100点を取れる子と取れない子の違い
こんにちは、Erinaです。
先日、新学年が始まって最初の単元テストがあったらしく、うちの子供達がそれぞれに受けた算数のテストを持ち帰ってきました。
2年生の娘は3桁(100の位)の数字とその概念、4年生の息子は3桁x1桁までのかけ算を習ったようでした。
娘のテストは100点。
それから数日後に息子が持ってきたテストは80点。
息子には、「あれ?どうしたの?」とその場で正直な意見は言わず、「ちょっと目を通しておくね」と言って預かっておきました。
子供達が寝た後に、息子のテストに目を通してみました。
大学で数学を教えている旦那は、80点という点数に、”Not too bad…”と言うものの、”Not too good either.”と断言する私。
問題と息子の答えを分析してみると、あることに気づきました。
「これじゃ100点は取れないよね・・・」
旦那にもじっくり目を通してもらうと、「確かに。」と意見一致。
息子のミステイクは、100点を取る娘だったらおそらくしないミステイクばかりで、ここで、息子と娘の根本的な違いがくっきりと現れることになったのです。
その違いとは・・・
ズバリ、「読書量」。
そう、読書です。
本が大好きな娘に比べて、最近ではそれほど熱心に読書をしなくなった息子。
彼らの読書量の差は、ここ1〜2年で広がってきていて、その結果がこうやって算数のテストに現れることになったのです。この記事でも書きましたが、国語と算数というのはコインの裏表のようなもので、一方を無視してもう一方をマスターすることはできないと思っています。
息子のテストを見てみると、3桁x1桁のかけ算の計算はできている。むしろ正確でパパっとできたんだろうな、と思うくらい。
かけ算のコンセプトも理解しているし、結果として何が得られるかもわかっている。
じゃあ、そのマイナス20点はどこから来たのか?と言うと、「問題を読み取る力」だったのです。
たとえば、こんな問題。
Use the table for following questions.
Price for Roses
Rose | Regular Price | Price for 3 or more | Rose | Regular Price | Price for 3 or more |
Amsterdam | $17 | $14 | Amber Star | $16 | $13 |
Coretta Scott King | $25 | $22 | America | $19 | $16 |
Eden | $18 | $15 | Cinderella | $15 | $12 |
#1 What is the cost of 3 Amsterdam roses? Show your work.
#2 Mr. Rivera buys 5 Eden roses and 2 Coretta Scott King roses. What is the cost of the roses? Show your work.
とあります。
正解は、
#1 $14 x 3 = $42
#2 Eden: $15 x 5 = $75, Coretta: $25 x 2 = $50, Eden+Coretta = $75 + $50 = $125
となります。
できました?
ここでコモンコア算数の特徴を解説してみましょう。
①情報が煩雑
この問題の表を見て、「おぉ・・・」と思った方も多いはずです。
まず、情報が煩雑です。
たとえば、バラの種類の名前。Amsterdam, Coretta Scott King, Eden, Amber Star…. なんて、「うちの子はネイティブじゃないから、わからないかも・・・」なんて思う方もいるかもしれませんが、こんなのネイティブの大人でも知りません。
うちの息子に、「こんなバラの名前知らないよね?」と聞いたら、「知らないよ。作り物の名前じゃないの?」という反応。笑
実家が花屋さんじゃない限り、バラの種類をこれだけ把握している4年生はほとんどいないでしょう。
じゃあ、どうしてこういう問題を作るのか?
それは「あえて」そうしているのです。
知らない難しい名前に惑わされずに、データを的確に読み取れる、ということが要求されているからです。
これは大学入試のスタンダードテスト、SATやACTでも見られる傾向で、数学や理科系のテスト中に、わざわざ複雑で読み取りにくい、聞いたこともない固有名詞が使われています。
そして、この表の特徴はもう一つあるのですが、気づきましたか?
そう、”Regular Price”(通常価格)と”Price for 3 or more”(3本以上購入の価格)の2つの価格設定があること。
#1でのAmsterdam rosesと、#2でのEden rosesは、それぞれ3本以上の価格を使わなければなりません。息子はこれで#1をミスしていました。
う〜ん、難しいですね、これ。
この価格設定の存在に気づくかどうか、というのは、算数というよりも、「生活経験値」が大きく影響します。
つまり、親と買い物に行って、このような変動する価格設定があることを知っている子はこの問題で有利になるし、そうじゃない子は、「どういうこと?」と思うでしょう。
読書を多くする子が有利なのも、こういう生活に密着した情報をどこかで読んできた可能性があるし、そうでなくても、「そうか、こういう値段もあるんだな」と新しい情報として取り入れるアタマができている。
②最終的な問題は何か?
