大学に行って得られるもの、得られないもの

こんにちは、Erinaです。

 

この記事でも書いたように、我が家では、子供達に「大学には、行きたくなければ行かなくても良い」と言っています。

特に、うちの旦那は、親のサポートなしで自力で博士号まで取得したので、「大学に行きたければ、自分でなんとかしろ」というのがポリシーです。

 

こう書くと、年上の子供を持つ親たちに、”Yeah, right.”「はいはい、そうね。」(でもその時になったら気持ちが変わるわよ・・・という気持ちを含む)と言われるのですが、きっと変わらないと思えるのは、私たち夫婦が、「大学で得られるものと得られないもの」を知っているからだと思います。

 

高校卒業と同時に、大学進学を選ぶ学生がマジョリティの日本。

アメリカでは、大学進学を「数ある中の一つの選択肢」と捉える学生も多く、また、この記事でも書いたように、移民や難民の家族にとって大学進学というのはとても高いハードルでもあります。

つまり、「みんなが行くから、やりたいことはわからないけど、自分もとりあえず大学に行こう」という気持ちで大学進学の準備をする学生は、日本に比べて断然少ないのです。

 

「大学」というのは、人生における「通過点」でしかありません。

 

その後に待ち受ける就職、それも学生でいられる時間よりずっと長い時間を過ごす社会人生活を見越さないと、大学で得られるものと得られないものに気づかず、あっという間に4年間が過ぎてしまいます。

 

では、私が考える、「大学で得られるもの」は何でしょうか?

 

それは、「大学新卒者として就職できる権利」。

まぁ色々な職種があるけれど、特に研究系の職種なんかは、学士号では即戦力にはならないでしょう。私が数学専攻で卒業した時、「数学という学問はあまりに広大で、たかだか4年勉強したくらいでは、自分はまだ何もわかってないということがわかった」と思いました。(もちろん、数学を専攻しなければ、それすらも気づかなかったわけです。)

しかし、企業が欲しがっている、「大学新卒者」という枠に入ることができます。つまり、「大卒者として就職する権利」を与えられたのです。

よく、「大学の勉強なんて、社会でなんの役にも立たない」という声を聞くけれど(私はこれに反対なのだけど)、そういう意見がありながらも大学進学が就職に必要だと感じるというのは、そういう「権利」につながるから。

 

ただ、ここで私が書いておきたいのは、この先の数十年で、「就職」という社会体系はものすごく形を変えるはずです。これだけインターネット社会になり、「働く」という言葉の定義が変わってきたのは事実であり、特に若い世代はもっとフレキシブルな生き方を望むでしょう。

つまり、「大きな会社に入って、与えられた仕事をして、給料をもらって、それを平日ずっと繰り返す」ということが当たり前じゃなくなってくる。うちの子供達の世代が就職する頃(2030年頃?)には、今日現在では存在しない仕事がマジョリティになるだろう、という予測もあります。

 

加えて、面白い記事を知人が紹介していたので、ここでもシェアします。

 

This chart spells out in black and white just how many jobs will be lost to robots

 

グラフは、この先10〜20年のうちに、ロボットまたは AI (Artificial Intelligence つまり人工知能)によって奪われる仕事を示しています。

左側に様々な職業名が連なっていて、それぞれ、黒い部分は20年以内にロボットができるようになる割合、白は人間がまだ必要であろう割合を示しています。

 

たとえば一番上を見てみましょう。

職種は、”Retail Salesperson” ですから、店舗での販売員ですね。

現在は4Mを超えていますから、だいたい450万人くらいがこの仕事に就いているわけです。

しかし、白い部分は0.4Mくらいまでになりました。つまり、ロボットが導入された結果、40万人くらいの販売員でことは済んでしまうわけです。

450万人 ー 40万人 = 410万人

ですが、この410万人はロボットに仕事を奪われる、ということです。

 

このチャートを見ると、「ヤバい職業」と「安全そうな職業」ってわかりますよね。職業の絶対数(グラフの横の長さ)ではなく、一本のグラフの中で黒の割合が大きければ大きいほど、将来的に仕事がなくなる可能性があるわけです。

私もこれまで、データ分析と銀行という場所で仕事をしてきたわけですが、もし自分の子供が「この職業に就きたい」と言ったら、「その仕事は将来的になくなるから、絶対にやめておけ」と言うであろう職種がいくつかあって、このグラフとかなり一致しています。(実際は就きたがらないだろうけど。笑)

