アメリカの国語、日本の国語 (3)

こんにちは、Erinaです。

 

日米の国語教育の違いについて書いています。

これまでの記事はこちらでどうぞ。

 

前回の記事で、日米の6年生の国語の問題を比べてみましたが、今回は、そのような違いに対応するために、具体的に、子供にどんなことをやらせたら良いのかを紹介してみたいと思います。

 

これは、私がうちの子供達(1年生と3年生)の宿題の一環としてやり始めたものですが、日米の国語教育の違いの根底にある Critical Thinking を育てるのにとても有効です。

また、学年に関わらず、アメリカで国語が苦手という子、または英語のテスト (TOEFL, SAT/ACTなど)のスコアアップを目指している子にもこの方法を薦めています。大人でも、読解力と表現力をアップさせるのに有効かと思いますので、ぜひ試してみてください。

 

まず、用意するものは、紙と鉛筆。それと、たった今、本を読んだばかりの子供

 

そう、これはアメリカの学校でポピュラーな宿題である、「1日20分の読書」の一環です。(この宿題についてはこの記事で)

 

 

みなさん、子供が「20分読書したよ〜」と言って、信じますか?

 

私は信じません。笑

 

というか、「20分の間、本を読んだ」と「20分の間、本を開いていた」とでは全く異なるということを私は知っているので、「開いていた」だけではなく、文章を「読んだ」という証明をしてもらうために、このトレーニングを発明(?)しました。

 

そもそも、うちの子達は、アフタースクールプログラムに通っています。そこで宿題の時間があるそうで、20分の読書もそこでやってくるそうです。しかし、親の目には見えないので、何をどう読んでいるのかわからない。

私は、読書は子供が読みたいものを読みたいだけ読むことを勧めていますが、それでも、中身のない読書ほど意味のないものはないし、親が気づいた時に手遅れ・・・という事態を防ぐために、やはり親の私が何かしら監視しなければ、と思ったのです。

 

で、20分の読書をした後にこういうものをやってもらうことにしました。

名付けて、ブックサマリーワークシート。

 

 

 

チラシの裏でもノートでも何でも良いのですが、一枚の紙に、上から、

 

Who:

Where:

When:

 

と書き、その下に3つの箱を書きます。

箱にはそれぞれ上から、

 

First (1st)

Second (2nd)

Last

 

と書きます。

 

何をするかというと、子供が、自分がたった今読んだ本の内容をこれに書き込むのです。

 

しかし条件が一つだけあります。

 

First

Second

Last

 

それぞれの箱には、「一文」ずつしか書いてはいけません。

つまり、

 

First/Second/Last

 

の3ステップを、3文でまとめなければならないのです。

 

この3文でまとめるというのはこの記事でも書きましたが、やはり、だだーっと書いてある情報を読み取って、自分の言葉でまとめる、というのは、アメリカの国語では絶対に不可欠なスキルなのです。

 

今回は、子供向けなので、取り掛かりやすいように、状況を表現する部分を「Who/Where/When」として追加しました。まぁ、これらの情報も読み取れなければなりません。

 

 

ではでは実際に、うちの子供達のワークシートを見ながら、「良いブックサマリー」と「そうでもないブックサマリー」の例を読み比べてみましょう。

 

これは、うちの1年生の娘(7歳)のサマリーです。手書きが読みにくいので下で解説します。

 

 

 

本は、”Stick Dog”シリーズだそうで、まぁなんだかわかりませんが、漫画っぽくイラストも多くあり、面白い系フィクションだそうです。対象年齢としてはちょっと上のような気がしますが、長男が読み始めて、彼女も読み始めたようです。

当たり前ですが、私はこの本を読んでいませんから、中身はさっぱりわかりません。なので、彼女の書いたブックサマリーだけをもとに、本にどんなことが書かれているかを理解できれば、「良いサマリー」、そうでなければ、「そうでもないサマリー」となります。

 

上の写真のサマリーは最終版なのですが、そこに行き着く前に、彼女のサマリーはこんな感じでした。

 

 

Who: Stick Dog, Karen, Poo Poo, Stripes, Mutt (登場する犬たちの名前)

Where: baseball court at park (場所は公園の野球場)

When: daytime (日中)

 

1st: Karen tried to touch her tail with her mouth.(カレンは口で自分の尻尾を触ろうとしていた→あくまで”tried”なので、できなかったとわかります)

 

2nd: All of the dogs made fun of her by saying if there was a show on touching your tail and missing, she would win.(他の犬たちは、もし「尻尾を触りたいけど触れないショー」があったら、カレンは優勝だね、と笑い者にした)

