転職か、残留か (1)

2 Comments

こんにちは、Erinaです。

 

日本人は誰もいないアメリカの銀行で働いてもうすぐ4年。日本人女性としての奮闘をフィクション風にして書いてみました。

今日から毎週木曜日に連載しようと思います。

 

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“They want to bring you in!”

 

月曜の朝から、電話の向こうでリクルーターの声は弾んでいる。

 

“Ah, okay.”

 

けれども、私はそれに応えられるだけのトーンでは返事はできない。

 

リクルーター:「先週金曜日の電話面接、うまく行ったみたいね。ハイヤリングマネジャーが、インハウス面接に来て欲しいって。」

 

私:「そうですか。それは良かった。」

 

リ:「あなたはどう思った?」

 

私:「えぇ、とても熱心な方で、銀行の歴史とか説明してくれて。コミュニティバンク(地元中小銀行)であることを誇りに思っているのを感じました。私も今の会社での勤務経験から、コミュニティバンクが肌に合うなって思うし、気に入りましたよ。」

 

リ:「そう!彼も同じようなことを言っていたわ。」

 

私:「そうですか。」

 

師走真っ只中、12月のある月曜の朝10時。

自分のオフィスを抜け出して、地下駐車場に停めた車の中で、リクルーターから先週の電話面接の報告をもらう。

 

リ:「次のステップとしては、向こうがインハウス面接をアレンジして、あなたに来てもらうようになると思う。数時間か半日くらいね。スケジュールはどう?」

 

私:「え~と、今週は忙しいです。ホリデー前だし。年が明けて3日ほど休みを取るので、その後が良いかな。1月中旬ですね。」

 

他人のペースで自分の人生を決めたくないという頑固な性格は、自分でもたまに面倒くさい。

でも、この時間は自分の中でプロセスするのには必要なのだ、と言い聞かせる。

 

リ:「わかったわ。その旨を伝えます。どうせ今の時期は人を集めるのが大変でしょうから、問題ないと思う。」

 

私:「そうですね。じゃあ詳細が入ったら教えてください。」

 

リ:「えぇ、そうするわ。」

 

手短に電話を切ると、オフィスに戻る。

転職によるキャリアアップを思うとワクワクするけれど、こうやってコソコソと裏で話を進めるっていうのは、キツイ。

ワクワクと後ろめたさが混在しているここ一ヶ月。

 

転職プロセスってこういう辛さがあったのか・・・・知らなかったな。

 

「面接に来て欲しいって。」

 

家に帰って、早速、旦那に報告する。

 

旦那:「やったじゃん!もうこっちのものだから、リラ~ックス。」

 

私:「でもさ、こうやって裏で進めるって嫌なものだね。バーバラ(私のボス)が、何か知ってるんじゃないかって常に感じるんだけど。」

 

旦:「気のせいだよ!知ってるわけないじゃん。」

 

私:「たぶん気のせいなんだろうけど、自分にやましいことがあると、人間ってそう感じるものなんだよ。」

 

旦:「全然やましいことじゃないよ。転職はキャリアアップする上で当たり前。」

 

私:「そうなんだけどさ・・・・。」

 

先月、急に転職のお誘いメールが2通やってきた。両方、LinkedInで私のプロファイルを見てコンタクトしてきたらしい。

一人はA社に委託されたサードパーティ(外部)のリクルーター。もう一人はB社のインターナルHR(社内人事部)の担当者だった。

外部リクルーターについては、この一年間に良くない印象が何度もあったので、あまり乗り気ではなかった。

今回のリクルーターも想像通り、こちらの仕事中に電話くれとリクエストしてきたり、「電話面接でこういうことを言え」みたいなマニュアルを送ってきたりして、ちょっとウンザリしていた。そもそもリクルーターというのは、雇用が決まってナンボのコミッションベースだから、こっちがどういう人間かなんて知ったこっちゃない。

