アメリカの国語:メンター・センテンス
こんにちは、Erinaです。
今日は、英語ネイティブの子供達が、どうやって英語を覚えるのかということを、アメリカ小学校の国語の授業を使って紹介してみたいと思います。
メンター・センテンス(英語ではMentor Sentence)は、アメリカの小中学校で取り入れられているカリキュラムで、主に英文法を学ぶツールとして使われているようです。
私も、うちの娘が2年生くらいの時に「今日は学校でメンター・センテンスをやって・・・」と話してくれたのがきっかけで、これについて知るようになりました。
娘に「どんなことをするの?」と聞いてみると、とても面白いプロセスで英文法を分析・理解し、自分のものにしていくことがわかりました。
私自身が日本の中学高校で学んだようないわゆる「英文法」とは全く異なり、本当に目からウロコで、なおかつ読書が楽しくなるこの方法を、ぜひ紹介したいと思います。
まず、「アメリカ人ってどうやって英語を身につけるの?」と疑問に思ったことはありますよね?私たち非ネイティブがこれだけ苦労しているものを、母語にしている彼らは一体どうやって身につけてきたのだろうか・・・彼らみたく勉強したら、発音だって文法だってボキャブラリだって、ネイティブ並みになれるんじゃないか・・・?
まぁ、その答えは半分イエスで半分ノーでしょうね。
その理由はここでは深くはつっこまないけれど、とりあえず、彼らが勉強している方法を研究するというのは賢明なんじゃないかなと思うので、こうやって紹介していきたいと思っています。
うちの子達が「英語」の勉強をし始めたんだな〜と感じたのは、
などをプリスクールやキンダーなどで学び始めてきた頃でした。
フォニックスもサイトワードも、私自身がやってきた英語の勉強方法にはなかったものだったので、「おー、やっぱり違うんだな」と思ったのです。
そしてこの「メンター・センテンス」もその一つであり、英語ネイティブの子供達が正しい英文法を身につける上で欠かせない方法になっています。
ではでは紹介してみましょう。
そもそもメンター・センテンスの「メンター」という言葉の意味は、お手本になるものや人のことですね。
つまり、「お手本文章」というのがそのままの訳です。
どういうことかと言うと、先生が本から引っ張ってきた一文を「お手本」として、一週間かけてその一文をひたすら分析し、研究し、最終的に自分のものにする、というのが目標です。
娘の例をもとに、流れを見てみましょう。
月曜日(1日目): Notice(気づき)
まず先生が、 “Cloudy With a Chance of Meatballs“という絵本を通して読みます。
そしてその中の一文(メンター・センテンス)が書かれた紙切れをクラスに渡します。
紙切れには、
“People were sneezing themselves silly and running to avoid tomatoes.” – Cloudy With a Chance of Meatballs
と書かれていて(出典元も)、子供達はそれをノートの一番上に糊で貼ります。
子供達はまずこの一文に目を通し、どんな構造をしているかに着眼します。
たとえば、この文章には、
- adjective(形容詞)
- verb(動詞)
- noun(名詞)
- reflexive pronoun(代名詞)
- plural noun(複数名詞)
などがあり、子供達はそれを一つずつ挙げて、ノートに書いてきます。
代名詞が何なのか、複数名詞と単数名詞の違いは何か、などと言うのは、そのメンター・センテンスの内容に応じて先生が説明するわけですね。
火曜日(2日目):ハイライト
前日に挙げた文章の構造
- adjective(形容詞)
- verb(動詞)
- noun(名詞)
- reflexive pronoun(代名詞)
- plural noun(複数名詞)
を実際にメンター・センテンスにあてはめていきます。
その準備として、ノートの “Day 2″ の部分に、子供達はメンター・センテンスを大きめに書き写します。
上に挙げたパーツをそれぞれ異なる色でハイライトし、それにマッチする単語をメンター・センテンスの中から探してハイライトします。
つまり、adjective(形容詞)を黄色でハイライトしたら、自分で書き写したメンター・センテンスの中の、”silly” が形容詞にあたりますから、それもまた黄色でハイライトします。
同じように残りも別の色でハイライトしていきます。
verb → were, sneezing, running, avoid
noun → People, tomatoes
reflexive pronoun → themselves
plural noun → tomatoes
という感じです。
水曜日(3日目):つまらない単語を置き換える
run, go, take, get…. あー、いつも同じ単語ばかり使ってるな〜・・・と感じたことは誰にでもあるはず。
3日目はそんな悩みを晴らすべく、ボキャブラリを増やす練習の日。
“boring words” と呼ばれる単語はやはり小学校低学年でも認識されていて、子供の語彙力を増やすためにこのような練習をするようです。
このメンター・センテンスの中ではやはり、”people” と “running” でしょうか。
ちょっとこのシーンがわからないので、どんな人々なのかわからないのですが、もし特定できるとしたら、
people → students, doctors, neighbors, residents…..
動詞は
running → rushing, fleeing, racing
とかかな?
こうやって、synonym と呼ばれる同義語をあてはめて、意味が通じるかどうかを判断するわけです。
そしてメンター・センテンスの単語を変えてみた新しい文章は、
“Residents were sneezing themselves silly and racing to avoid the tomatoes.”
となり、それをノートの Day 3 に書き残します。
木曜日(4日目):新しい文を作る
子供達にとっては、これが一番楽しい日のようです。
何をするかと言うと、3日目と同様、メンター・センテンスの単語を入れ替えるのですが、今回は同義語とは限りません。つまり、単語を入れ替えることで、文の構造はそのままだけれども、意味は全く違うものになってもオーケー。
たとえば、
I was sneezing myself silly and running to catch the tomatoes.
My friends were sneezing themselves funny and laughing to avoid tomatoes.
・・・なんて、意味自体はめちゃくちゃ不明ですが、オリジナルのメンター・センテンスの文構造は保存されています。
その上、主語を “I” にしたら、動詞を”was”、代名詞を”myself”に変えなければならないという練習にもなるわけです。
うーん、深い!その上に素晴らしい方法だ!
と感動してしまったのは言うまでもありません。
私が中学高校で、コツコツと “I, my, me… was, were…” なんてパーツごとに暗記していた頃、英語ネイティブの子供達はもっと総合的な視点で、どれもこれも一つの文の中でやってしまおう!という学習方法を取り入れていたわけです。
下は娘の実際のノート。
この学年では3日目のつまらない単語を置き換えるというアクティビティがなかったそうなのでスキップしています。
・・・というのが、このレッスンの流れ。
1日にかける時間は10〜15分ほどだそうで、日本の漢字練習とか単語テストをやるような感覚で、この練習はできるわけです。
この記事でも書いたように、単語の丸暗記が苦手だった私は、語彙を増やすためにやはり「作文」をするようになりました。
単語や文法というのは、生きた「文章」の中で使われるべきであり、それには絵本や本という「生きた正しい文章」をお手本として使うというのは、素晴らしい方法だと思うのです。
この記事でも書いたような、歌をまるまる一曲覚えてマスターするというのもやはりこの「生きた英語」を自分のものにするという意味では、かなり近いものがあります。
そしてこのメンター・センテンスを使うことで、対象となった本のストーリーや場面を意識することになり、子供達の細かい内容把握にもつながるわけです。
これ、ぜひ日本の先生たちにもやってもらいたいですね。
中学高校の英語だけでなく、小学校の国語の授業でもできそうです。
どうでしょうか。
どなたか授業で実際に使われたら、効果のほどを教えてください。笑
その他のアメリカの学校で教わる英文法のリストはこちらでチェックできます。