で、これだけ煩雑な情報を読み取った上で、最後に何をしなきゃいけないか?というところまできっちりと把握しなければならないのがコモンコアの特徴。
#1では、1種類の価格だけで良かったのですが、#2の問題では、2種類のバラの価格を、最終的に足さなければなりません。
100点を取れる子供というのは、コモンコア特有の煩雑な情報と長い問題文をくぐり抜け、最終的に何を求められているか?というゴールが見えているんですね。
つまり、「問題文を最後まで頭に入れている」ということ。
うちの息子はこの最後の足し算をし忘れたようですが、その場面が目に浮かびます。
「よし!これとこれのかけ算だな!」とそれぞれを計算して、そこで終わり。せっかち、と言えば聞こえは良いけれど(良いかな?)、まぁ中途半端なわけですね。
こうやって総合した情報を隅から隅まで取り入れ、自分なりに理解できることを、“Comprehensive input”と言います。これは、数学や算数だけでなく、言語習得においても必要な考えで、インプットしたものを、その場で自分のものにできるかどうか、という能力です。
逆に、“Comprehensive output”というのは、理論的に、そして総合的にアウトプットできること。算数の場合、かけ算の意味がわかっていて、何と何をかけたら何になる、という理解をしているという能力ですね。息子の場合は、こちらは備わっているようですが、やはり読書量が足りないせいか、インプットの方が弱いようです。
以上のようなことが身についているかどうかを、「リテラシー (literacy)」と言います。
リテラシーは日本語では「識字率」という言葉に訳されて、単純に、単語の意味がわかって文章が読める(発音できる)、という意味で使われていますが、リテラシーの本来の意味というのは、文章(書かれた言葉)を読み取って、そこにある他人の意図や意見、思考などを理解する、というところまで含んでいます。
算数だけじゃなく、アメリカのテストというのはそういう要素が含まれていて、技術的なもの(かけ算とかわり算とか)ができるだけでは、80〜90パーセントしか取れないようになっているのです。
コンスタントに100点取れる子供というのは、やはり本来の意味でのリテラシーのレベルが高く、聞かれていることを100パーセント以上に理解できる。
コンスタントに80〜90点という子供は、技術的なことはできるのだけど、そこにある書き手や問題作成者の意図を読み取ることができない。
そしてこの違いはどこから来るかというと、日々の読書量からなのです。
読書には本当にたくさんのベネフィットがあるのだな、とこの二人のテストを見て気づきました。
それは、ボキャブラリーが増えるとか、表現が増えるということだけでなく、文章に書かれていない意図や、書かれているディテールまで読み取ることができるかどうか、そして自分の持っている知識をそこに応用することができるか、というところまで「読書」というのはカバーしてくれるのです。
「100点を取るっていうのは難しいことだ」と私は思っているのですが、それはこういう包括的な理解力が身についているかどうか、という意味なのです。
さぁ、我が家も息子くんの読書にテコ入れする時期のようです。
読書に関する他の記事はこちらで読めます。
こんにちは。今2年生の男の子の母親です。とても参考になる内容でした!!有難うございます!!うちの子はFictionを読む際に本の中に感情移入(想像)が難しいようで、どのようにしたら楽しく、深く理解して本を読み、アウトプットできるようになるのか親として考える日々です。Erinaさんはこのあと、どのように息子さんの読書をてこ入れされたのですか?良かったら教えて下さい。
MOさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この後ですが、息子の先生にどんな本が彼に適しているか相談しました。息子はハリーポッターみたいなファンタジー系は読まないので、それを考慮した本は何かと聞いてみると、オススメを教えてくれました。
そこから少しずつフィクションも読み始めましたね。
やはりキーは、子供が興味を持てる本探しのようです。
有難うございます。なるほど!!興味の持てる本探し、私も早速してみます。アドバイス有難うございます。
Erinaさま。とても素晴らしい内容です、心から感謝いたします。
今日14歳になる息子、一人っ子がおります。仕事をする私は忙しく、ほとんど1人で日中を過ごしていますから、会話はしませんし、PCでのゲームを無言でしていることが多い状態です。
ご指摘のようにセミリンガルになっています。本を読む集中力はありません。強制しても、なかなか終わらず、オーディオブックなら読み終えるということが多いです。
私も一緒にいろんなことを勉強しながら会話して知恵や言葉を増やしたいです。常に自分の勉強力の不足にコンプレックスを抱えています。英語は話せても内容が薄いし冗談も言えない。アメリカのコメディーが笑えない。数学も好きでしたが、読解力が乏しく、文章問題で諦めておりました。
とにかく読書を親子で楽しめることが今の最大の課題です。全く解決法が見つけられていませんが^_^。
ジョーイさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。お返事が遅くなって申し訳ありません。
読書をしない、または読書嫌いな子の多くは、読書自体に嫌な経験があるか、または良い経験をしたことがないと感じます。
前者の場合、読みたくないものを強制させられたり、特にバイリンガルの子は音読で恥ずかしい思いをしたことがある子も多いです。後者の場合は単純に読みたいと思える本に出会っていないことが多いです。
ジョーイさんの息子さんが読書においてどんな経験をしたかわからないのですが、漫画でもカタログでも雑誌でも、何か活字から学ぶという経験があると良いですね。
うちも子供二人の興味は全く異なり、息子は説明書とかカタログとか読むのはまったく苦にならないようで、情報を仕入れるという意味で、それもいいかなと思っています。息子さんは14歳ということですから、将来や進路に繋がる興味ある分野の文章に触れさせてみるのはどうでしょうか?