
アメリカ2025年の進路指導
こんにちは、Erinaです。
さて、我が家の息子も今年は高校最後の年になりました。
高校卒業後の進路はどうするのか?というのはもっぱら我が家の熱いトピックになっていて、息子と一緒に右往左往、いや、日進月歩の日々です。
今日は、昨今の様々な事情を考えると一筋縄ではいかない現実と、それとすり合わせた我が家の進路指導について書いてみたいと思います。
西暦2025年、現代社会はものすごくハイスピードで変化しています。
10年単位だった変化が年単位になり、年単位だった変化が月単位になり、コロナ禍以降に起こる変化を逐一アップデートできる人はほぼいない時代になりました。
そんな世の中で、「1年後の自分を描け」というのは、高校卒業を間近に控えた17〜18歳にはかなり残酷なことと言えます。ただでさえ短い人生の中で、限られた選択肢しか持たない若者が、この変化の荒波の中、「確固たるもの」をどうやって見据えることができるのか。
大人でさえ明日を読み取るのが難しい世界です。
そんな2025年に高校卒業後の進路を考える上で、考慮するべき点を挙げてみます。
- アメリカ大学費用の上昇
- AIの登場
では一つずつ説明します。
1. アメリカ大学費用の上昇
アメリカの大学費用は過去20年で劇的に上昇しています。
下のグラフでもわかるように、私立大学・州立大学(州外生)・州立大学(州内生)のどれもが上昇し、20年前と比べて倍額かそれ以上になっているのがわかります。
物価高や賃金増のアメリカとはいえ、この大学費用の上昇率は群を抜く速さで、生活必需品や医療費、家賃などが追いつかないスピードです。
この現実を捉える高校生達は、4年制大学への進学をかなりシビアに受け止めているようで、いわゆる「やりたいこと探し」のレベルで4年制大学進学を選ぶ子はほとんどいません。
「〇〇大学に行きます」と教えてくれる子は、大抵、勉強したいこと(専攻)がもうしばらく前から決まっていて、自分の中で確固たるものがある子ばかり。
一昔前のように、「うーん、やりたいことは決まってないけど、とりあえずそれを見つけるために大学に行くかな…」という子供を大学に行かせるには、ちょっと学費が高すぎる、というのが現実のようです。
2. AIの登場
ChatGPT などに代表される AI (Artifical Intelligence) の登場は、若者達が進路を考える上で大きな影響を及ぼしています。
AI が普及することで奪われる職業などが話題に上がりますが、とあるニュースに今年はどよめきが起こりました。
「コンピューターサイエンス専攻の非雇用率アップ」
21世紀には引く手数多だろうと考えられてきたコンピューターサイエンス (CS)専攻の学生達が就職できないという現実です。
この記事によると、CS専攻卒業生の unemployment rate(非雇用率)は6〜7.5%で、全体の5.8%を上回る結果となりました。
なぜこんなことが起こるのか?
その秘密は「AIの役割」にあります。
そもそもAIは数多くのCS専攻の人達によって書かれ、築かれてきました。その結果、AIが新しく必要なコードを書いてくれるようになった。そして、CSの人間が新しくコードを書く必要がなくなったわけです。
つまりどういうことかというと、CSの人間が自分たちで作り上げたものが、自分たちの仕事を奪うという結果になってしまった。
とかなり端的に書いてしまいましたが、そういうことが大体にして起こっており、その結果、エントリーレベル(新卒)のCS学生達が就職できなくなっているわけですね。
新しい選択肢
先行き不透明な時代に、安定した仕事に就ける保証もないのに莫大な大学費用。そして学生ローン。
頭が痛くなるような現実の中、現代の18歳達はどんな選択をするのでしょうか?
最近行われたとある調査によると、半数近くの45%の高校生が大学進学を考えておらず、その中の多数が、大学の代わりに Vocational school/trade school いわゆる職業訓練校などへの進学を考えているということがわかりました。
この記事に登場するのは22歳女性 Nush Ahmed さん。
彼女の両親はバングラデシュからの移民で、4年制大学進学こそが、この国での成功への道だと伝えてきました。しかし娘の Nushさんは高額な大学費用と学生ローン、不透明な将来などを考慮した結果、「手に職をつける」という道を選んだのです。
両親の価値観である「実家近くの4年制大学進学」ではなく、自分で見極めた「家から800マイル離れた自動車整備学校」を選んだ Nushさん。
この動きは高校卒業生の中で増えてきているようで、「高い学費がペイオフされない仕事に就くより、今すぐに手に職を就けられる選択」という価値観にシフトしているようなのです。
これまで「低収入」と思われてきた、いわゆるブルーカラー職も人気で、Electrician, plumber, construction などは金払いもよく、18から経験を積めば、30代で自分のビジネスを持つ、つまり社長になれるという可能性もあるわけです。
- 歯科衛生士
- 眼科アシスタント
- ケーキ職人
- 調理師
- 大工
- 水難救助士
- 睡眠ポリグラフ検査技師
- ロボティクス
- 自動車エンジン技師
- 手術室アシスタント
- 溶接工
などなど多岐にわたります。
これらの学校はプログラムによってはお金がもらえるものや、就職と直結しているものもあり、学生ローンで借金スタートするより就職!4年間さらに教室で勉強するより肉体労働!という生徒達に人気です。
また、デジタル機器を片手に育ったこの世代にとって、この「手に職を就ける」というのは新鮮な感覚のようで、これについてはまた別の記事で書いてみたいと思います。
私は個人的にこの選択肢を応援していて、特に肉体労働なんて若い時にするべきことを先にやっておくとか(30〜40代では辛い)、実地経験を積んでから後々キャリアアップのために勉強、というのは素晴らしい選択肢だと思うのです。
私自身、18歳で見えていた世界はあまりにも限られていて、その中から選べ!と言われてもわからないことばかりでした。実際に勉強をしてみて、仕事をしてみて、「これは違うな」とか「これはもっとやりたい」と決めた結果が今に至るわけで、そういう機会を若者達にも、と思うのは当然と言えます。
18〜20代なんて人生のやり直しができる時期に、興味のあることは可能な限りやってみればいいし、そこに莫大な大学費用という足枷を自分につけてしまうのはあまりにももったいない。それならば、まずは自分の興味のある分野に何か一つとっかかりを見つけ、そこからスタートするという社会のルールを教えてもいいのでは?と私は思うのです。
それでもはっきりしない場合、コミュニティカレッジや、まずは就職、またはギャップイヤーで旅行や海外ボランティアなどを考える子も。そうやって自分に必要なものを見極めてから大学進学、というのも決して遅くはありません。
現役高校生の親世代として、価値観のシフトが必要かもなと感じている日々ですが、皆さんはどうでしょうか。

