子どもの大学資金を貯金しない理由

こんにちは、Erinaです。

 

今日は、我が家の教育方針を一つ紹介します。

 

それは、「子どもの大学資金の貯金はしない」です。

 

ご存知のように、毎年、毎学期のように上昇しているアメリカの大学の学費。私が学生だった10年前と比べても、格段に上がっています。

私立大なら学士号でも$100,000は当たり前だとか、アイヴィーリーグで博士号なんて取っちゃったらクオーターミリオンだとか、まぁそういう世界で、その年代の子どもを持つ親には頭痛のタネ以外の何者でもありません。

 

 

9年前、長男の妊娠がわかったとき、うちの旦那はこう言いました。

 

「この子の大学資金を貯金することはない」

 

「あっそ」

 

私はそっけなく返事しました。

 

アメリカの学費戦争は、それこそ子どもの妊娠がわかった頃から話題に上がるくらいで、小学生になる前にいくら貯めるとか、そういうレベルです。

 

私の旦那は、親からの学費サポートは全くありませんでした。

彼の父親が教鞭を取っていたケンタッキーのリベラルアーツカレッジ(私立の小さな4年制大学)は、全て卒業生からの寄付と現役学生による町のビジネス運営でまかなわれており、学生の学費負担ゼロという学校でしたので、彼はそこを卒業し、その後は奨学金+アルバイトをしながら修士号と博士号を取得しました。

その後、ミリタリーのシビリアンポジションや軍需企業で働き、現在はコミカレ(コミュニティカレッジ)で数学を教えています。彼の学生のほとんどはフルタイムやパートタイムで仕事をしながら授業を取っているわけです。

 

そういう経験もあり、「大学教育のために大金をはたく」という考えにほとほと賛同できない彼は、「子供のために大学資金は貯金しない。大学に行きたいなら自力でなんとかしろ」を掲げているのです。

 

私もこれには賛成で、「みんなが行くから親にお金を出してもらって大学に行こうかな」くらいの意気込みなら行かなくてよろしい、と思うし、大学に行きたいなら、仕事をしながらコミカレからスタートしなさい、とすでに子ども達に教えています。

そもそも、高校を卒業したときに、自分の子どもが何をやりたいかなんてさっぱりわからないし、そんな未知数の可能性のために、今から何千万も貯金するのはバカバカしいというのが私の正直な感想です。

 

私は親が大学資金を払ってくれました。

というと、「どうして自分だけ?」と思われるかもしれませんが、これは私の母の人生と、私の人生における経験と価値観の違いです。

私の母は、裕福ではない農家に生まれ育ち、下に弟妹もいたので大学に行くことはありませんでした。そこで、「自分の子どもには大学に行かせたい」と思ったそうです。

私は自分の母親がそういう決断をして、大学に行かせてくれた、それも留学をさせてくれたことに感謝しているし、とても幸運だったと思っています。

 

しかし同時に、私は一日でも早く親から自立したいと思っていたし、そのためにはなるべくお金のかからない道で、一日も早く大学を卒業し、就職して自立するというところまでゴールに入っていたわけです。そして、私の出来る範囲でそれは実現されたと思っています。

コミカレからスタートし、地元の州立大学に編入し、大学卒業と同時に就職。違法アルバイトで小遣い稼ぎをしている他の留学生たちを横目に、私はとにかく最短期間で卒業がしたかった。親のお金で長距離旅行もしなかったし、それこそサンディエゴにいながら、ディズニーランドやサンディエゴ動物園すら行ったこともありませんでした。

お金は自分で稼げない分、使わないようにしようと思っていたからです。

大学卒業したとき、私は結婚していたので、生活費はすでに夫婦でまかなっていました。

私は24歳のときに親から完全な自立を果たしました。もちろんこれは胸を張れる数字だとは思っていません。もっと早くから自立している人はごまんといますから。

 

 

コミカレで勉強したという経験は、私の人生においておそらく最も大切な経験でした。

 

コミカレという場所をよく理解しない、特に行ったことのない外国人の親世代は、「コミカレはお金のない家の子どもが行く場所」だとか、「高校で勉強のできなかった子どもが行く場所」という誤解があるようですが、それは違います。

コミカレという場所がどんなところかを知っている外国人や、アメリカ人の親というのは、コミカレのシステムを上手に使うことを子どもに教えています。たとえば、高校在学中から大学単位をとるためにコミカレで授業をとらせたり、夏休みで里帰り中に地元のコミカレで授業をとらせたりしています。これは経済的にもスマートな選択肢です。

 

コミカレの素晴らしさや強さというのは、やはり自分でそこに通って勉強してみないとわからないものだし、今すぐには結果が出なくても、大学卒業、就職、というときに現れるものだったりします。

私はコミカレ→二流州立大というトラックだったわけですが、大学を卒業して新卒の初任給は$60,000でした。今日の為替レートだと650万円は超えていたわけです。

この初任給は当時の平均よりも$15,000上でした。

(自慢に聞こえたら嫌なのですが、現実的な数字を感じてもらうためにあえて書きます)

加えて、メディカル・デンタル・ビジョンの三大保険も完全カバーされ、401kは100%マッチング、残業なし、有給つき、フレックスタイム、自宅勤務OKという夢のような仕事を、コミカレ出身の二流州立大卒業生、それも留学生としてゲットしたわけです。

私はここでひけらかしたいわけではなく、こういう具体的な自分自身の経験から、アメリカは自分の実力と努力次第だということを伝えたいのと、自分の身一つ、アタマ一つで勝負できる人間のほうがよっぽど強いのだという説得力につながると思っています。

同時に、大学名という得体の知れないものの危うさや、それに翻弄される怖さも知ったのです。

 

 

 

うちの旦那が言うのは、「教育はROIを考えろ」ということ。

ROIReturn On Investmentの略で、投資に対するリターン率を計算したものです。

 

たとえば、1ドルを投資して1ドル50セント返ってくる投資先Aと、1ドルを投資して3ドル返ってくる投資先Bだったら、みなさんはどちらに投資するでしょうか?間違いなくBですよね。

 

じゃあAには「コカコーラ」という銘柄がついていて、Bは聞いたこともない零細企業だったら、どうでしょうか?