 

Last: Stick Dog asked them if they wanted to play frisbee.(スティックドッグはみんなにフリスビーをやらないかと聞いた)

 

 

 

ふむ。

まぁ20分で読んだ内容としてはまぁまぁの濃さかな。

 

だけど、私はこれを読んで、「ちょっと待って」となりました。

 

それは、2nd → Last流れが繋がっていないこと。

 

私は娘に聞きました。

 

私:「ねぇ、どうしてカレンを笑い者にしている場面から、急にフリスビーの話になるの?」

娘:「スティックドッグは、カレンが笑い者にされているのが嫌だったからだよ。」

私:「なるほど、みんながカレンを笑っているのを、止めさせるために、話を変えたのね?」

娘:「そう。」

私:「じゃあ、それを書く必要があるね。」

娘:「オーケー。」

 

で、修正したのが以下の通り。

 

 

Who: Stick Dog, Karen, Poo Poo, Stripes, Mutt (登場する犬たちの名前)

Where: baseball court at park (場所は公園の野球場)

When: daytime (日中)

 

1st: Karen tried to touch her tail with her mouth. (カレンは口で自分の尻尾を触ろうとしていた)

 

2nd: All of the dogs made fun of her by saying if there was a show on touching your tail and missing, she would win. (他の犬たちは、もし「尻尾を触りたいけど触れないショー」があったら、カレンは優勝だね、と笑い者にした)

 

Last: Stick Dog asked them if they wanted to play frisbee because he didn’t want to make fun of Karen. (スティックドッグは、カレンを笑い者にしたくなかったので、みんなにフリスビーをやらないかと聞いた)

 

 

違い、わかりますか?

because he didn’t want to make fun of Karen.“の部分が追加されたことで、2ndからLastへのトランジション(移行)がスムーズになりましたが、読んでみてどうでしょうか。

ちなみに、こういうトランジションの問題は、SAT English にむちゃくちゃ出てきます。

 

 

これまで、「本読んだの?」と聞くと、「読んだよ〜♪」(←本当かよ?)で終わっていたこの読書の宿題。

「どんなことを読んだの?」と聞くと、うちの子達は二人とも、「スティックドッグと〜、カレンと〜、誰々がいて〜、で、次にこうして〜・・・」と読んだストーリーの全てを教えてくれていました。

「いやいや、全部じゃなくて、かいつまんでポイントだけ教えて」と言っても、口頭でそれをやるのは難しかったようです。

 

そこで、このワークシートをやり始めたところ、子供達は頭の中で情報を整理しながら読書しているように見えます。

私としては、読書自体が5分だろうと30分だろうと、書かれていることを読み取って、自分の言葉でまとめられれば、目的達成だなと思っています。

 

ぜひ、お試しください。

 

次回は、えーと・・・何について書こうかな。

まぁ、何かについて書きます。

 

 

アメリカでとても重要な作文 (writing) については、こちらの記事で書いています。

 

 

 

 

“アメリカの国語、日本の国語 (3)” への3件の返信

  1. うちもやってみよう!
    ママに30分だけ時間頂戴って言って、読んでもらって10分で書き上げてもらうとか(^_^)
    上手く行ったら、共有しますね〜

  2. エイコさん、ぜひやってみてください!
    結果報告も待ってます。

    このワークシートをやってみたらわかるんですが、実のところは読書じゃなくても良いんですよね。
    ストーリー性とか話のポイントがあるものであれば、マンガだろうと、アニメだろうと、映画だろうと、何でも練習できるわけで。
    受け身にならないという姿勢が必要なだけであって、メディアは何でも良いと思います。

  3. 翻訳を手がけています。今、日本の中学の英語教科書がどんなに使い物にならないかをテーマに本を書いているのですが、どうも国語教育のねじれが英語教育にしわ寄せされているのではないかと考えるようになっています。中一の国語教科書には『竹取物語』が出てきますが、そもそも現代日本語と千年も昔の京都書きことばを子どもに同時に習わせるのは無茶ではないかと感じます。現代日本語に絞って教えるならば、あんなわけのわからない動詞活用表に頼らず、外国の日本語学習者が使っている動詞活用表がそのまま使えて英語への橋渡しがうんと滑らかに進むのに。アメリカの国語(EnglishなのかLanguage Artsなのかよくわかりませんが)では古典はどう教えられているのですか。ハイスクールではシェイクスピアを読まされるそうですけど対訳付きだとかなんとか…もし何かご存知でしたらご教示いただけないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です