ブックレビュー:”Other Words for Home”

こんにちは、Erinaです。

 

今日は久しぶりに洋書の紹介をします。

 

最初に書いておくと、この作品は素晴らしい!の一言です。

おそらくこれから読むであろう本達も含めて、私の人生の中でトップランキング入りする一冊。

なので、私がそういうテンションで書いているということを想定してくださると光栄です。笑

 

“Other Words for Home” はシリアからの難民であるティーンの女の子の物語で、文体は “verse” と呼ばれる詩の文体になっています。

なので文章自体はすごく読みやすいのですが、頭がいっぱいになるよりも先に心にずっしりと来る内容で、そんなにスピーディには進められませんでした。一つの詩や単語を噛みしめながら、味わいながら、情景や感情を想像しながら一人で音読したところ、もう涙なしでは読めないストーリーなのです。

Lexile Level: 930

Grade Level: 3-7 (8〜12歳)

 

簡単な作品紹介は以下の通り。

“Jude never thought she’d be leaving her beloved older brother and father behind, all the way across the ocean in Syria. But when things in her hometown start becoming volatile, Jude and her mother are sent to live in Cincinnati with relatives.

At first, everything in America seems too fast and too loud. The American movies that Jude has always loved haven’t quite prepared her for starting school in the US—and her new label of “Middle Eastern,” an identity she’s never known before.

But this life also brings unexpected surprises—there are new friends, a whole new family, and a school musical that Jude might just try out for. Maybe America, too, is a place where Jude can be seen as she really is.”

 

大好きな兄と父親を母国シリアに残し、母親と難民として渡米してきたジュード。シンシナティの親戚の家に滞在しながら、アメリカという国のことや自分自身のことを発見していきます。様々なサプライズを経験しながら、自分自身と向き合い、家族や希望と向き合うパワフルな物語です。

 

とても可愛らしい装丁のこの本を最初に見かけたのは、前任校での国語教師のデスクの上でした。移民や難民生徒が多いこの学校で、上司であった国語教師は、生徒達自身の経験やアイデンティティに寄り添える作品を選ぶ人で、やはり中東からの生徒のためにこの作品を選んだのでしょう。

私はその時、この本を手に取ることはありませんでしたが、今回、娘からの誕生日プレゼントでこの本をもらい、読んでみて本当に良かったと思いました。

 

実際に読んで感じたことは、これは中東からの難民に限らず、すべての移民に通じるものがあるということ。

 

というのも、私は親になったこの13年間、

 

移民としての自分の経験をどうやって子供達に伝えよう?

自由のない国で育った自分が、自由の国で育つ子供達に、何をどう教えよう?

自分が難なくできることをできない人がいるという事実を、どうやって教えよう?

 

というようなことに悩んでいたからです。

これは実際に母国からアメリカに移り住んできた移民一世の親と、アメリカで生まれ育った二世との間にある大きなギャップで、程度に差はあれど、誰もが直面するものでしょう。

 

作品の中でたびたび起こるのが、「アメリカに慣れて欲しいけど、母国のことは忘れて欲しくない」という母親や大人達の感覚。

母国とアメリカの間で揺れ動く感情の波は、私の中でも常に起こっていて、特に社会情勢が不安定な時期って、自分の選択肢は正しかったのか?と疑ってしまうこともあります。

 

そういう様々な波を乗り越えながら、アメリカでの新生活を確立し、自分の居場所を築き上げ、母国と上手に付き合いながら生きていくジュードの姿は、私たちに希望を与え、最後は自分の足で立ち上がって前を向いて歩くということを教えてくれます。

 

今回、まずは私一人で作品を読み通した後、娘に朗読してもらうことにしました。やっぱり子供達にも読んでもらいたかったからです。

寝る前に娘がベッドの上で朗読すると、息子やうちの旦那もやってきて、みんなでベッドの周りに座って、朗読を聴きます。

美しいアラビア語の表現や、シリアの情勢、宗教的慣例などは私が解説を入れながら。

感情の波が満ちたり引いたりする時は、子供達に「どう思う?」と質問しながら。

 

子供達は2年前の日本旅行で感じたこと(言葉がわからなかった経験など)を関連させながら、ジュードや移民の子達が普段、どんなことを考え、どんな思いをしながらアメリカの学校で勉強しているかということを考えるようになりました。

 

数字や表面的な情報では見えない、人間の生。

必ずそこには思い出や感情や家族というものがあり、単なるデータや知識で終わらせないために必要な物語だと思います。

 

 

ペーパーバックになるのはしばらく先のようですが、ただいま、ハードカバーがアマゾンでセール中のようです。

 

他のブックレビューはこちらで読めます。

 

 

 

 

“ブックレビュー:”Other Words for Home”” への2件の返信

  1. 初めてメールいたします。偶然、このサイトを見つけました。どのコラムも興味深く洞察力の凄さに感嘆しております。私の娘もアイルランドのド田舎に結婚を機にもう18年も住んでおります。これも何かの縁かと思いますので今後とも何卒よろしくお願いいたします。Erina様の益々のご活躍期待しております。まだまだコロナ禍に在りますがどうぞご自愛ください。櫻谷廣志

  2. いつも感心しながらエリカさんの記事を読んでいます。

    子供と一緒に「GEORGE」を読みました。
    小学三年生の娘には、GEORGEのような友達がいるので、共感を持って読めました。
    本から何かしら学んでくれたと思います。
    次は、Other words for Homeを小学五年生の息子と一緒に読みたいと思います!

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