真の学び場 “Junior Achievement”(ジュニア・アチーブメント)
こんにちは、Erinaです。
先日、Junior Achievement(ジュニア・アチーブメント)というNPO(非営利団体)でボランティアをしてきました。この団体のミッションは、K-12(年長から高校までの義務教育を指します)の子供たちに、リアルなビジネスを教え、仕事をするということと、起業精神を教えること。
今回、私が参加したプログラムは、”BizTown”(ビズタウン)と呼ばれ、地元の小学5~6年生が対象のものです。
このプログラムの説明として、「ライフサイズの”BizTown”で子供たちはそれぞれ、様々な仕事に就き、その業務やお金の流れを学びます。ボランティアはそれをお手伝いします。」とのこと。
私はてっきり、どこかのオフィスで、PCの前に座った(たぶん10人くらいの)子供たちがバーチャルな世界でビジネスを学ぶもので、一度のボランティアも3~4人くらいなんじゃないの?と思ってました。
そしたら、全然違ったんです!
今回は、このプログラムの驚きの内容と、Junior Achievementのコミュニティへの貢献について紹介します。
まず朝、このJunior Achievementに到着すると、建物を見てビックリしました。大きい!!これ全部そうなの?
そこは中サイズの病院くらいの建物で、想像していた「どこかのオフィスビルディング」とは全く違います。
広いロビーに入ると、すでに10人以上のボランティアがトレーニングのため待機。平均年齢は30~40代で、男女の割合は半々。私が待っている間にも続々と人が入って来て、全部で30人くらいになりました。
ロビーにあるテレビモニターの一つで、このプログラムの紹介ビデオを見たところで、すでに私は感動して泣きそうに。笑
窓もない分厚いドア4枚の向こう側が、その”BizTown”になっているらしい。
さぁ、入りますよ~と入ると、そこは驚きの場所でした。
イメージとしてはインドアのモール。またはラスべガスのNew York New York。笑
そこには完全に一つの「町」ができていました。
それだけリアルに感じさせるのには理由があります。実はこの町は全て、各企業からの寄付で作られています。サンディエゴでは知らない人はいない会社ばかりです。
- US Bank(銀行)
- Mission Federal Credit Union(クレジットユニオン)
- Kaiser Parmanente(病院)
- Procopio(法律事務所)
- NBC San Diego(テレビ局)
- Channel 93.3(ラジオ局)
- Jack in the Box(ファストフード)
- Best Buy(電化製品店)
- UPS(宅配)
- State Farm Insurance(保険)
- ACG Construction(建設)
- Cox Cable(ケーブル会社)
- SDG&E(電気会社)
- EDCO(ゴミ・リサイクル)
- San Diego Foundation(非営利団体)
- Union Tribune(新聞)
- Scripps Institute of Oceanography(海洋学リサーチ研究所)
- Sun Diego(アパレル)
- Seaworld(シーワールド)
- San Diego International Airport(空港)
- San Diego City & County Administration Hall(市役所&郡役所)
などなど。まだあったけど覚えてないや。
これらの企業は、全て寄付として自分たちの会社で使う機材や家具などを持ち込み、子供たちがここで実際に使いながらビジネスについて学べるようになっています。
なので、看板から店の中から、全て「本物」。
テレビ局のスタジオは、壁は全てガラス張り。中にはカメラが二台設置されており、それぞれの「店」にあるモニターで映像が流されるようになっています。
Jack in the Boxでは椅子もテーブルも全て店舗と同じもので、ドライブスルーの窓やレジ、冷蔵庫が設置されていて、これは大人でもワクワクするわ!!!と、ディズニーランド並みにハイテンションになってしまったのは言うまでもありません。笑
一時間のボランティアトレーニングを聞いた後は、役割の内容を半分わかって半分わかってないような感じでしたが、「それでいいんです!」というスタッフの言葉だけを頼りに、子供たちが現れるのを待ちます。私はState Farmで保険会社の担当になりました。
30分後、扉の外のロビーで子供たちのかけ声が聞こえると、ぞろぞろと子供たちが入ってきました。市役所前の広場に集まり座ったのは、約100人の地元の小学6年生。みんな、私と同じリアクションで、ドキドキワクワクを隠せず、周りをキョロキョロ見渡しています。
スタッフが短い説明をすると、子供たちに、各自の「チェックブック」(小切手冊子)が渡されて、すでに配属が決まっているビジネスにそれぞれが向かいます。
私のところにやってきたのは、ローラという女の子。どうやら人数不足らしく、彼女は単独CEO兼CFO兼保険エージェント。私もよくわからないから、一緒にがんばろうね!と挨拶をして、最初のステップをチェックします。
ビジネスを始めるには、まずはローンを組まなければなりません。ここから始まる時点でリアリスティック。
子供たちは、事前に学校で準備をしてきたらしく、配属だけでなく役職、必要なローン額なども全て自分のノートに書き込んでいます。それをまず、パソコンに打ち込みます。そして、必要経費のbills(請求書)を支払うために、チェックをプリントアウトし、それにサインをする。
そのチェックの一つを持って、最初に向かう先は、Best Buy。サプライを買いに行きます。
それぞれの会社ごとに必要なものはあの黄色いかごに入れられ、中にはユニフォームやら、使う書類やらが入っています。
ユニフォームも本物と同じデザインで、SDG&Eのロゴが入ったハードヘッドヘルメットとか、銀行員のベストとかが子供サイズになっているんです。もう感心。ローラもベストを着て、仕事しました。
一つの会社の中でも社員のシフトがあって、町の真ん中に大きな信号機があり、その時間のシフトを色で分けています。赤・黄・緑と、首からかけた名札の色で分けられます。
休憩中は、買い物をしたり、銀行に給料を振り込みに行ったりします。
キャッシュはもちろんフェイクですが、これを使って買ったものは、実際に持ち帰ったり食べたりしてオーケー。
- Jack in the boxではソーダとポップコーン、ジャックボール
- Best Buyでは、野球カード、ゲーム3分間
- Sea Worldでは、シャムーと写真撮影
- Sun Diegoでは、バッグや帽子
- UPSではキャンディやオフィスグッズ
が売られていて、これもそれぞれの企業からの寄付でまかなわれています。この徹底ぶりはすごい!
