正しいことをするために必要なもの
こんにちは、Erinaです。
私たちは皆、心の中で「正しいことをしよう」という思いがあるし、同時にその難しさを年齢や経験とともに実感します。
今日は、その「正しいこと」をする時に必要なものを、最近の出来事に関連させて書いてみたいと思います。
まだ詳しくは書けないのですが、現任校でいわゆるスクールポリティクス(学校内政治)に巻き込まれています。というか、まぁどこにでもあるんですけどね。
自分が生徒や親の立場にいた頃は、絶対に見えなかった部分で、普通はあまり見えてきません。
でもやはり、教師という立場で学校という場所と関わり始めると、それはまぁ色々なしがらみや人間関係があります。権力争いとかエゴとか年功序列とか、どこにでもあるものです。
いつもなら私も、「めんどーくせーなー」と外野でお茶でもすすっていたいタイプなのですが、今回ばかりはそうは行かず。
私のモチベーションは「正しいことをやる」であり、それがすでにない状況では、やはり戦わなければならないわけです。
そんなわけで、約一年間、正しいことをするために戦ってきたわけですが、その上で必要なものがはっきりとしてきました。
なんだと思いますか?
精神力?
権力?
お金?
時間?
学歴?
教養?
スキル?
情報?
まぁ色々と立場を有利にしてくれるものでしょうね。
私の行き着いたもの、それは「仲間」です。
どんなに強い信念と確固たる証拠を持っていても、そして上記でリストアップしたもの全てを持っていたとしても、人間がひとりで戦うというのは、とても大変なこと。
長い年月と多大なる労力、そして大きなリスクをかけて何かに挑む時、そこには同じ方向を向いていられる仲間が必要です。
時には背中を押してもらったり、休ませてもらったりできる仲間。
まして自分が正しいことのために戦っているのなら、立ち止まったり、引き下がったり、辞めるということのハードルがものすごく高くなってしまうからです。
私はこの一年で、そういう存在の大切さを、心から実感するようになりました。
2022年、ある女性がニュースになりました。
彼女の名前は五ノ井(ごのい)里奈さん。
陸上自衛隊に入隊していた2021年に、複数の男性隊員達から集団で性的嫌がらせ(を超えるような扱い)を受けていたそうです。
上官や捜査機関に報告するも、まともに受け取ってもらえず、不起訴になりました。
五ノ井さんはそれでも諦めず、2022年6月の Youtube 街頭インタビューで彼女が受けた性的嫌がらせを告発。その動画はインターネットで拡散され、自衛隊内部の闇とも言える部分が、一般市民にも知れ渡ることになりました。
その後、五ノ井さんはTwitterをはじめとしたSNSで情報公開をし、広く支持層や応援してくれる人達を集めることになったと同時に、彼女への個人的批判なども多く集まり、心を傷めることもあったようです。
結果、2022年9月、セクハラの事実を認めた防衛省と自衛隊が、五ノ井さんに謝罪。10月には加害者達から謝罪があったようです。
11月には、イギリスの雑誌 “Financial Times” が、”25 Most Influencial Women of 2022″ (2022年で最も影響力のあった女性25人)のうちのひとりとして五ノ井さんを選出。アメリカの Brown Jackson連邦判事や、テニス選手の Serena Williams、フィンランド大統領の Sanna Marin 達と肩を並べて、こう紹介されています。
“In a country where many women suffer sexual harassment in silence, Rina Gonoi made a different choice. With courage and stoic determination, the 23-year-old launched a public campaign this summer, demanding truth and a formal apology from Japan’s military after she was sexually assaulted by drunken male officers during training last year……Rina says it doesn’t have to be this way. At the age of 11, she was inspired when she was rescued by a female SDF officer following the 2011 Tohoku earthquake and tsunami. Her dream job was quickly shattered by the reality she faced and she will not rejoin the military, but she is hoping that her campaign will improve working conditions for future generations of female officers. To them, she says: ‘You’re not alone. I felt very lonely as well but the only thing I could do was believe in myself.'”
日本に深く蔓延る女性蔑視やセクハラの現実が、若く聡明な世代によって、徐々に世界にも知れ渡るようになり、日本人女性の安全や権利意識向上へのきっかけになることと思います。
そんな中、年末に彼女がつぶやいた一つのツイートが気になりました。
こんな人生もう私には無理だ疲れたもう戦いたくない戦えないこんな人生歩むために生きてないもうむり全てが重い
— 五ノ井里奈 gonoi rina (@judo_gonoi) December 26, 2022
そうだよな…
ものすごく勇敢なことを成し遂げても、ひとりの20代の女性。
心細くて、怖くて、不安で、逃げてしまいたい日や、もうやめてしまいたい日だってあるはず。
同年代の他の女の子達は、美味しいものを食べて、お酒を飲みながら恋愛のことやら仕事のことやらをおしゃべりして、国を動かすなんて想像もしていないはず。
そんなことを考えていると、ふとひとつの疑問が心をよぎったのです。
「彼女には仲間がいるのだろうか?このおそらく長くなるであろう戦いを一緒に戦える仲間が。」
国から謝罪されておしまい、ではない。
加害者達が有罪になっておしまい、ではない。
日本の歴史を動かした五ノ井さんの戦いは、どんな些細なレベルでもずっと続くものであり、それはきっと彼女自身も感じて、覚悟しているはずなのです。
そんな時に、どうか彼女のそばに、「仲間」がいますように、と祈らずにはいられません。
それもなるべく、家族や部外者ではなく、同じ痛みを共感でき、それでも一緒に前を向ける仲間。
この国を変えていこうと同じ熱量を持って、生きていける仲間。
私はこの一年間、「正しいこと」をやるために色々なものと戦い、そこで彗星の如く現れた日本の勇気ある若いひとりの女性に、自分の中の何かを重ねることになりました。
そして彼女にも、私を支えてくれる仲間がいるように、正しいことをするために必要な力をくれる仲間が現れますように。
最後に、とあるクオートを紹介します。
数年前に英作文の指導をしていた小学生の言葉です。
学校の課題で、故 Ruth Bader Ginsberg (RBG)判事について読み、そこから学んだ教訓だそうです。
“Fight for things you are about, but in a way so others can join you.”
「大事なもののために戦え、そして人々があなたに加勢できるように」
どうもありがとう。
この言葉が、何度、私の背中を押してくれたかわかりません。素晴らしい文章ですね。
どうでしょうか。