脱サラ母の数学教師への道 (8) 先生のアシスタント開始

こんにちは、Erinaです。

 

前回の記事で、学生復帰して1ヶ月の様子を書きましたが、その続きです。

 

先週から、実際に高校のクラスルームで先生のアシスタントをし始めました。

これは、”Fieldwork Tutoring” という授業の一環で、日本でいう教育実習をする前に、実際の教室でメインの先生のアシスタントや、問題がわからない学生たちのヘルプをする役割です。

 

日本の学校との大きな違いに、“Classroom Aid”(クラスルームエイド) という存在があります。

日本では、教室にいる大人は「先生」の一人ですが、様々な子供がやってくるアメリカの公立学校では、そのサポートをするために、補助のスタッフが入ることが頻繁にあります。

たとえば、移民学生の多いクラスでは、その母国語を話すスタッフが入り、先生の授業を学生の横に座って通訳したり、練習問題を手伝ったりするのです。

または、Physical Disability(身体的なディスアドバンテージ)を持つ学生のために、ノートをとったり、マンツーマン指導をするスタッフもいます。

そのような例外のない、英語で授業をするクラスルームを、「メインストリーム(主流)」と呼びますが、様々なバックグラウンドを持つ学生を、なるべくメインストリームクラスに入れるために、このようなサポートが行われているわけです。

 

そんなわけで、メインの先生以外にも、2〜3人の大人が授業に参加することが珍しくないアメリカのクラスルーム。

そこに行って、アシスタントをして来い!というのが、今学期の私の授業なわけです。

 

そしてそれには条件が一つ。

 

「ダイバーシティのあるクラスルームであること」

 

つまり、英語がネイティブの白人アメリカ人ばかりの学校ではなく、移民や難民、マイノリティの多い学校であることが条件だったのです。

 

実を言うと、私はそういう学校で働きたいと思っています。

自分のコミカレ時代の経験から、「アメリカのメルティングポット(人種のるつぼ)」こそがこの国の素晴らしさだと思っているし、難民や移民一世のように、母国とのバランスをとりながら新しい国で人生を築く、ということを学生達に教えたいからです。

 

私はとある学校で働いている先生にコンタクトをとりました。

ビルマ(ミャンマー)の少数民族カレン族の難民支援NPOのナオさんや、この記事でも書いた日本人ソーシャルワーカーFさんが働いていたオフィスから、目と鼻の先にある学校です。

ここは、世界各国からの難民が多く住むエリアでもありながら、白人や、日系・中国系・韓国系などのある程度裕福なアジア人は行きたがらないエリアでもあります。

これもまた別の記事で書こうと思いますが、アメリカ社会に存在する経済的格差は、人種がかなり直接的に関わっている部分も多くあり、この国の暗黙の了解として根強くはびこっている問題でもあるのです。

 

しかしながら、私は学生時代からこのエリアに出入りすることが多く、東南アジア系の学生達とテニスをしたり、お家に呼ばれて家族の団らんにお邪魔したり(笑)、アジア系スーパーに行ったり、「あぁ、こういうところ、肌に合うなぁ・・・」と感じていたのです。

なので今回、この学校で素晴らしい数学教師達に出会い、彼らのアシスタントをできることになり、発見とともに、学生時代に持っていた色々な気持ちがまた目覚めてきたところ。

 

 

そもそも、私が通っていたコミカレは、サンディエゴダウンタウンにある San Diego City College(サンディエゴシティカレッジ)で、サンディエゴで一番古いコミカレ。100年以上の歴史を持ちます。白人人口は全体のおそらく1/4ほどで、メキシコ系、アフリカ系、東南アジア系移民が均一に集まった学校です。

 

そんな学校で留学初期を経験した私は、やはり「マジョリティが白人」というアメリカ社会よりも、「こういうダイバーシティ(多様性)こそがアメリカだ!」と思うようになったのです。

そんな中で、英語もままならないのに、数学や化学や経済学や音楽史の勉強をしているうちに、「英語」がハンディキャップにならない、というか、ハンディキャップにさせない、という気持ちが生まれたし、目の前にあるチャンスをつかんで全力を尽くす、ということを当たり前のようにできるようになったのです。

 

だから、先週から、渡米して一年未満の9年生(日本の中3)の数学のクラスに行き始めて、学生達の「学びたい!」という熱意に私は自分がまたシティカレッジの教室に座っているかのような気分になりました。

