
洋書ブッククラブ
こんにちは、Erinaです。
今年2024年は、自分にとってとても特別なことを始められた年でした。
それは「名作を英語で読む」ということ。
この記事でも書いたように、アメリカの国語の授業ではいわゆる「国語の教科書」というものが使われることはほとんどなく、代わりに一般的に読まれている作品を通読します。
8年生で「アンネの日記」
9年生で「ロミオとジュリエット」
10年生で「華氏451度」
など、生徒達のデモグラフィーや興味、読解力に応じて先生が取り上げる作品を選ぶのです。
このちょっと日本では考えられない国語の授業に、私はすっかり魅了され、うちの子供達や私が働く学校で生徒達がどんな本を読んでいるかを調べるようになりました。
同時に、自分が学生時代に読んでこなかった作品を、自分の子供が授業で読むことで得られるものは何なのか、どうやって「アメリカ人」というものが作られるのか、とても興味を持ちました。
そんな時、同じくこれらの作品に興味を持った友人なおさんに「一緒に読もう!」と言われ、二人でブッククラブを始めることにしたのです。
月に一冊、アメリカの中高国語で読まれる名作を読み、ツイッターのスペースで二人で作品について話す。そんなゆるい取り決めで始めたこのブッククラブも、今年は7回もできたのです。
読んだ作品は、
第1回 “To Kill a Mockingbird” by Harper Lee
第2回 “The Giver” by Lois Lowry
第3回 “Of Mice and Men” by John Steinbeck
第4回 “Fahrenheit 451” by Ray Bradbury
第5回 “The Grapes of Wrath” by John Steinbeck
第6回 “The Catcher in The Rye” by J.D. Salinger
第7回 “Search” by Michelle Huneven
で、これまでに読みたいと個人的に思って読めなかったものばかりでした。
そもそも、英語で大学院まで修了した私ですが、学校で読んできたものは論文とか教科書ばかり。「小説」というジャンルはほとんど読んだことがなく、読める内容のレベルでいえば、あっという間に子供達に追い抜かされたものです。
そんな中、なおさんに「一緒に読もう」と言われたことがとても心強く、しかも大好きな友人と読んだ内容について話し合えるというボーナスつきですから、これは最高のチャンス!
ブッククラブというものを(聞いたことはあったけど)どうやって運営すればいいかもわからず、とにかく始めることにしたのです。
一冊に一ヶ月間と決めた読書はとてもいい訓練になりました。
週末に時間を決めて、ダラダラと読むのではなく内容を整理しながら読む。
チャプターごとにポストイット (sticky note) にテーマを書いて貼る。
記憶に残った文章があるページにも貼る。
こんなふうに読んだ後のことを考えながらする読書は新鮮で、「なおさんとこれを話したいな」なんてことも考えながら読み進めました。
各作品について細かいことは具体的にはここでは書きませんが、どれもやはり素晴らしい作品で、何十年もこの国で子供達が読む理由がわかった気がします。
第1回作品 “To Kill a Mockingbird” by Harper Lee
通例、9年生(日本の中3)が読む作品で、1930年代のアメリカ南部アラバマ州でのひどい人種差別を背景にしています。
主人公(白人の女の子)の父親は弁護士で、ある事件における黒人の容疑者を守る立場になり、その正義を見て育つという物語です。(日本語版「アラバマ物語」)
1回目の録音をyoutubeにアップしました。
第2回作品 “The Giver” by Lois Lowry
中学国語で読まれるサイエンスフィクション(Sci-Fi)作品。
全てのことを「コミュニティ」に決定される人生に疑問を持つ主人公の少年と、彼を導く老人の物語。
初めて読むジャンルでしたが、仮想現実の世界に引き込まれる感覚がとても新鮮でした。そしてこの作品を国語の授業で読むというカルチャーショックが何より大きかったです。(日本語訳「ザ・ギバー: 記憶を伝える者」)
第3回作品 “Of Mice and Men” by John Steinbeck
映画にもなったスタインベックの短編小説は9年生が読みます。
とても繊細な人間関係と、弱肉強食の厳しい現実社会を、子供達がどうやって読み解くのか気になる作品。
初めて読んだスタインベックの自然の描写は息を呑むほどで、一瞬にして情景が目に浮かぶようでした。自分にとっての英語表現というものが、彼の作品に触れることで次のステップに進んだ感じ。(日本語訳「二十日鼠と人間」)
第4回作品 “Fahrenheit 451” by Ray Bradbury
これも最近映画化されたようですね。10〜11年生くらいで読むSc-fiです。
「本」というものが禁止された社会で、その本を燃やすことを仕事としている主人公。人間が「考える」ということをやめてしまう社会に疑問を持ち、本(知識)の重要性に目を向けます。
1950年代に書かれたこの作品が、現代社会の危うさを見事に書き表していて、SF作家の凄さを見た気がしました。(日本語訳「華氏451度」)
第5回作品 “The Grapes of Wrath” by John Steinbeck
この本は留学一年目に本屋で買ったものの、当然のように手が出ず、長年諦めていた一冊。アメリカで生まれ育ったら、どこかで必ず読む作品です。
1930年代にアメリカ中西部で起こった “dust bowl” と呼ばれる砂嵐を理由に、人々はカリフォルニア(西部)を目指して移住しました。噂だけをもとに西に希望を持って何もかもを捨て、家族と最低限の家財道具を持って移動する厳しさや、人間の強さが書かれているこの作品。この国でこれだけ読まれている理由がわかった気がしました。(日本語訳「怒りの葡萄」)
第6回作品 “The Catcher in The Rye” by J.D. Salinger
日本語でも広く翻訳されている作品ですが、今でも高校で読まれる作品です。
繊細な年代の心の動きを時代背景に合わせて分析するようですね。
私は日本語でも読んだことがなかったのですが、映画を観ているような感覚になれる作品で、現代のティーン達がどう受け取るのか興味が湧きました。(日本語訳「ライ麦畑でつかまえて」)
第7回作品 “Search” by Michelle Huneven
これはリストの中でも新しい作品で、「教会の新しい牧師探し」という個人的にもとても新しい設定でしたが、面白く読めました。人材探しというプロセスの中で、人々がどんなものを求め、どんなものを妥協していくのかがよく見える作品だったし、自分の中でものの見方がとても広がった気がします。
次回の作品は “The Great Gatsby” by F. Scott Fitzgerald です。
来年もどんどん読んでいく予定なので、楽しみです。
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