ポストコロナ、子供達に何を教えるか【前編】

こんにちは、Erinaです。

ポストコロナ、つまりコロナ後(英語では “Post-pandemic”)における現在の社会で、人々の意識の変化、特にアメリカの教育分野でどんな変化が起こっているかについて書いてみたいと思います。

 

アメリカの教育分野というのは一般的に前衛的で、特にカリフォルニア州の公立学校で実施される取り組みというのは国内でも新しいものが多く、試験的でもあります。データやリサーチに基づいた決断がされ、前線にいる私たちのような教師の思惑や感想がかなりハイスピードで反映されています。(内容が良い悪いというのはまた別の問題ですが)

なので、何十年も前の方法を「前例がないから」と同じことをやり続けるというケースは珍しく、科目でそれをやっていると、さまざまな方法で淘汰されていくのが現実です。

 

つまり、新人であろうとベテランであろうと、目の前で起こっている日々の変化(あらゆるレベルの)に目を向け、それに沿った微調整をしていかなければ、この国で教育に携わり続けるのはとても難しい、ということです。

なぜならこの国で起こる変化というのはとても目まぐるしい。「みんな変わらないでいようよ〜」というのは通用しません。

 

それが特に強調されたのは、やはりコロナ禍でした。

コロナ禍では、学校でのポリシーは毎週どころか毎日のように変わり、みんな必死でしがみついた。物事の良し悪しよりも、日々を乗り越えることに必死で、まさに「サバイバルモード」だったわけです。

しかしあれから3年が経ち、教育者達は嵐の後の状況調査に乗り出しました。

 

どれだけのダメージを受けたのか。

どんなロスがあるか。

どれだけのリカバリーが必要か。

どうすればそのリカバリーができるか。

 

ここ15年ほどの間に起こっていた社会での変化が、コロナをきっかけに完全に表面化し、もうこれ以上は目を背けるわけにはいかないよね、という状況になったのです。

では、具体的にどんなトピックが議論されているか、紹介してみたいと思います。

 

競争から共生へ

「弱肉強食」

「資本主義」

「競争社会」

なんかがパワーワードのアメリカでしたが、やはり「時代は変わった」というのがここでしょう。

“More is better. Bigger is better.” と言われた時代は終わり、「高校卒業後は大学進学をし、卒業し、大企業に就職。20〜30代で結婚し、子供は2人以上、郊外に庭付きガレージ付きの白いフェンスで囲まれた一戸建て購入」といういわゆる「アメリカミドルクラスの理想像」は崩れつつあります。

 

なぜなら、現代のアメリカでは

  • 大学の学費高騰→長引く学生ローン返済
  • 就職難→契約・臨時・アルバイト→医療保険なし
  • 物価高騰→自活できない
  • 不動産高騰→親と同居

という現象が顕著で、若者が自立できない、結婚しない、共働きの30〜40代夫婦(子持ち)が仮住まいをせざるを得ない、という状況が多々あるのです。

 

加えて、インターネットを使ってお金を稼げるようになったこの時代、企業に就職し、月金の8〜5時にオフィスでフルタイム勤務というスタイルはだいぶ古いという価値観になりました。たとえそういう職についたとしても、いつレイオフの対象になるかはわからないし、いつ家族が路頭に迷うかわからない。

 

つまり、30年前のような「これを成し遂げれば成功者」みたいなリストが通用しなくなったんですね。

そんな中で必要なのは、他者より頭ひとつ飛び抜けることではなく、状況を把握し、リソースを見極め、他人に関係なく「自分にとって何が必要か」を判断する力になりました。

そのためには、他人との競争力よりも、協力や共生する力が必要になります。

  • 自分が持っていない(けど必要な)ツールを持っているのは誰なのか。
  • どうすれば自分と異なる意見や価値観を持つ人と協力できるか。
  • 自分個人の利益のためではなく、全体としての利益のために何をするべきか。

常にアンテナを広げて、自分を役立てる方法を見つけていかなければ、チャンスはどんどん素通りしていくし、波にはどんどん置いていかれる。何せインターネットのおかげで、物事のスピードは格段に上がったのです。

 

現在、数学のクラスですら “Collaboration” に重点が置かれています。

私の授業でも、毎週木曜日はグループワークの日にしていて、月〜水曜の間に学んだことを、生徒同士でディスカッションしたり、練習したりする日としています。

教師がレクチャーすることはほぼなく、数学そのものもそうだけど、効果的なコミュニケーションのとり方を練習するようにしています。(質問の仕方など)

そんな中では、質問できない子とか、自発的に動けない子というのはどんどん置いていかれるし、逆に、自分から「解決しよう、なんとかしよう」と行動に移せる子が前に進んでいきます。

 

これらはあるディストリクトの数学カリキュラムチームが作ったポスターの一例で、グループワークをする上でどんなことに気をつけるべきかという具体的なガイドラインです。

“Explain your reasoning” 「自分の理由を説明する」

“Support each other through stuck points” 「つまずいた時にはお互いにサポートし合う」

“Listen to understand” 「相手を理解するつもりで耳を傾ける」

“Nobody is done until everyone understands” 「全員が理解するまでは終わりではない」

 

どれも、相手ありきの内容です。

 

数学はもちろんのこと、国語や社会科ではディスカッションが当たり前のアメリカの学校。この辺りのスキルは高い子が多くて、中学までにだいぶ訓練されてきたなと思える9年生も多数います。

 

次回の後編では、2つめの項目について書いてみます。

 

 

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