
私がフリーランスになった理由(前編)
初めて投稿します。Erinaさんの友人で最近自分の翻訳・通訳会社を立ち上げたばかりのTamamiです。
会社を立ち上げた、というよりも、単に企業勤めをやめてフリーランスになった、というほうが事実に近いのですが・・・、個人とは取引をしない企業も多い、納税の際に会社があったほうがいい、などという実際的な理由により形式的に設立しました。
そこで、Erinaさんより「なぜ、安定した大企業を退職してあえてフリーランスを選んだのか?」という質問をいただきましたので、その回答も兼ねて初投稿したいと思います。
Erinaさんが「ドリームジョブ」と表現してくださった私の以前のポジションは、日本だけでなくおそらく世界中の人が名前を知っているグローバルな会社の、社内翻訳・通訳者。
まあ、毎日その中で働いているときはそれがドリームジョブ!なんていう実感はないですし、子供が1歳のときに就職して6年間、オムツで授乳していた赤ちゃんがすっかり小学校1年生になる頃まで勤めた私にとっては、育児と仕事の両立に悩む、というより両立なんてまったく不可能なんだなということを悟った6年でもあり、毎日本当に疲れ果てていた記憶しかないというか、とにかく「ドリームジョブ」という言葉からこれほどかけ離れている実感はない、というのが正直なところです。
ただ、Erinaさん以外にも「 理想の職場なのに、どうして?」「そんな条件のいい仕事を何故辞めちゃうの〜?」と言ってくださる人は多く、また私自身も、通訳・翻訳者として非常に恵まれた貴重なポジションを手放してしまったのは確かだと思っています。
通訳・翻訳者はフリーランスのほうが一般的であり、正社員として通訳・翻訳者を社内に抱える会社は今や少数です。
フリーランスというのはやはり個人で生き残っていくという厳しい世界。
一方で、企業の社員として通訳・翻訳の仕事をする、という場合、いろいろな業務の中の1つが翻訳だったり、バイリンガル秘書なので役員宛の英語メールを日本語に翻訳することがあります、とか、英語が堪能なのでたまに海外の取引先とテレビ会議するときにちょこっと通訳します、という状況ならよくあるものの、通訳だけ、翻訳だけしかしない、通訳・翻訳専業の社員、というポジションは日本でもアメリカでもあまり一般的ではないと思います。
通訳者、翻訳者を目指して勉強してきた人たちはやっぱり、ほかの業務の一部ではなくて、「通訳さん」「翻訳者さん」と呼ばれるような仕事がしたい。でも、正社員のポジションはないから、厳しいフリーランスの世界で頑張るしかない。
という世界で、私がつい数ヶ月前までやっていた仕事は英語でいうと「The best of both worlds」、両方の良いとこ取り!福利厚生=Benefitという、アメリカでは死活問題なありがたい制度もついてきて、安定していて、やりたかった通訳・翻訳という仕事にじっくり打ち込めて、質問があれば周囲には専門家だらけ(これ、フリーランスになって誰にも質問できない状況になって有難さがわかります)。
というわけで、ドリームジョブというとやはり私にはピッタリこないですが(笑)、そんな安定や保障された生活を捨てて、なぜフリーランスになってしまったか?!その私なりの答えを書こうと思います。
最初に正直に書きます。「間違ったかな〜?」と、自分の決断を後悔しそうになることは今でも多々あります。
仕事が途切れて、明日もその次の日もなんの予定も入っていない、という状況で、ふと真夜中に目が覚めたとき。“Did I make the biggest mistake of my life?”なんて言葉がよぎり、不安で叫びだしそうになります。
それでも翌朝はまた仕事を探すべくトライアルを受けたり、レジュメを送ったり、フリーランス歴の長い友達に相談のメールを書いたり。希望を持って前向きに、というよりは、もう後戻りはできないので追い詰められて必死に、という感じで努力を続けます。
でも、「間違ったかな?」という自分の問いに対して「うん、やっぱり間違えた」と思ったことは一度もないし、また会社勤めに戻りたいと思うこともありません。上司に辞意を伝えた半年前に戻れたとしても同じ決断をすると思います。
フリーランスに移行した理由を人に聞かれたときは、
- 1つの業界ではなく、様々な分野をカバーできる通訳・翻訳者になりたい
- もともと通訳を目指したとき、私のイメージはあちこち飛び回るフリーランスだった
- 子供の近くにいたい、子供といる時間を増やしたい
- 会社という組織に所属する上で避けられない人間関係や雑務から自由になり、通訳・翻訳にフォーカスしたい
というようなことを答えてきました。
自分でもどれも理由の一部だとは思っているのですが、実際にはどれも決定的ではなく我ながら説得力に欠けています。
まず、様々な分野をカバーしたい、というのは、実際の通訳・翻訳業界ではむしろ早く自分の専門分野を確立してそこにフォーカスするのが重要なので、そこを知っている人には納得いかない理由だと思います。
次にあちこち飛び回るイメージですが、私は実は空港とか飛行機が苦手で・・・、いつもと違う場所で仕事をするより1箇所にずっといたいタイプなので 、そんな私を知っている人は「嘘だ〜」とすぐ見抜くと思います。
子供の近くにいたい、これは私の本心ではありますが、フリーランスになったらもっと子供と一緒に過ごせるかというと、これはそうとも限らないんですよね。
実際、ここ数週間私は締め切りの関係で夜中まで翻訳作業をしたり、土日も主人に子供を頼んでずっと仕事だったりという状況が続きました。会社勤めの頃は決して仕事をしていなかった時間帯も、もう自由時間ではなくなりました。
