アメリカの高校の分業

こんにちは、Erinaです。

 

今日はアメリカの高校にある「分業」について書いてみたいと思います。

 

私の数年前のツイートに、今でも反響があるものの一つが、「アメリカの学校にいる教員以外のスタッフ」というものです。

 

アメリカの学校には、教員(つまりは先生)以外にも専門的な仕事をするスタッフが多数働いていて、それぞれの「持ち仕事」というのがとても明確に線引きされています。

昨今、話題になっている日本の教員不足(アメリカでも慢性的な教員不足はあります)や超過勤務などは、やはりこのような分業によってだいぶ緩和されるのでは?と思うのです。

 

そんなわけで、アメリカの学校(特に高校)にいる教員以外のスタッフについて、詳しく書いてみたいと思います。

 

校長秘書 (Principal’s Secretary):学校の書類関係はこの人がやってくれます。現任校では正規の秘書は一人ですが、フロントオフィスのカウンターには他に二人のスタッフがいて、この3人に頼む・または質問をすれば、必ずなんとかしてくれる人達です。教員の病欠や突然の欠席なんかもこの人が対処してくれます。新しい学校に行ったら、まずは連絡先をもらう!何かあったらすぐに電話する!

 

副校長または教頭 (Assistant Principal/Vice Principal):学校のサイズによりますが、大抵は3人います。担当する生徒がアルファベット順や学年で決まっており、生徒のトラブルや停学・退学などは教頭がまず直接対応します。

 

カウンセラー (Counselors): これも学校のサイズによりますが、3〜7人くらい常駐。教頭にいくほどではないレベルの問題や、生徒の学業面(科目に限らず)、家庭での問題、健康問題など、とにかく幅広い面で生徒をサポート。カウンセラーは私たち教員にとっても強い味方で、生徒が教室の外に出た後の情報が必要な場合に、そのコミュニケーションの架け橋になってくれます。やはり「担任」がいないアメリカの高校では、カウンセラーの存在はとても大きくて、子供一人ひとりがどんな人間で、どんな生活があるかという部分に目が行き届くための仕事です。

 

テック (Tech):キャンパス内の Wi-fi やコピー機、教室の各デバイスの不具合や故障など、とにかくテク系のトラブルがあったらこの人を呼びます。新しい学校に行ったら、まずこの人と仲良くなれ!という人ですね。ご存知の通り、アメリカの教室はかなりデジタル化されていて、パソコンなしではもう仕事になりません。生徒も一人一台のクロムブックが支給されている時代に、常駐のテックはもう絶対条件ですし、広いキャンパスでは無線を持たされています。

 

アテンダンス (Attendance):アテンダンスは生徒の出欠を管理する人です。生徒の病欠や早退など、教員が対応することはなく、親はアテンダンスに直接電話をします。そこで「うちの子、今日は休みます」と伝えると、出欠プログラムに記入され、科目教員達はそれで欠席を知ります。早退の場合も、親が「うちの息子が1時にドクターのアポがあります」と連絡を入れると、アテンダンスがその子が今いるであろう教室に電話をかけ、先生に「生徒Dを早退させてください」と伝えるわけです。これは楽!効率的!ミスコミュニケーションがとにかく減る!という素晴らしいシステムです。

 

スピーチセラピスト (Speech Therapist):現任校では特別支援教育学部 (SpEd) の教員がスピーチセラピストのライセンスも持っており、吃音などの発話障害を持つ生徒達の支援をしています。生徒の発話背景や書類に目を通して、受け持ちの科目教員達に連絡をしたり、「授業中はこういうサポートをしてあげて(例えば、吃音の子は突然、名指しで当てないで、など)」とアドバイスをくれます。

 

作業療法士 (Occupational Therapist):学校によっては常駐、または重中度 (Moderate to Severe) の特別支援クラスに定期的にやってくるスタッフがいます。これも生徒の IEP (Individual Education Plan) によって必要なサポートを行うための様々なプログラムが組まれるわけですが、こういった専門家の介入によって内容が決められます。

 

部活コーチ (Coaches):部活のコーチは公募なので、外部からも雇われます。もちろん任意で教員がコーチになることもありますが、給料は別 (stipend) に支払われます。サンディエゴエリアでは、大体1シーズン $2,000前後。アメリカの部活は秋・冬・春スポーツと分かれていて、1シーズンが3ヶ月くらいなので、日本円にすると月10万円の特別手当。

 

