら、やりとげるまでやめないこと。

Aちゃんに「イエス」と言ったら、他の子供たちにも「イエス」を貫くこと。

 

そういう「ブレないもの」を求めて、彼らは学校にやってきます。

なぜなら、彼らの人生には、「一貫性」とか「安定」というものが極端に少ない。

毎日が吊り橋のようにグラグラした生活を送る子にとって、動かない揺らがない地面を歩くことは安全と安心を約束してくれる。

 

だから、そういう教師でいてほしい、とボスに言われたのが数ヶ月前のことでした。

 

 

“Consistency” や “Be consistent.” というのは、子育てをし始めてからよく耳にする言葉で、ちょっと前にも旦那とこんな会話をしたばかりでした。

 

私:「子育てする上で、これって一番大事だなと思うのは、”consistency” だと思うんだけど、どう思う?」

 

旦那:「うん、そうだね。100%同意するよ。」

 

 

私自身の子育てにおいて最重要だったものは、経済力でも学力でも家事力でもなく、「親が一貫していること」でした。「これが大事ですよ!」とは誰も教えてくれなかったし、子供たちが10歳と11歳になった今、気づいたことでした。

 

そしてこの “Consistency” が、このような生徒たちが必要としているものであり、私自身の子育ての経験が生かされるところなのだなと実感しています。

 

この生徒たちと働き始めて、学年の半分が過ぎました。

 

私のほうが、数学だけでなく、人間や社会のことを教わり続け、教員一年目とは思えないような濃い経験をさせてもらっている日々です。

 

 

 

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