他にも、
- サンディエゴ空港ではシミュレーションフライトになっていて、モニターの映像にあわせてシートが動いたり
- 建設会社では、実際にパワーツールを使ってベンチを作ったり
- NBCではCMのインタビューしたり
・・・・・・と、超本格的。
うちのローラちゃんは、1人3役をやりこなし、実際にチェックを集め、それをパソコンに打ち込み、銀行に持って行くところもやりました。私はそのお手伝い。彼女の担任が立ち寄った時に、「彼女は賢い子だから」と言っていたけど、うん、わかるな~。
そんなわけで、ローンを完済した上に、それ以上の利益を上げた彼女は、自分のことをシャイだと言っていたけど、とても嬉しそうで、最後に全員が正面に集まった時も私に笑顔を向けてくれました。あ~、ここで私も泣きそう。笑
実は彼女は去年もこのプログラムに参加したそうで、そのときはラジオ局でDJを担当したそう。その時は数人のDJで音楽を選んだりして、楽しかったけどそれほどチャレンジングじゃなかったらしい。今回の役職では、どうやってお金が回るのかを最初から最後まで自分で見られてすごくよかったと言っていました。がんばったね!
ボランティアに来ている人は、銀行が半分、リタイヤした人が数人、その他ビジネスオーナーとか高校の先生も来ていました。年齢も、SDSUの学生から80代のご夫婦まで様々。
面白かったのは、この80代のご夫婦(きっとビジネスで成功して、リタイヤされたご夫婦なんだと思いますが)で、担当はSea World。
シャムーと記念撮影できるここの設備は、パソコンやデジカメがびし~っと揃っているブース。「私たちにわかるかしら?」と心配されていましたが、「きっと子供たちのほうが知ってるから大丈夫ね!」な~んて笑っていました。
他にも、建設会社の担当になった若い男性はパワードリルを使った経験もなかったのですが、お隣のBest Buy担当の男性たち(おそらくパパさん)が、ちょっとしたアドバイスをしたりして、子供たちを見守るそのまなざしは、完全に父親になっていました。
こうやって分け隔てなく色んな人が同じことをできるというのは素晴らしいと思うし、大人も初めての体験ばかりなので、「こっちが教えてやるぞ!」という威厳がないからこそ、「一緒に学ぶ」ということが実現しているのだと思います。なんだか、大人が教えられた結果になりました。
そして、子供たちの才能や向き・不向きが、「教室」という場所に限定しないで現れることを実感した一日でもありました。
実際に勉強ができるかどうかはわからないけど、パワーツールを持たせたらものすごい集中力を見せた男の子や、テレビ局カメラの前で上手にお話ができる女の子、率先してファストフードのテーブルの下を掃除できる子供たちなど、そういう子供たちの良さを大人が新発見できる場所なんです。
社会に出てみると、こういう人を企業は雇いたいと思うわけですよね。
最後に市役所前に集まると、子供たちの反応や意見はさまざまでしたが、中でも「働くということは大変だと思った」とか、「親に感謝したい」と思えた子供がとても多かったようで、先生たちもこれを聞けて嬉しそうでした。
そんなわけで、ものすごく楽しみにしていた今回のボランティアは期待以上の体験で、本当に人生の中で記憶に残る日の一つでした。ぜひぜひまた行こうと思います。
Junior Achievementはアメリカ国内だけでなく、世界中にある団体ですので、地元のオフィスをチェックしてみてください。