英語で、”left or right”(左右)がこんがらがりながらも、”X-axis!”(X軸)とか “Y-axis!”(Y軸)と先生の質問に答えている学生達の目は、純粋にキラキラしていて、間違えることを恐れないひたむきさと、謙虚さで溢れていました。

「スペイン語で『割る』って何ていうんだっけ?」とか、「正の数は “positivo”で、負の数は”negativo”・・・」なんて学生達から教わっているうちに、外国語で新しいことを学ぶ大変さと面白さを思い出しました。

どこから来たとか、自分は何者なのかとか、何を持ってて、何を持っていないなんて、関係ない。今、目の前にある「新しいこと」とどう向き合うか、という強い意志がそこにはありました。

「そうだよな、教育ってこうだよな」と、人間の本質を教えてもらった気分です。

大学入試とか、成績とか、親からのプレッシャーとか、周りからのプレッシャーからとか、「何のために学校に行くのか?」を見失いがちなクラスルームがアメリカじゅうに溢れる中で、こうやって純粋に「数学」という学問に反応する学生たちと働くのは、きっととてもエキサイティングなんだろうな、と思いながら、先生達の声に耳を傾けました。

 

 

このクラスはソマリア、メキシコ、東南アジア諸国の学生達が均一に大多数を占めています。

その中でも、私の目を引いたのは、やはりアジア系の女子学生でした。

ソマリアからの男子学生達が、間違いも恐れずに堂々と発言する中で、おとなしくそれを聞き、質問があっても手を挙げずに待っているアジア系の女子学生たち。やはり彼女達が育ってきた環境や文化がそうさせ、それを壊すのは長い時間と勇気が必要になるわけです。

 

その光景を見ていて、いくら素晴らしい先生たちであっても、クラスルームにいる全ての学生に届くことはできないのだな、と思ったし、こうやって見落とされがちなアジア系女子学生に届くことができるのは、私の仕事かも、と確信したのです。

私はどこに行ってもマイノリティで、ネイティブスピーカーの英語にはならないけれど、だからこそ、届く場所があるのかも、ということに気づき始めています。

 

「ここにいる35人の難民学生達が、アメリカで大学教育を受け、仕事を手につけ、プロフェッショナルになった時、すごいことが起こるだろうな」と感じました。

この国を支えているのは、白人だけじゃないんだぞ、と今日のアメリカに見せてやりたいな、とも。

 

頑張れ、と応援したくなるのとともに、自分にできることも新しく発見し、気合いを入れ直したアシスタント一週目なのでした。

 

 

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“脱サラ母の数学教師への道 (8) 先生のアシスタント開始” への4件の返信

  1. X軸、Y軸。。。うー、もう記憶のはるかかなたにある言葉だわ。しかも英語でやるなんてすごい!アジア系女子はやっぱり静かですね。こっちで生まれ育った子でも割とreserveな感じだから、去年アメリカに来た、みたいな人は他国の子の勢いに圧倒されちゃうでしょうね。Erinaさんがサポートしてあげれば、きっと感謝されますよ。頑張って下さい!いつも楽しみに読んでます。

  2. 初めまして。
    アメリカで暮らして2ヶ月と少しの8歳の双子の男の子の母です。
    「あなた達の国におじゃましている身ではありますが、あなた達の国はこうしてたくさんの”おじゃまします”の人達によってできた国なんですよ。」と偏見や差別を垣間見せる人に対して心の中で語りかけます…。
    Erinaさんのような人がいると思うと、すごく心強いし、もっと自分に自信が持てます。
    ありがとうございます????。

  3. KYさん、こんにちは!いつもありがとうございます。
    私たちがそうであったように、やはりアメリカでやっていくには単純に言語力だけではなく、自己表現とか発言するというコミュニケーションも学んでいかなければなりませんね。私も個人的にその壁を越えるには、こちらの立場をわかってくれる人々のヘルプがありました。
    だから、私もそのお手伝いをできたら良いなと思います。

  4. yyさん、初めまして。
    コメントいただき、ありがとうございます。
    そうなんですよね、別の授業ではその部分がメインテーマなのですが、アメリカで教師であることって、単純に科目を教えれば良いだけではありません。
    この国の歴史もそうだし、外国からやってくる移民についての理解などの教育がものすごく大部分を占めます。
    だから外国人の私が、この国で教師になることにも意味があるんじゃないかと思っているところです。
    また遊びに来てください。

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