そこに「バイアス」というものが生まれ、頭では「Bだな」とわかっていても、「コカコーラなら、Aにしようかな・・・」と思い始めませんか?

そういうあなたはファイナンスや投資には向かないかも。笑

 

たとえAとBの銘柄を知ったとしても、「ROIで考えればBでしょ」と言える人が、Critical Thinkingをしている人。つまり、銘柄に対するバイアスという主観に惑わされず、目の前のデータをもとに冷静な判断を下せる人のことです。

 

 

・・・と、教育のROIに戻りますが、時間と学費という「投資」に対して、それがキャリアというどんな「リターン」につながるか。

 

つまり、

 

学費に$100,000かけて年収$50,000の仕事に就く

学費に$50,000かけて年収$50,000の仕事に就く

 

というのでは、どちらの選択肢がスマートか一目瞭然ですよね。

 

この学費$100,000と$50,000という差は、有名私立大 vs 州立大 の違いというところで出てくるわけで、結果的に同じ年収になるのなら、州立大に行け、という意味です。

 

ちょっと前に、MBAをとろうかと思っていた時期があったのですが、そこで地元3大学の学費を比較してみたことがあります。

ここサンディエゴ市内には3つの大学があって、それぞれのMBA価格はこの通り。

 

San Diego State University (SDSU) 州立大: $35,000

University of California San Diego (UCSD) 州立大: $80,000

University of San Diego (USD) 私立大: $100,000

 

どれも同じ二年間のプログラムですが、「どこの大学でとったMBAか」というだけで、これだけ違ってくるわけです。

そしてこの二年間と学費をかけても、年収アップ額が同じなのであれば、そりゃSDSUだよなぁと私は思うわけです。結局、MBAという選択肢自体が私の中でなくなりましたけど。

そんなわけで、この国での義務教育を終えた後、どんな道を選ぶのかとなったときに、ROIというのは一つの目安であり、経済的負担というものが現実のものになったとき、こうやって目をそらさずに考えることは大事だと思います。

 

 

また、アメリカではいくつになっても大学にいける、という現実を目撃した私は、18歳の若者にとって、大学進学だけが選択肢じゃないと思っているし、他にもっとやりたいことがあるなら、まずはそれをやってからでも遅くないんじゃない?と子どもには教えます。(その代わり、自分の尻拭いも自分でしなければなりません)

特に、起業がこれだけ簡単になった現代、会社に勤める人生を選ばない人がものすごく増えました。この傾向はこれからももっともっと増えるだろうし、ウチの子ども達が大人になる時代にはそういう社会構造が全く別のものになっているはず。

私自身、色々なことをやってみて、紆余曲折を経て、この年になって「またこれを勉強したい」と思えるようになったし、常識とか周りに流されずに、自分で決断して自分の手で作り上げる人生のほうがよっぽど価値があるなぁと思うのです。

 

 

まぁきっとこんな考え方を持っているのは少数派だと思いますが(笑)、少なくとも夫婦で同意できるのは何よりだなぁと思うし、周りがどうであれ、「ウチはこうです」とブレない方針を持つこと、そしてそれを子どもにまっすぐに教えることって大事だなと思うのです。

 

 

ということを書いていて、こんな記事を見つけました。

この芸人さんは私は知らないのですが、どうやら「頭の良い人」という印象があるみたいですね。

 

私たち夫婦の大学資金は貯金しないという方針は、彼と奥さんのお受験はしないという方針にとても共通しているところがあります。

彼の言っている「銅の剣」は英語ではEntitlementと言われますが、これについてもまた別の記事で書いてみたいと思います。

 

 

アメリカの大学資金と教育、みなさんはどう考えていますか?

 

 

 

 

“子どもの大学資金を貯金しない理由” への2件の返信

  1. 同感です!うちもほとんど貯金していません。アメリカは能力とやる気があればいろんな奨学金もらえますからね〜。しかも、奨学金に加え、修士号や博士号は学校でResearch AssistantやTeaching Assistantすれば生活費の足しになるぐらいもらえますし。私は今、コミカレに通ってます。コミカレのイメージ180パーセントかわりました。子供たちにもすすめてます。素晴らしいシステムですよね。私が昔卒業した日本の私立一流大学で教えてたの一部の教授やアメリカの他の州立大学の教授より教えるの上手な先生がそろってると感じてます。

  2. りょうこさん、こんにちは!
    働きながら大学に通うというのが当たり前になっているっていうのは良いですよね。誰にでもアクセスできます。

    りょうこさんは今、コミカレに通われてるんですね!
    私もあの空気が恋しくなることがあって、一クラスでも取りに行こうかな~・・・なんてよく思ってます。笑
    何より私たちのような外国人がコミカレというオープンドアなシステムをもっともっと使うべきですよね。
    4年制大学では1~2年次の数学の授業は現役学生のTAが教えていたりしますが、そんなに高い授業料を払って、学生に教わるの?って感じですよね。
    それなら博士号も持って長年の経験もあるコミカレ教授のほうがずっとクオリティが高いと思います。

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