ブックレビュー:”The Memory of Things”

こんにちは、Erinaです。

 

引き続き、ブックレビューです。

 

私は基本的に、ものすごく気に入った本しか最後まで読まないので、ブックレビューを書く時点で全て星5つ評価です。

それを踏まえて、ぜひ読み進めてください。

このブックレビューを読んで、洋書に興味を持ってもらえたら光栄です。

 

 

Grade: 7-10th(12〜18歳くらい)

 

英語の作品紹介:

“On the morning of September 11, 2001, sixteen-year-old Kyle Donohue watches the first Twin Tower come down from the window of Stuyvesant High School. Moments later, terrified and fleeing home to safety across the Brooklyn Bridge, he stumbles across a girl perched in the shadows, covered in ash, and wearing a pair of costume wings. With his mother and sister in California and unable to reach his father, an NYC detective likely on his way to the disaster, Kyle makes the split-second decision to bring the girl home. What follows is their story, told in alternating points of view, as Kyle tries to unravel the mystery of the girl so he can return her to her family. But what if the girl has forgotten everything, even her own name? And what if the more Kyle gets to know her, the less he wants her to go home? The Memory of Things tells a stunning story of friendship and first love and of carrying on with our day-to-day living in the midst of world-changing tragedy and unforgettable pain — it tells a story of hope.”

 

 

時は2001年9月11日。

高校生のカイルは、NYのワールドトレードセンターの一つが崩れるのを目撃していました。

ブルックリンブリッジを渡るパニックになった人々の中で、彼が見つけた一人の少女は記憶喪失になっていました。

刑事の父親とも、旅行中の母親と妹とも、なかなか連絡が取れず、カイルはこの少女を自宅で保護することを決めます。

家には勤務中に事故に遭い、体が不自由な叔父がいて、3人でこの非常事態の時間を過ごします。

この本一冊で、物語中の時間が進むのはたったの数日なのですが、この短い時間にこういう出会いと別れもあったのでは?と思えてしまうほどのリアリスティックさです。

 

私がこれを読んだのは、ちょうどコロナで自粛が始まった今年の夏のはじめ。

日常が非日常になり、世界中の生活が一転した頃でした。

先行きが見えない中で、忍耐強く待つ時間と、行動を起こす時間。

今、この瞬間にも、人々は生死を分ける決断をしているのかもしれないな、ということを実感させられる作品でした。

 

私たちは、こんな非常事態が起こらないと、日常のありがたさを実感しません。

当たり前に友達に会えること。

家族と食事をとれること。

何気ない会話をすること。

そういう瞬間が、一体、何人の生活から奪われたのか。

 

私はそんなことを考えながら、フィクションとは思えないこの物語を読み進め、それでも優しくて温かい登場人物のやりとりに、NYCの一室で起こっている安らぐ空間を想像しました。

外には、非人道的な煙と塵。

家の中には、不器用だけど、なんとかして守りたいという優しい気持ち。

そういうギャップの描写が、読んでいて目の前に浮かんでくるようでした。

 

2001年9月11日、私は日本でアメリカへの留学準備を進めていました。

ツインタワーに2機目の飛行機が突入した瞬間をNHKの緊急ニュースで目撃した私は、これは映画なんだと思った。

あれから19年が経ち、またなんとも言えない、映画みたいな状況で生活を送っている。

人生って不思議だなとしか言えない、でも、こうやって歴史のひとかけらが作品として形になって残る事実に、本って良いなぁとつくづく思いました。

 

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