そんな折に、直接ハイヤリングマネジャーと電話面接をしたところ、ぜひ次の段階であるインハウス面接をやりましょうと言ってくれたのだ。

 

B社のHR担当者は、メールでやりとりをした後、彼のオフィスに出向いてすでに1 on 1ミーティングもした。

事業拡大に伴って、2015年は100名雇用の予定だとか、どの部門はどんなことをしているとか、私の将来的な希望とかを事細かく聞いてくれて、そのためにはどんなポジションが向いているなどの相談にも乗ってくれた。現時点で、私がフィットしそうなポジションが複数あるので、各マネジャーたちにプレゼンすると背中を押してくれた。

 

そんなわけで、2社からの転職チャンスの間に揺れ、現在の職場へのやましい気持ちと戦うこと1ヶ月が過ぎたところにホリデーシーズン。せっかくの休みも、こんな気持ちで過ごすことになるとは思ってもみなかった。

 

旦那:「HRのプロセスなんてスローだし、年末で誰もいないから、1月まで何も起こらないって。リラックスしなよ。」

超がつく楽観的なうちの旦那に、こういう非生産的な不安は通用しない。

 

頭ではわかっていても、気持ちがついていかないとはこういうことだ。

この3年間、現在の職場は私にとても良くしてくれた。1年半の産後+育児休暇後、フルタイム職に復帰できるかどうか不安に思っていた私を雇ってくれたのは、他でもないバーバラだった。

この職場でまだやれることがあるような、頭打ちなような、宙ぶらりんな感覚を持ちながら約半年。そんなところへのリクルーターたちからの連絡にはやはり戸惑わずにはいられない。

 

私:「彼女に2 Weeks Notice(2週間前に提出する離職願い)を出す日は、私の人生で最悪の一日になると思うと、辛い。」

 

旦那:「考えすぎだって~!まだ決まってないんだし!!(笑)」

 

またも笑い飛ばされる。

あ~、ダメだ、ダメだ。この楽観主義者には通用しないんだわ。不安になるのがバカバカしい・・・。

 

そう思った私は視点を変えて、「今、転職するべき理由」を考えてみた。

バーバラへの義理とか恩情なんて持ってても、キャリアアップはできない。もっとシビアに考えないと、出世なんてできない。色々な気持ちをぐっとこらえる。

 

確かに転職するべき理由なんて挙げればたくさんある。それを今まで見ないフリしてきたのも事実だ。

だけど、もう考えたくなかった。考えるべきでもなかった。

 

「なるようになる。」

 

深呼吸しかできなかった。

 

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About Erina

こんにちは、Erinaです。 日本で一浪した後、2002年に留学生として渡米しました。ESLとコミュニティカレッジを経て、4年制大学に編入。高校時代は大嫌いだった数学が大学で大好きになり、応用数学専攻で卒業。金融アナリストインターン、IT企業でデータアナリスト、銀行で不動産アナリストを経て、現在、キャリアチェンジの真っ最中。アメリカの高校で数学教師になるために、2016年夏に脱サラ。久しぶりの勉強と主婦業に専念しています。二人の小学生のママです。趣味は読書・ヨガ・テニス・ゴルフ・DIY・庭仕事で、最近の一番の楽しみは子育てです。 アメリカに住む日本人女性を応援したくてこのブログを始めました。

2 Responses to “転職か、残留か (1)”

  1. avatar

    ちかちゃん

    麻里子が帰ってきたのでコメントを送れるようにしてもらいました。うまくいくかな。転職に対するいろいろなきもち、すまないとか、そういう感じがとても日本的って思いました。で、どういう結論にしたのかな。今までも自分の考えですすんできて、間違いがなかったのだから、自分にとっての一番を考えたら、それでいい。自分を信じて頑張って!

  2. avatar

    Erina

    ちかちゃんさん、コメントありがとう。
    コメントを書き込むのは難しかったですか?

    これからどうなるか、毎週木曜日にドキドキしながら見に来てね。東京ラブストーリーみたいに。(あれは月9でしたか?)

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