アメリカの国語、日本の国語 (2)
こんにちは、Erinaです。
前回、日本とアメリカにおける、国語教育の違いについてこの記事で書きました。
その違いは、Critical Thinking が含まれているかどうかですよ、と書きましたが、今日は具体的にどんな違いがあるのか、実際の日米の国語の問題を見ながら考えてみます。
まずは日本の国語の教科書を思い出してみます。
小中学では、新学年一発めの題材は、たいてい「詩」で、春がテーマだったり、新しい世界みたいなものがテーマです。
その後、説明文だったり、物語を履修して、夏休み明けに戦争題材と呼ばれる、太平洋戦争の物語をやります。覚えてますか?
カムチャッカの若者の詩
ごんぎつね
宮沢賢治
ヘルマン・ヘッセ
・・・・懐かしいでしょ?
それらを読み、テストの質問に答えるわけですが、設問はというと、こんな感じ。
「○○とありますが、それはなぜですか?」
「主人公の気持ちを表した部分を、10文字で書きぬきなさい」
「xxxはどこに書いてありますか。最初と最後の5文字を書きなさい」
つまり、
答えはすべて本文中に書いてあり、正解は一つしかない。
だから、現在の日本の国語教育では、「正解を文中から探す」という勉強になっているわけです。
まぁそれは読解という意味では正統派なのですが、やはりその次のステップである Critical Thinking には届きませんし、これだと、用語やキーワードを覚える科目の理科や社会となんら変わりません。
そんなわけで、アメリカの国語を見てみます。
アメリカでは、日本のような一人に一冊与えられて家に持ち帰る教科書がありません。学校によっては教室内でテキストブックを使っているようですが、使い回し式なので、子供の所有物にはならないのです。
つまり、親にとっては、「子供が国語の授業で何を読んでいるのかさっぱりわからん」なわけです。
これは確かに、日本人の親として頭を抱える部分でもあります。日本では、家で教科書を朗読練習というのが宿題だったので、親も何をやっているのかわかる。
しかし、アメリカではそのような宿題はありません。
なので、アメリカに住む日本人の親が、「国語って何をやらせたら良いの?」と思うのは必至です。
私は2002年にアメリカに留学生としてやってきて以来、色々な「英語のテスト」を受けてきました。TOEFL だったり、最近では CBEST だったり、学生たちに SAT/ACT も教えているし、まぁとにかく色々な「英語のテスト」の勉強をしたり、実際に受けてきたわけです。
それを通して感じたことは、全部一緒。
加えて最近では、うちの子供達(現在1年生と3年生)の国語を見ていても、「なんだ、全部一緒じゃん」と思いました。
もちろん、文章の内容やボキャブラリのレベルは年齢相応で違えども、「やらなきゃいけないこと」というのは、キンダーから大学院のテスト、ひいてはアメリカの会社で働く英語力まで共通しているのです。
それは、「全体を見る」ということ。
日本の国語の問題は、どちらかというと「木を見て森を見ず」で、ディテールや心の動きなどをつかむという意味では有効な作業ではあるのですが、やはり全体像をつかむ、という訓練はされないわけです。
ごんぎつねや宮沢賢治を最初から最後まで読み通して、先生に「はい、じゃあこれはどんな物語だったでしょう?」と質問されたことはあるでしょうか?たぶんないはずです。
それとは異なり、アメリカの読解とは、
文章を最後まで読みきった時に、全体として何を言っているのか理解できること
プラス
それを自分の言葉でまとめること
までが一括りなので、「正解となるキーワードを本文中から探す」という質問で完結しません。
では、どんな問題が聞かれるのか、ちょっと見てみましょう。
これは、とある6年生の問題集にあった設問。
The Adventures of Tom Sawyer(トム・ソーヤの大冒険)の一節を読んで、質問に答えます。
これは、トムが家のフェンスをwhitewashing(白いペンキで塗ること)をしている時に、友達のベンがやってきたシーンです。
で、質問は5つ。
- This conversation seems to be about painting a fence. But what larger theme is actually being discussed?
- What clues does the text give about this larger theme?
- What points does the story seem to be making about this theme?
- List all the facts about Tom and Ben from their conversation.
- Based on the facts, list all the logical conclusions, or inferences, you can make about what Tom and Ben are like.
という感じ。
問題を日本語に訳してみると・・・
- この会話は、フェンスのペンキ塗りについてのように聞こえます。しかし、実際にやりとりされているもっと大きなテーマは何でしょうか?
- この大きなテーマに関するヒントは何でしょうか?
- この物語が言及している、大きなテーマについてのポイントは何でしょうか?
- この会話を基に、トムとベンについての事実(考察)を全てリストアップしなさい。
- それらの事実(考察)からわかる、トムとベンについてのあなたなりの論理的な結論またはインファレンス(推論)を書きなさい。
文章自体はそれほど長くないですが、こんなに短い文章で、ここまで掘り下げろと聞いてくるのがアメリカの国語。これは “Close reading” と言って、この記事でも書きました。
で、この文章の中の「もっと大きなテーマ」、わかりました?
答えは次回の記事で発表します。
そして、ここ重要。今回の記事のメインポイントです。
言語には読む・書く・聞く・話すの4つがあると書いてきましたが、私が思う、この中で、(アメリカで生活する上で)一番大事なもの。
それはズバリ。
「書く」
です。
「読む」のは、読めて当たり前なんです。(聞くと話すは、できなくてもこのネット時代、まぁなんとかなるし。笑)
与えられた文章が読めなければ、つまりボキャブラリが足りないとか、知識がない、というのは、スタートラインにも立てないわけです。だから日頃の読書が大事!!
文章を読めて、理解できて、それに対する考えを自分の言葉でまとめられて、やっと勝負できる。
それがアメリカ社会だ、と、この15年間の私のアメリカ生活経験から断言できます。
じゃあ、今日から、子供には何をさせよう?自分も何をしたら良いの?
っていうのを、次回、書きます。引っ張るなぁ・・・笑
ちなみに、今回のトム・ソーヤの問題を見つけた問題集は、Brain Quest Workbook: Grade 6。
他の学年のはこちらです。
キンダーガーテン:Brain Quest Workbook: Kindergarten
1年生:Brain Quest Workbook: Grade 1
2年生:Brain Quest Workbook, Grade 2
3年生:Brain Quest Workbook: Grade 3
4年生:Brain Quest Workbook: Grade 4
5年生:Brain Quest Workbook: Grade 5
Brain Quest は国語・算数・理科・社会が全部一冊にまとめられたワークブックで、アメリカの長い夏休みにこういうのをやらせるようです。
カラフルで、テーマも色々で、子供も飽きずにできるんじゃないでしょうか。こういうマテリアルの選び方と使い方も、次回の記事で紹介しますね。