ポストコロナ、子供達に何を教えるか【後編】

こんにちは、Erinaです。

前回に続いて、コロナ後のアメリカの学校教育で議論されているトピックについて書いてみようと思います。

 

メンタルヘルス

コロナ禍のズーム授業において可視化されたことのひとつは、子供達のメンタルヘルス問題でした。

「学校」というのは科目の内容を学びに行くだけの場所ではない、という事実を実感した親も多いはずです。特に、社交的な子供を持つ親は、自分の子供が一日中自分の部屋にこもりきり、連日ズームで授業を受けることの弊害を痛感したのではないでしょうか。

 

人間、他人とのインタラクションというのはとても大切です。

どんなに内向的な人でも、何かしらの刺激をネットやらテレビから受けて、それに反応して生きている。メンタルヘルスの実験で、外部とのインタラクションが全くないウサギが何日間か何週間で死んでしまうというのを聞いたことがありますが、やはり人間もそうなのでしょう。

 

コロナ禍から復帰して、私が力を入れたのはそこでした。

 

“What did students miss the most during the pandemic?”

(生徒達がパンデミック中に最もミスしたものは何だろう?)

 

この疑問への答えは、生徒達がすぐに教えてくれました。

授業が早く終わった時間や、合間の時間の過ごし方を見ていると、生徒達は個々に携帯を見るのではなく、トランプやUNOをしたり、チェスやオセロ、モノポリーなどのボードゲームを選んだのです。

 

「あぁ、やっぱりそうなんだ!」と思いました。

 

このデジタルエイジに生まれ育つ子供達も、やっぱり私達と同じ人間であり、「楽しい」と思えるのは、一人きりでやる携帯ゲームよりも、すぐ目の前にいる友達とできるリアルのゲームなのだ、と。

 

私の教室には常にトランプやUNOやボードゲームが常備されていて、空き時間に生徒達が借りに来ます。

 

「先生、机をくっつけてみんなでUNOしていいですか?」

「先生、チェスを貸してください」

「ランチ時間に教室に来てモノポリーしていいですか?」

 

みたいな声を聞くと、大丈夫、まだまだこういう楽しみはきちんと伝わってる、と思えるのです。

 

同時に、子供達が自分で選んだ遊びに、友達と一緒に熱中できる姿というのは、見ていてとても良いものだし、大人として学ぶことがたくさんあるのです。

遊びというものは人間のメンタルヘルスにいかに大事で、特に他人をそれに巻き込むことで、相乗的に脳が活発化される。

よく学び、よく遊べ、とは言われますが、学校も遊びもバランスのとれている生活というのが、いかにメンタルとフィジカルの健康にとって大事なことか。

 

現代の高校生達は、学校の勉強にスポーツ、クラブ活動、ボランティア活動、バイト、弟妹の世話…などなどあげたらキリがないくらいに忙しい。

それこそ奨学金のためのチェックリストがあり、それをこなすために24時間をただただ消費していく。

ティーン達は疲弊し、何のための毎日なのかを疑問に思う。

未来が楽しみではなくなる。

そして自傷行為を選ぶ。

 

そんな日々は辛すぎる。

 

前回の「競争から共生」でも書いたように、社会構成がガラリと変わったこの時代で、子供達が必要なものは「前世代と同じ道を進むこと」ではなく、この目まぐるしい世界で、自分をケアし、どんな困難も乗り越えられるメンタルヘルスなのではないでしょうか。

一昔前までメンタルヘルスという概念が議論されなかったのは、存在していなかったわけではなく、認知されていなかっただけなのではないでしょうか。

 

私がこれまでに行った高校には、3〜4人いるアカデミックカウンセラーの他に、

  • Therapist
  • Psychologist
  • Social worker

のような人たちが必ずひとりは常駐しています。(学校によってプログラムやタイトルが異なる)

 

こういう役職のニーズはこれから必ず増えていくと感じるし、現状でもまだまだ足りていません。

子供達が自分でケアできるスキルと同様、プロが専門知識をもって介入できる環境も必要ですし、そのサポートがもっと認知されてほしいと願うのみです。

 

また、トラディショナルの学校ではなく、ホームスクールや independent study のようなオルタナティブスクールも、コロナをきっかけに増えました。コロナ禍で構築したオンラインスクールのプラットフォームを、せっかくだからキープしようと、ディストリクトは幅広いプログラムをオファーしています。

昔の「普通の学校に行けない子」みたいなレッテルもなくなり、オルタナティブスクールのハードルはだいぶ下がりました。「まぁ、そういうのもありよね」という感じです。

 

これらの変化は、はっきり言って全教員にとって新しい概念です。つまり、自分達が育ってきた学校教育とは全くの別ものですから、やり方も模索していくしかない。

様々なトレーニングや、尽きないディスカッション、幅広いコミュニケーションをとりながら、私たち教員もまた、価値観の異なる他人と共生することのモデルを、子供達に見せていくのです。

どうでしょうか。

 

“ポストコロナ、子供達に何を教えるか【後編】” への2件の返信

  1. ご無沙汰しております。お元気でしょうか。昨年12月はオンラインでの交流、お世話になりました。本校ではあの交流をきっかけとして、生徒も慣れて、オンラインをはじめ、いくつかの国際交流が行われ、生徒にとって大変有意義な経験になりました。積もる話はたくさんあります。もしそちらの高校とも、何らかの交流ができればと思うのですが・・・。また近況も知りたく、コメントしました。

  2. 瀧澤先生、お久しぶりです。
    私もちょうど、一年前だったなぁと考えていたところでした。
    私の方はというと、異動先でなんとかやっています。日本人留学生がいないので、何らかのクラブに声をかけてみようかなと考えているところです。
    新学期に教頭に相談してみようと思います。
    またメールしますね。

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