高校のサマースクール

こんにちは、Erinaです。

 

現在、アメリカでは長い夏休み真っ盛り。

8月末〜9月に新学年度が始まるまで、約2ヶ月間の休みです。

 

そんな中、高校に通ってくる生徒たちがいます。

それは「サマースクール」の生徒。

 

高校のサマースクールは従来、6月に学年度が終わった時点で、DまたはFが成績についた子。つまり、その授業をパスできなかった生徒です。

日本で言うところの「補講」です。

 

そんなセットアップなので、ハッピーにやってくる子はほとんどいません。

「成績にDまたはFがついた」というトラウマと、「このクラスは苦手」という嫌悪感に、「夏休み返上」という劣等感がプラスされるわけですからね。

 

今年はやはり特殊で、パスしなかった理由の多くが「学年の最後までズームだった」という子。

3月にライブ授業復帰のオプションがあったにも関わらず、ズームを選び、結局、授業についてこれなかった子達が多数。本来ならギリギリCでパスだったろうな、というような子がたくさんいます。

ライブ授業に戻る選択は、やはり各家庭の事情がありますから、教師や学校に権限はないものの、生徒自身が「やっぱりオンラインは楽だったけどダメだった」と気づけたのならそれは良い経験だったと思うし、自分にとって楽なことが、自分に良い結果をもたらすというわけではない、と学んだ子も多いわけです。

 

そんなことを理解した上で、うちのディストリクトは今年、ものすごく大きな決断に至りました。

それは、ディストリクトワイドのカリキュラムで、PBL(プロジェクトベース)の授業をやる!ということ。

プロジェクトベースについては詳しくはここで書きましたが、つまり、市内の高校生は全員、同じ教材を使って、同じペースで、同じことを学ぶ、というわけです。

 

これは日本では当然のことのように思えますが、共通の教科書や指導要綱に沿って授業をしないアメリカでは、学校やそれこそ教師によって、授業内容に差が生まれます。

もちろん「この学年ではこれを教える」というスタンダードはありますが、それらをどんな順番で、どんな濃さで、どんな内容や例題を使って教えるか、というのはばらつきがあるからです。

 

また、PBLにすることで、与えられたトピックに応じたスキルを各クラス(国数理社)で学ぶことで、単純な方法論ではなく、生徒たちは総合的な視点を養うことになります。

この結果は目に見えて成功でした。(少なくとも私の中では)

前述したように、「サマースクール」というものに対して、トラウマ・嫌悪感・劣等感を持っていた生徒たちが、苦痛 (pain)ではなく学習 (learning) を経験することになったし、年度中には経験できない、数学+社会や、国語+理科というクラス間でのつながりを感じたからです。

 

例えば、先週までのトピックは「レノベーション」でした。つまり、改築です。

テープメジャーとクリップボードを片手に学校中を全員が歩き回り、キャンパスのどの部分を改築したり、改善したりできるか、というアイディアをひねり出します。

そこから科目別に、

 

国語:地域レノベーションとアイデンティティ

数学:拡大縮小と計測

理科:材質と環境への影響

社会:Gentrification(貧困エリアに富裕家庭が転入することで、不動産価値が上がり、貧困家庭が住めなくなる現象)

 

などについて学び、まとめ、発表しました。

 

このプロセスの中で、教師として、私が学んだことは多々あります。

成績には現れない子供達の可能性と彼らを取り巻く社会環境への意識の高さ。

生徒たちは、大人が想像するよりも社会のことにものすごくawareで、興味を持っています。ただ、知識や経験がまだ発達段階で「まだら」なので、ソリッドなものとして評価されない。当たり前のことです。

 

だから、彼らの興味を少し刺激してあげれば、どんな作業と情報が必要かを自分たちで考えるし、少しのヒントやアドバイスをあげれば、それを形にすることができる。

 

例えば:

 

「アメフトのフィールドにベンチではなく個別のシートを設置したい」という生徒は、インターネットでその仕事をする会社を見つけては自分でコンタクトし、費用や設計図などを取り寄せていました。

 

同じく、「アメフトのフィールドの観客席部分に、ソーラーパネルのついた屋根を設置したい」という生徒は、屋根を建てるのにどんな材料が必要になるかをリサーチし、課題よりずっと細かく費用計算をしました。

 

他にも、大人の私には想像もできなかったアイディアがぽんぽんと飛び出し、決して「授業をパスできなかった子達」とは思えないようなプロセスを経ることになったのです。

それは私自身、生徒一人ひとりと向き合い、たった3週間という短い時間に、この子達が「どんな人間なのか」を理解する機会になったし、これから社会をリードしていく15〜17歳の若者たちに、何を教えるべきだろう?という根本的なものと向き合う時間になりました。

 

サマースクールという特殊なセットアップの中で、子供達はさらに様々な事情を抱えてやってきます。

それに理解を示すという意味で、今夏にPBLを選んだこのディストリクトはさすがだなと思ったし、その一部になれたことが光栄だし、そこで私自身の新しい学びがあったことに、とにかく感謝です。

 

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