どれも今日の時点では「高給取り」と考えられている仕事です。

 

つまり、こうやって考えると、今日現在の時点である仕事や、「就職」という風習は、10〜20年もすれば、危うくなる可能性があるということ。

だから、これまでの「有名大学に入って、大企業に就職すれば安泰」という価値観は捨てるべきだ、と特に若い世代に言いたいのです。いや、案外、彼らは私たち以上に実感してるかもしれません。

 

 

だからこそ、「大学で得られないもの」という考え方が必要になってきます。

 

じゃあ、私が考える、「大学に行っても得られないもの」って何でしょうか?

 

それは、「仕事で満たされる力」です。

 

誰しも、「好きな仕事をしたい」と思うでしょう。

 

(自主的だろうと、受身だろうと)大学に行って、興味のある勉強をして、希望の就職先に就職が決まれば、「きっと自分は幸せになれるだろう」と思ってしまう。

 

だけど、現実ってそうじゃないですよね。

希望の仕事に就いたとしても、好きなことをできるのって、仕事をしている時間全体の何割かです。半分もあればラッキーなくらい。好きなことを仕事にしている人を見て、「羨ましい」と思ったとしても、そうじゃないことをやってる時間が、実はもっともっとあるんです。外からは見えてないだけ。

 

だから、そこでつまずいてしまったら、「やりたい仕事はもっと他にある」とか、「この仕事じゃ自分は幸せになれない」と思い続けては転職し、結局その繰り返しで終わってしまう。

つまり、どこまで ambition(上を見ること)を持ってハングリーでいるか、どこからは「よし、自分はここで踏ん張るぞ」と思うべきか、という判断力。これは、大学に行っても得られないものです。

 

仕事を選り好みする人にありがちなのが、「きっと、ベター(今より良いもの)があるはず」という気持ちを止められない。

私もこれまでに転職を経験し、今は大きなキャリアチェンジの真っ最中ですが、ぶっちゃけて言うと、「どこにでも、自分のやるべきことはある」し、「どの職場で働いても、満たされることは可能」ということ。

それに気づくかどうか、「自分のやるべきこと」を見つけられるかどうかは、まさに自分次第であり、確かにそれは大学で教わったことの中には入ってなかったなぁ、と社会人になってから気づきました。

 

だから、結論は、

 

大学に行くことで、大卒者としての就職権利は得られるけど、その仕事に就いて幸せになれるかどうかは、「進学」という経験は保証してくれない

 

ということです。

 

特に、先述したように、「会社に就職」という社会体系が変わってきた現代、会社に守ってもらうという姿勢では生き残れなくなるはずです。

フリーランス人口はますます増え、Entrepreneur(アントレプレナー)と呼ばれる起業家たちが、これまでになかった新しいマーケットを作り、そのシェアを占めていきます。UberやLyftなんかが良い例ですね。

だから、そうやって「個人」で勝負できる人材になる必要がある。

 

しばらく前、このブログに、ある日本人学生からの問い合わせがありました。彼はあるウェブサイトのプラットフォームを作っているそうで、相談に乗ることにしました。

当時、大学2年生だった彼は、卒業までにこのプラットフォームを軌道に乗せることを目標としており、次の年から始まる就職活動は、「保険としてやる」と断言しました。

 

良いね、そういう姿勢。

 

と思いました。

 

大学を卒業したら、誰も「こっちに進めば良いよ」と教えてくれません。だから、卒業する前から、自分で進む練習が必要なんです。

そんなわけで、うちの子供達には、大卒枠で就職する権利よりも、「自力で、社会の中で満たされる力」を身につけてほしい。学校じゃないところで身につけられるのなら、そっちに進みなさい、と思っているのです。

 

だから、好きなこと、どんどんやろう。

 

Life is too short to wait.

