アメリカの道徳授業: Say Something Week

こんにちは、Erinaです。

 

アメリカの道徳の授業ってどんな感じで行われているのでしょうか?

この記事では小学生の道徳観について書いてみましたが、今回は、私の実習先の高校で行われた、とあるイベントについて書いてみたいと思います。

 

アメリカでは、小学校から高校まで、「○○ウィーク(○○週間)」と名付けられ、一週間を通してその物事について全校的に学ぼう!というカリキュラムが組まれています。

 

小学校なら、薬物乱用について

中学校なら、自殺認知について

高校なら、精神病認知について

(大学でも、性犯罪についてなどあります)

 

など、「道徳」の言葉では一括りにできないものを、あらゆる科目を通して学びましょうというカリキュラム内容です。この記事でも書いたような、”Project-base” に似ているかもしれません。

 

そんな環境で、先日、実習先の高校では、”Say Something Week” と名付けられた一週間が行われました。

 

“Say Something” という団体は、あのサンディ・フック小学校で起こった銃乱射事件(キンダーと1年生の子供達20名と先生6名が犠牲になった)の遺族や関係者たちによって創設された団体で、全米の学校の安全を保つための啓蒙運動を行っています。

 

 

 

Say Something アプリも作られ(無料ダウンロードあり)、これを通して、キャンパス内外での不審な動きなどを報告できるシステムが作られました。

 

今回のこの “Say Something Week” では、担当の先生たちとボランティアの生徒たち約50名が主導になり、以下のようなイベントを組み込みました。

 

月曜日:担当の先生と生徒たちが校内放送に出演し、説明。全生徒にリストバンドが配布される。

火曜日:スピリットウェアの日(みんなで同じテーマの服装をする。この日はスーパーヒーロー)

水曜日:ランチタイムに講堂でアクティビティやゲーム(自由参加)

木曜日:オンラインアセンブリー(オンラインで全校集会):Say Something が作ったオンライントレーニングを受ける

金曜日:またスピリットウェアの日(テーマカラーの緑色を着る)

 

などなど、校内で様々な形で活動をすることで、生徒たちに当事者意識を備えさせるわけです。

この他にも、この一週間を通して、ボランティア生徒たちが作ったポスターが校内中に張り出されたり、階段の手すりなどには今回のテーマカラーの緑色のリボンがグルグル巻きにされていたりと、学校全体で盛り上げよう!勉強しよう!という精神(スピリット)が伝わってきます。金曜日は、みんな緑色のTシャツに、緑色のリストバンド、フェイスペインティングなどをして現れて、かなり盛り上がっていました。

 

(期間中、教室に貼られていたポスター)

 

 

 

では、生徒たちはこのイベントを通して何を学ぶのか?

 

アメリカで話題になっている銃乱射事件ですが、これはやはり、「精神病」と密接なつながりがあります。

これまでの銃乱射事件を分析してみると、事件を引き起こした人物というのは、やはり何かしらの精神疾患があり、自暴自棄になっていて、他人を巻き込んで自分たちも死のうと考えている状態にあったそうです。

そういう状態の人間の手元に銃などの武器がある場合、火と油のような危険な組み合わせになってしまい、結果として悲惨な事件が起こってきました。

 

もちろん銃規制という手段もあるのですが(これも書きたいことはごまんとあるけど)、今回は別のアプローチ(精神疾患側)で取り組もう、というのがこの団体による活動。

 

そもそも、このような精神疾患+暴力というものが存在している場合、何かしらの「サイン」があることがほとんどで、特に最近ではそのサインはSNS上に現れるということ。

これまでの銃乱射事件を引き起こした若者たち全員が

 

「死にたい」

「みんな殺してやる」

「銃を手にいれた」

「明日、学校を襲う」

 

など、あからさまなメッセージをどこかしら (Facebook, twitter, instagram等)で送っていたそうです。しかし、それを真剣に受け止めなかったり、見落とされたりして、結果として事件が引き起こされる・・・。

(よく日本のテレビで、「あの子は挨拶もする良い子だったのにね〜」みたいなこと言ってますが、嘘です。予兆はあります。表面しか見えてないだけ)

 

そういう繰り返しを防ぐために、Say Something アプリは作られました。

 

このアプリは無料でダウンロードでき、まずは自分の学校名を登録します。

学生たちは、SNS上や、キャンパス内外で、そのような不審な動き、ちょっと不安になる言動などを見かけたら、このアプリで匿名で報告できます。

 

報告内容は、学校のアドミン(校長・教頭・セキュリティ・担当の先生・警察)にリアルタイムに送られ、その場でアドレスされます。

たとえば、「○○ちゃんが死にたいと連続ツイートしてます」だとか、「10年生の○○くんが、銃を持っていて見せてくれました」なんていう報告がすぐに入るわけです。

 

どうしてこのようなツールが必要になったかというと、やはりインターネットやスマホが普及したおかげで、生徒間のやりとりの90%がオンライン上で行われるようになったから。

つまり、大人の目の届かないところで、子供達の心や体の動きはものすごくダイナミックに起こっていて、子供同士でしかその変化に気づけなくなったからです。

これまでスマホがなかった頃は、「今日、○○があってさ〜」なんていう子供同士のやりとりを、先生や親がなんとなく耳にすることができました。しかし、そのやりとりが全て携帯で行なわれている現在、大人は気づくべきサインに気づくことができないのです。

 

そんなわけで、この一週間の締めくくりは、「どんなメッセージを報告するべきか」というケーススタディをするためのオンライントレーニング。全校集会の代わりに、一時間を使って、子供達は一人一台のクロムブックでトレーニングを受けます。

 

内容は、「友達のAくんが、フットボールの練習帰りに『もう何もかもが嫌だ』とあなただけにつぶやきました。どうするべきですか?」みたいな質問で、選択肢がいくつかあります。

かなりきちんと読んで聞いて、考えなければならない内容で、子供達は真剣に取り組んでいました。

 

もちろんこれがどれくらいの功を奏すかは未知数だけれど、やらないよりはずっと良いし、大人の立場からしてみると、やるべき道徳教育だと思うわけです。

これは自分たちを守るだけでなく、対象となる友達も守ろう、というポリシーから始まっていて、送られてくるメッセージを真剣に受け止める、精神疾患を無視しない、という認知も含まれているわけです。

 

このトレーニングの後、うちのクラスの生徒たちに感想を聞いてみると、かなり素直に「勉強になった」とか、「やっぱり友達は大事」という意見が多く、「他人事じゃないから」とアプリもダウンロードしたそうです。

 

  • 正確な情報を知る
  • 当事者意識を身につける
  • 判断力を育てる

 

という道徳教育に必須な項目を、こうやって体と頭を使って、アメリカの子供達は身につけていくわけです。

 

どうでしょうか。

 

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