エイド(Aides):学習障害などを持つ生徒が、1-on-1 のサポートを必要とする場合など、教室にエイド(またはパラ)と呼ばれる補充教員が入ることも。特定の生徒につきっきりの場合もあるし、IEP を持つ生徒Aと生徒Bと生徒Cの3人をまとめて、みたいな場合もあり、ケースバイケースです。私の今年の受け持ちでは、5クラス中3クラスにエイドが入っていて、なおかつ特別支援教員の Co-teacher もいるので、大人3人がいることになります。(Co-teaching に関してはまた別の記事で書きましょう)

 

ナース (Nurse):日本の「保健の先生」ですが、こっちはもっと専門的なナースという意味合いが強い印象。「先生」という印象は言葉尻からはないからかな。コロナ禍ではとても忙しそうでしたね。今でも、様々な感染症や流行している病気などについてアップデートしてくれたりと、かなり積極的にチームの輪に入るスタッフです。

 

セキュリティ (Security):ゴルフカートに乗って、無線を持って、キャンパスをビューンと運転している人たちです。とにかく問題事があったら無線で呼べば飛んできてくれる心強い味方です。生徒同士の喧嘩や揉め事などに直面するため、元警官や軍人だった人も多くいます。昨今、アメリカの学校といえば話題に上がる銃乱射事件ですが、こういう盾になってくれる存在が実はいます。また、学校嫌いの(特に男子)生徒なんかは、教師といい関係が築けなくても、このセキュリティ達と仲良くなるということもよくあって、この人達が学校で唯一の話し相手、みたいなことも。授業をサボってる子にも、「クラスにもどれ!」と叱るんじゃなくて、「おーい、どうしたー?」みたいな対応も、人それぞれだなぁと思います。

 

キャンパスポリス (Campus Police):セキュリティの他に常駐の警察官がいます。常駐とは言え、色々な対応でいないこともいるのですが、まぁ大体います。きちんと制服を着て、駐車場には警察車が停まっています。

 

心理士 (Psychologist):学校によって役割や常駐頻度なども変わってくるのですが、IEP のアセスメントや、もっと専門的なカウンセリングを必要とする生徒のために心理学のプロがいます。教員の立場からしても、こういうスタッフに直接的なアクセスがあるというのはとても心強くて、もっと専門的なことを知りたいとか、どういう授業が効果的か、などというアドバイスももらえます。

 

カフェテリアスタッフ:生徒のランチを用意・配膳するスタッフ。朝から準備をし、短いランチタイムに2,500人の生徒にランチを配り、また次の日の準備をする。怒涛の仕事ですよ。現任校には8人くらいいるかなぁ。

 

経理 (Finance):生徒が諸々の費用 (AP exam, ダンスパーティのチケット、部活の遠征費用等)を支払う場合に行く窓口があり、そこで支払います。お金の問題はまぁ面倒臭いことになりうるので、教員が対応しなくて済むのはとてもありがたい!大抵の場合はクレジットカード決済にはなっているものの、やはりまだチェックや現金の場合もありますからね。

 

メンテナンス (Maintenance):日本の「管理人さん」ですが、アメリカの高校ではかなりの権力を持ってますね。チーフが一人、その下に何人かいて、生徒の下校後の清掃をする Custodian もやっていることも。これも新しい学校に行ったら、すぐに仲良くなるべき人達で、とにかく顔と名前を覚えてもらい、こっちも覚える。

 

こんな感じかなぁ…もっと他にもいそうな気がしますが。

 

ここにリストアップしてみるとお分かりかもしれませんが、「教員の仕事が減る!」なのです。

日本では「それは先生の仕事」という業務を専門のスタッフに振り分けることで、教員の仕事はあくまで「教えること (= teaching)」に限定され、教員は自分の生徒と授業に集中することができるのです。まさに夢の仕事でしょ?

 

少し前に話題になった #教師のバトン でも、やはり教員の(授業以外の)業務がどんどん増えていき、勤務時間内に対処できないどころか、授業に専念できないと、まさに本末転倒な意見を多く目にしました。せっかく教員になったのに、それが原因で教職を諦めてしまうなんてとにかくもったいないし、ただでさえ自治体は教員不足なのに、やる気と知性のある先生達を戦線離脱させてしまう余裕はないはずです。

この記事でも、アメリカの学校にいるスタッフについて少し紹介しています。

アメリカの学校システムの基礎知識 (1)

 

また、生徒の時間をうまく活用することで、学校の運営を円滑に進めるこんなプログラムもあります。

アメリカの中学高校で、驚きの生徒の有効活用

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