 

 

 

 

 

“大学に行って得られるもの、得られないもの” への4件の返信

  1. 大好きなトピックです!アメリカも、文系(ビジネス以外の)は大学出ても新卒だからって雇ってもらえる可能性はそれほど無いですよね〜。大学出ても、即戦力にならない感じだったら就職ほんと難しい。逆に日本に比べて、既卒者でも就職しやすいという利点もありますね。(ちゃんと経験や資格があれば)
    うちは子どもたちにはただ大学出るだけじゃなくて、ちゃんと就職につながる専攻を選びなさいよって言ってます。私自信がそれで苦労しましたから。。

  2. 初めまして。アメリカで10倍うまく立ち回る方法からErinaさんのファンでした。今年の五月にアメリカの州立大学(恐らく、同じ州立大学。。。)の院を卒業しました。昨日、就職した会社の弁護士の方から私のH1Bが承認されたと連絡が来て、十月からアメリカで社会人として働く事となります。ここまで長かった。。。

    今回の記事、とても興味深く読ませてもらいました。何故かというと、実は私の就職先は会計事務所だからです。。。リンク先のグラフでは職が将来ほぼなくなるという(苦笑)
    ただ、実は会計学界ではこの記事に書かれているようなテクノロジーの発達が待ち望まれている状態です。何故かというと、現在、Auditをする場合(私はAuditorとして働く事になります)、クライアントから渡されるデータの量が莫大な為に、データの中からサンプルを取ってInvestigateしている状態だからです。なので、取り出したサンプルの中に不正をした事実に繋がるデータが入っていない限り、Fraudなどは見つけるのはほぼ無理。。という実情なのです。テクノロジーの発達により全てのデータに目を通すことが可能になり、不正を見逃すことがなくなると言われています。
    その為、今後、Auditorなどの職は会計だけの知識では無く、データ分析も出来るようにならなければいけないと言われています。Accountingの学生は現在、授業にData Analysisのクラスを取るようになっています。私は会計学が好きでデータのクラスは嫌々取っていたんですが(笑)、この記事を見てデータ分析のバックグラウンドの重要性が分かったような気がします。
    最後に、、、個人的に、テクノロジーの発達によりなくなる仕事もあるでしょうが、生み出される仕事の方が多いと私は思っています。なので、Erinaさんがおっしゃるように「これをしておいたら取り合えず大丈夫」とかで行動するのではなく、何でも挑戦して、何かダメであったら次にどうつなげるかというのが、これからの時代とても大事だなあと感じています。日本は個人ではなくて周りがどうするか決めてくれる(決めてしまう)力が強い国で、アメリカに来て私はかなーり苦労しました(苦笑)

    長々と書いてしまいました。。。これからもErinaさんの記事を楽しみにしてます!

  3. りょうこさん、こんにちは!
    りょうこさんも、こういう記事書いてましたよね。
    メジャーは選んだほうが良い、っていう。
    本当、アメリカではメジャーが就職に直結しますよね。だからアメリカでは、大学の「その後」のことを選んで大学に入る子が多いのかな。
    私も今回の教員免許プログラムで、「学校はやりたいこと(教員)をやるための手段」と思うようになりました。だから、ASAPで終わらせたい!

  4. Yoshikoさん、こんにちは!
    ご卒業、そしてビザ取得、おめでとうございます!このトランプ政権でH1Bゲットとは素晴らしい。

    実は、この手の「危ない仕事」という言葉を聞いて、私が一番最初に思い浮かべるのはやはり会計士・・・。とは言っても、私が思う、「危ないな」というのは、CPAというタイトルにふんぞり返って、古いままの会計システムをず〜っとやっていれば良いや・・・というタイプの会計士。わかりますよね、たぶん。笑
    でもそうではなく、若い会計士は、新しい視点で会計システムをこれから見ていくだろうし、それこそデータという視点も入ってくるし、もっと別の職業になりそうですよね。
    私が銀行で働いていた時、”Financial Analyst”というポジション名をよく使っていましたけど、このポジション名ってすごく広義なんです。だから、これからの会計士は、”Accounting Analyst”みたいになるのかも。

    Auditorも来てましたね〜。笑
    私は不動産でしたが、すべてのローンファイルを見るわけではなかったので、やはりすごくtime-consumingな仕事だなぁと思ってました。
    人間の目が必要なところと、やはりデータ分析で済んでしまうところと、大事なのはバランス具合かな、と思います。だから人間はゼロにはならないと思いますけどね。
    どんな分野でも、やはり膨大なデータと照らし合わせて判断・・・という職種は、これからAIにどんどん仕事を奪われるでしょうね。データ、面白いですよ。

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