もはや「有休」なんて素晴らしい制度とは無縁なので「仕事をしない=収入なし」という切羽詰まった事情により、子供のために仕事を休む、ということが逆にできなかったりもします。福利厚生などを考えると、フリーランスは正社員の収入の何倍も稼がないと同等の生活はできないそうですが、ということはつまり相当効率をあげないと労働時間そのものは増える一方。フリーランス=自由時間が多い、というわけでは決してありません。
最後の「組織から自由になる」という点ですが、これは完全に個人の性格次第だと思います。実は私は、日本特有の企業文化というのか、仕事のあと飲みにいって、年末は忘年会、みたいな職場の濃い付き合いが割と好きだったりします。今時そういう会社はもう日本にもないのかもしれませんが、日系企業でもやはりアメリカの会社だった私の職場もそこまで日本的な文化はなくて、ちょっと寂しかったくらいです。
なんといっても日本で大学卒業後、商社OLを7年しているので、私はけっこう日本人サラリーマン精神が体に染み付いている方なのです。「組織のしがらみなんて耐えられない!一匹狼として生きる!」なーんて心意気はまったくありませんでした。
また、フリーランスなら通訳・翻訳だけにフォーカスできるかというとそうでもなく、何もかも自分でやらなければならないので、以前ならIT部門のヘルプデスクにお願いしていたコンピュータのトラブルも自分で解決、請求書を発行したり、銀行でビジネスアカウントを作ったり、自分なりにマーケティングを考えたり、気がつくと雑用だけして丸一日が過ぎたなんてこともしょっちゅう。
と、こうして書いていると自分でもなぜフリーランスになってしまったのかよくわからなくなってきました。
では、決定打はなんだったんでしょうか。
次回の後編では、フリーランスへの決定打と、フリーランスになってからの生活の変化を綴ってみたいと思います。
初投稿、ありがとうございます!
確かに通訳・翻訳と聞くと、フリーランスというイメージがずっと強かったので、Tamamiさんのように企業で専属、というとすごいことだなと思っていましたが、やはり珍しいのですね。
私もアナリストという仕事をしていて、業界でどういうポジションにあるのかとか、毎日の業務レベルではなくて、どういう働き方、雇われ方をするのか、ということを知るのは大事だと思ったことがあります。
「そのチームがアナリストを雇えることはprivilegeなんだよ」と言われたこともあり、ということは仕事を見つけるのは簡単じゃないかもな・・・と思ったものです。需要あっての、ですからね。
話はそれましたが、私もこれから「働き方」というものが変わっていくと思います。昔はごく少数の人しかできなかったことが、今では誰でもできる時代。出版だって、今はブログがあり、それこそ世界中の人の目に留まることができる。
それをどう利用していくか、本当に個人の力ですよね。
Erinaさん、働き方は本当に変わっていく時期ですよね。通訳・翻訳の世界も、少し前まで「完全な人工知能を作らないと完全な自動通訳・翻訳は実現しない」なんて言われていたけど、最近はちょっと「おっと、これは私の職種の危機?!」とあせるような技術もどんどん出てきて、完全に乗っ取られる日は実は思ったより近いのかも、なんて恐れております。生計を立てられるのは本当に専門的な知識とその分野での経験が長い一部の人たちになるんじゃないかなぁ。でもそれはどの業界でも同じことかもしれないですね。不安ではありますが、一方で今後の変化が少し楽しみでもあります。チャレンジの中になんとかチャンスを見出したいところですね。
Tamamiさん、
大変興味深い内容で勉強になります。
私はまだ渡米10ヶ月の新人で、恐くて高速道路を運転することもできない、全くまだまだこちらで働くことのスタートラインにも立っていません。
日本で働いていたコネクションで、なんとか雑誌のライターの仕事をフリーランスで続けているものの、ベースが東京じゃなくこちらなので、取材記事は書けず、家で書けるものに限られている為、担当する記事数も随分減りました。
クライアントは全て日本なので、ギャラは日本円で払われ、海外居住なのに源泉徴収もあり、さらにこちらに送金、ドルに換金などしていると、はっきり言ってものすごく無駄な手数料ばかりです。
いつかこの国で会社勤めをしたいのですが、まずは高速道路の運転からですし、色々考えると本当に気が遠くなります。
Tamamiさん、Erinaさんの記事を読んで、こちらでの会社勤めの心構えというか、勉強をさせていただいています。
続編楽しみにしています!
Tomomiさんがそうやってアメリカに引っ越してきても日本から仕事が来る、場所に関わらず仕事ができる、というのは素晴らしいことだと思います!せっかくだからアメリカの情報を書いて日本に送る、といくような仕事を探すというのはどうでしょうか?アメリカの会社勤めとなると、Tomomiさんの日本語で文章を書くというせっかくの専門分野が活かせなくてもったいないような気も・・・?まあでも何事も経験ということで現地で働くのもおもしろいかもしれないですね。
LAのハイウェイは8車線に車がびっしりで、私も最初引っ越してきたときは「あのハイウェイを通勤なんて私には無理」と思ってたのを覚えてます。が、その数年後にはまだ幼稚園だった子供を乗せて子連れ通勤とか平気でしてましたから・・・大丈夫!Tomomiさんも気づけばハイウェイを飛ばしてどこにでもいけるようになりますよ〜 頑張ってくださいね。