Baltimore(ボルティモア)の暴動について
メリーランド州ボルティモアは、緊迫した状態に入っています。
昨年のミズーリ州ファーガソンで起こった、警官による発砲殺人事件に機を発して以来、「白人警官と黒人容疑者」という構図が人々の頭の中に深く刻まれているアメリカ。
昨年7月ニューヨークのEric Garner(エリック・ガーナー)、8月ミズーリのMichael Brown(マイケル・ブラウン)、今年に入ってからサウスキャロライナのWalter Scott(ウォルター・スコット)など、その手のニュースは止まりません。
今回、バルティモアの事件は、今月12日、25歳のFreddie Gray(フレディ・グレイ)が逮捕から一週間後に亡くなりました。
12日の逮捕時、ドラッグディーラーとして見つかったところ、逃走を試みた彼は複数の警察官に取り押さえられ、その瞬間のビデオは周囲の人によって撮影されました。
しかし逮捕直後、フレディ・グレイは警察署ではなく、トラウマセンター(脳外科系の外傷センター)にcoma(コーマ/意識不明の昏睡)状態で運び込まれたのです。
それから一週間後、彼は意識を取り戻すことなく亡くなりました。死因は「脊髄損傷」。
逮捕直前まで健康だった25歳の若者が、原因不明の脊髄損傷で亡くなるとは考えられません。
そこで、警官たちに取り押さえられた瞬間のビデオが、とても重要な証拠になりそうなのです。(すいません、かなり強烈な映像なのでここでは載せません。気になる方は”Freddie Gray arrest”でググってください)
警官たちに地面に押し付けられたフレディ・グレイは、命乞いをするかのような声で叫んでいます。
服装が暗くてよくわからないのですが、どうも足は背中に押さえつけられ、とても無理のある体勢のようです。ビデオを撮影した人は、「まるで彼の体は折り紙のように折られていた」と言いました。
立ち上がるように引き上げられた彼の足は麻痺しているようで、一人で歩くことができていません。
ここまで来ると、「脊髄損傷は逮捕時に警官たちによって引き起こされた」と結論づける人はとても多いはずです。
昨日の月曜日、彼のサービス(お葬式)が行われました。
しかし、フレディ・グレイの死因について疑問を持つ人たち、警察に反感を抱く人たちが集まったことで、riots(暴動)が起こっているのです。
人々は町中で暴れ、建物に火をつけ、ビジネスを破壊し、警官を傷つけています。現在で7人の警官が負傷したそうです。

州知事は「緊急事態宣言」(Declare state of emergency)を出しました。
この宣言がされた場合、政府(ここでは州)の通常運営とは異なる運営が許可され、事態の収拾を最速で行うことが許されます。
私はこのニュースを聞いて、「またか・・・」と思わざるを得ませんでした。
そして物事の悪い連鎖が止まらない現実。
間違った決断が不信感を生み、それが積もりに積もって怒りとなる。怒りは火に油を注ぎ、今まで築いてきたものを、こんなにも簡単に灰にしてしまう。
それが私の大好きなアメリカという国で起こっている現実が、悲しくて悔しい。
アメリカに存在する人種差別の歴史は、こんなにも力強いものなのか、と直視せざるを得ない状況です。
たかだか13年しか生活していない私にとって、見えているのは本当に表面的なものだけなのだろうか?
結局、人間なんてわかり合えることはないのだろうか?
と、私ですら絶望感を感じてしまうのだから、当事者たちのそれはきっと想像できないくらいのものなのでしょう。
私はここで、誰を擁護するわけでも、批判するわけでもありません。それぞれに理由があり、思想があり、決断をした。
ただ、その結果(outcome)がこれだと思うと、目をそらさずにはいられません。
醜い。
こんな醜い部分がこの国にはあったのか、というショックでニュースを聞いています。