アメリカの算数・数学は簡単か?

こんにちは、Erinaです。

 

嬉しいことに、このブログには、アメリカの数学を検索してやってくる読者が多いようなので、今日はちょっとこんなことを書いてみたいと思います。

 

日本からやってくる中学〜高校くらいの子供が、アメリカの学校(いわゆる現地校)に通うようになると、ほとんど必ずと言って良いほど、ある経験をします。

 

それは、「数学の授業が簡単すぎる」ということです。

 

親が、授業で配られたプリントや宿題を見てみると、「こんなの日本で2年くらい前にやったわ!」ということも多く、「なんで今さら、こんなことやらされるのかわからない」という不満を聞くことがものすごく多いです。

特に、渡米してすぐの頃はその傾向が強く、その上、2〜3年で帰国してしまう場合、「アメリカの数学は簡単すぎてつまらない」という印象を持って、帰国するというケースも。

 

 

今日は、どうしてこういうことが起こってしまうのか、そして、家族として、学生として、どんなことができるのか、書いてみたいと思います。

 

 

まず、この問題は、日本人に限ったことではなく、世界各国からやってくる外国人学生、つまりEL Student(の言葉の説明についてはこの記事で)に頻繁に起こる問題です。

 

なぜかというと、渡米してすぐの頃(特に1年目)は、入学時のアセスメントテストなどで、個人の英語力をチェックされます。

それによって、その子の「語学力」をレベル分けされるのですが、この時、英語以外の科目(数学・理科・社会など)も同時にレベル分けされ、「外国人向け数学」「外国人向け理科」「外国人向け社会」というクラスに入れられるわけです。英語だと、”Math ELD”, “Science ELD”, “Social Studies ELD” なんて区別されたりします。

学校内のEL Studentの数にもよりますが、外国人生徒が多い場合、ネイティブ学生や英語力の高い外国人学生のためのクラスとは別にクラスが編成され、そこに登録されます。クラスに登録されることを、英語では “enrolled” と言いますね。

 

これらのクラスは、科目にもよりますが、対象となる生徒が外国人であることを考慮されています。

たとえば、中学社会ならアメリカ史の部分でサンクスギビングのことを紹介してみたり、理科や数学ならボキャブラリー強化をしてみたりと、アメリカで生まれ育った子たちがもっと前に学んだことを、短期間でキャッチアップできるようなカリキュラムになっているわけです。

これはやはり、現在の全米の公立学校における生徒のほぼ半分が、英語を母語としない、という現実に原因があります。つまり、これだけ多くの非英語ネイティブの子供達が、アメリカの学校で勉強していることを考えると、このようなクラスが用意されていることは納得できるし、フレキシブルな教育を受けさせようという努力の成果なわけです。

 

 

しかし数学の場合、他教科に比べて言語(つまり英語)に頼る部分はそれほど多くなく、単純に計算だけなら、外国人扱いされることは必要ない場面も多い。ただやはり、文章問題や証明、問題の指示などを理解するという意味で、外国人生徒対象の数学クラスに登録されることが多いようです。

このような外国人生徒対象の数学クラスは、数学的なレベルも落とされ、結果として、「簡単すぎる」という印象を持ってしまいます。特に、中国、韓国、日本のような国からの学生は、計算力があるので、中学くらいまでの数学は簡単と感じるでしょう。

 

私は、アジア諸国からの生徒たちや、現地校の数学のクラスを見ていて感じることは、「生徒一人一人を適切なクラスに入れることはとても難しい」ということ。

確かに、生徒たちの「簡単すぎてつまらない」という気持ちもわかるけれど、じゃあクラス内容を100%理解できるか?と言われたら、やはり英語力が壁になってしまうことは多々あるわけです。

先日、数学教授法のクラスで、この問題を取り上げてみたところ、「(足りないのは)英語力か、それとも数学力か」(Is it something to do with English? or with math?) を判断することはとても難しい、という結論に至りました。これはやはり白黒つけられる部分ではないようで、先生たちもケースバイケースで対応するしかない。

 

私自身、日本で数IIICまでやって高校を卒業し(赤点ばかりだったけど)、アメリカに来て微積分を一からやりなさい、と言われて、「えー、もう知ってるのにー」と思いましたが、やはり英語でやり直したことは、とても良い経験になったと思います。

 

それは単純な微分の計算(f’を見つける)ということだけでなく、「微分とはどういうことか」と英語で説明できるようになったし、定義や理論、証明も英語で理解できるようになったからです。

つまり、数学 “Mathematics” という学問を見据えた時、計算の向こう側にあるもの(思考力、論理力、表現力)をきちんと身につけるという意味で、スキップしてはいけない段階だったのです。

 

そして、私にとってボーナスだったのは、「微分」というすでに知っているコンセプトを英語で再び勉強することで、英語力がついた、ということ。

 

たとえば、数学の証明や教科書を読むことで、

 

If, then.

Thus,

Since,

Hence,

Let x be …..

Suppose …..

Define ….

 

のような基本的な英文法が身につくわけです。

 

私は、自分一人で英語で書かれた数学の教科書を読んで、コンセプトを理解できた時、それは頭の中で日本語に翻訳されることはなく、英語で理解できるようになっていました。

つまり、英語と数学が、頭の中でお互いに協力し合い、どちらがどちらというのではなく、相乗効果で吸収されていたわけで、それが起こったのは、英語で数学を勉強した最初の年でした。

 

だから、確かに数学的なレベルで言えば、「一歩下がる」になったけれど、英語力という意味では、「地ならし」とか「グラウンド整備」みたいなもので、あの時間は必要だったな、と思っています。

 

 

それを踏まえて、「じゃあ、簡単すぎてつまらない数学の授業、どうしたら良いの?」という質問への答えは。

 

「絶対に毎回100点取ろう」

 

です。

100点満点中、120点取れるくらい勉強しよう、ということ。

 

そのためには、「まぁこの計算は知ってるし。」ではすまないかもしれない。なぜなら、問題が読めなかったり、英語が理解できないということも、私たちみたいな外国人生徒なら、テスト中には起こりうる。(私の経験はこの記事で)

だけど、みんなと一緒で、そこで辞書を引いたり、周りに助けてもらうわけにはいかないかもしれない。

「わからないところ」が、数学に関係しているか、英語力に関係しているか、に関わらず、目の前の問題を解いて、正解を導くこと、それが本当の意味で「数学で100点を取る」ということだから。

 

 

私も何人か見てきたけれど、強く伸びる子供というのは、置かれた環境に関わらず、自分の色を出せる子。

ぬるま湯に入れられたから、自分も温度が下がるのではなく、自分の熱量を決して失わない子。

 

アメリカでは、日本のような「これをやれば100点を取れる」という明確な枠組みにとらわれず、個人のやる気や好奇心が試されます。

「先生に言われてなくても、自分にとって必要だからやる」という子は教室に一人はいて、先生がわざわざ教室で「これが宿題だよ」なんて言わなくても、どんどんどんどん先に進んでいく。しかも周りにアピールしないので、言われたことしかやらない99%の子供たちは、こういう子の存在を知らないのです。

 

こういう子を見ると、親として、教師として、大人として、頭が下がりますね。なんてストイックなんだ!と驚きます。

 

そしてこういうストイックさこそが、次の学年で、ネイティブの学生や英語力の高い学生たちと肩を並べて数学を勉強する機会につながる。そこでは誰も自分を外国人扱いしてくれず、アメリカ人ですらヒーヒー言うようなレベルで数学を勉強できるわけです。

 

It’s all up to you.

(すべては自分次第)

 

 

 

 

 

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